市の男性職員が勤務時間中に訪れた店舗の女性従業員にわいせつな行為等をしたことを理由とする停職6月 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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市の男性職員が勤務時間中に訪れた店舗の女性従業員にわいせつな行為等をしたことを理由とする停職6月の懲戒処分に裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法があるとした原審の判断に違法があるとされた事例

 

最高裁判所第3小法廷判決平成30年11月6日

『令和元年重要判例解説』行政法2、労働法6事件

停職処分取消請求事件

加古川市事件

【判示事項】 地方公共団体の男性職員が勤務時間中に訪れた店舗の女性従業員にわいせつな行為等をしたことを理由とする停職6月の懲戒処分に裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法があるとした原審の判断に違法があるとされた事例

【判決要旨】 地方公共団体の男性職員が勤務時間中に訪れた店舗においてその女性従業員の手を自らの下半身に接触させようとするなどのわいせつな行為等をしたことを理由とする停職6月の懲戒処分がされた場合において,次の(1)~(5)など判示の事情の下では,上記処分に裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用した違法があるとした原審の判断には,懲戒権者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法がある。

       (1) 上記行為は,上記職員と上記従業員が客と店員の関係にあって拒絶が困難であることに乗じて行われた。

       (2) 上記行為は,勤務時間中に市の制服を着用してされたものである上,複数の新聞で報道されるなどしており,上記地方公共団体の公務一般に対する住民の信頼を大きく損なうものであった。

       (3) 上記職員は,以前から上記店舗の従業員らを不快に思わせる不適切な言動をしており,これを理由の一つとして退職した女性従業員もいた。

       (4) 上記(1)の従業員が終始笑顔で行動し,上記職員から手や腕を絡められるという身体的接触に抵抗を示さなかったとしても,それは客との間のトラブルを避けるためのものであったとみる余地がある。

       (5) 上記従業員及び上記店舗のオーナーが上記職員の処罰を望まないとしても,それは事情聴取の負担や上記店舗の営業への悪影響等を懸念したことによるものとも解される。

【参照条文】 地方公務員法29-1

       地方公務員法33

       加古川市職員の懲戒の手続及び効果に関する条例(昭28加古川市条例7号)4

【掲載誌】  裁判所時報1711号5頁

       判例タイムズ1459号25頁