最高裁判所第3小法廷判決平成15年4月8日
『平成15年重要判例解説』民法5事件
預託金返還請求事件
【判示事項】 一 現金自動入出機による預金の払戻しと民法478条の適用の有無
二 無権限者が預金通帳又はキャッシュカードを使用し暗証番号を入力して現金自動入出機から預金の払戻しを受けた場合に銀行が無過失があるというための要件
三 無権限者が預金通帳を使用し暗証番号を入力して現金自動入出機から預金の払戻しを受けたことについて銀行に過失があるとされた事例
【判決要旨】 一 現金自動入出機による預金の払戻しについても民法478条が通用される。
二 無権限者が預金通帳又はキャッシュカードを使用し暗証番号を入力して現金自動入出機から預金の払戻しを受けた場合に銀行が無過失であるというためには、銀行において、上記方法により預金の払戻しが受けられる旨を預金者に明示すること等を含め、現金自動入出機を利用した預金の払戻しシステムの設置管理の全体について、可能な限度で無権限者による払戻しを排除し得るよう注意義務を尽くしていたことを要する。
三 預金通帳を使用し暗証番号を入力すれば現金自動入出機から預金の払戻しを受けられるシステムになっているのに、銀行がそのことを預金規定等に規定して預金者に明示することを怠っていたなど判示の事実関係の下では、銀行は、真正な預金通帳が使用され、入力された暗証番号が届出暗証番号と一致することが機械的に確認された場合であっても、無権限者が現金自動入出機から預金の払戻しを受けたことについて過失がある。
【参照条文】 民法478
民法91
【掲載誌】 最高裁判所民事判例集57巻4号337頁