広島高等裁判所判決平成31年4月18日
地位確認等請求控訴,同附帯控訴事件
【判示事項】 1 雇用契約期間を1年,最大2回,最長3年まで更新することがある旨の募集要綱に応募して雇用された大学准教授である控訴人兼附帯被控訴人(一審原告)Xに対する,1年経過時の雇止めについて,本件雇用契約は期間を1年とする有期労働契約であるとしたうえで,有期契約の運用実態,Xの授業に対する高い評価,執筆した論文数およびその内容についての評価,豊富な業務量,被控訴人兼附帯控訴人(一審被告)Y1法人においても引き続き雇用する前提でいたこと等を考慮し,初回の更新の際の合理的な期待は高度であり,2度目の更新についても合理的な期待があったこと,就業規則の規定では更新上限が5年とされていること等から,本件雇止めが不適法とされ,一審判決を変更して,平成31年3月31日までの地位確認請求が認められた例
2 就業規則の本件更新限度条項における上限である5年を超えることになるから,平成31年4月1日の更新は,もはや更新についての期待に合理的な理由があるものとはいえないとされた例
3 雇用契約においては,労働者は使用者の指揮命令に従って一定の労務を提供する義務を負い,使用者は提供された労務に対する対価としての賃金を支払う義務を負うのがその最も基本的な法律関係であるから,当該雇用契約等に特別の定めがある場合,または業務の性質上労働者が労務提供について特別の合理的な利益を有するなどの特段の事情がある場合を除いて,労働者が使用者に対し就労請求権を有するものでないと解されるとされた例
4 本件雇用契約においては,大学教員という労務内容に配慮し,Xが学問研究を十分に行えるよう図書館を利用できることがその契約内容に入っており,これを利用させることがY1法人の付随義務になっていたとして,一審判決を変更して,Xは図書館利用者証の交付をY1法人に請求できると判断され,図書館の利用ができなかった精神的損害につき慰謝料(30万円)の請求が認容された例
5 研究室の利用については,教員の学問研究のためにどの研究室をどの教員に利用させるかについては,Y1法人に裁量が認められるとして,Xの請求が退けられた例
【掲載誌】 労働判例1204号5頁