テレビ報道番組の内容が人の社会的評価を低下させるか否かについての判断基準 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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最高裁判所第1小法廷判決平成15年10月16日

『平成15年重要判例解説』民法13事件

「ニュースステーション」ダイオキシン事件

謝罪広告等請求事件

【判示事項】 一 テレビジョン放送をされた報道番組の内容が人の社会的評価を低下させるか否かについての判断基準

二 テレビジョン放送をされた報道番組によって摘示された事実がどのようなものであるかについての判断基準

三 テレビジョン放送をされた報道番組によって摘示された特定産地の野菜のダイオキシン類汚染に関する事実についてその重要な部分が真実であることの証明があるとはいえないとされた事例

【判決要旨】 一 テレビジョン放送をされた報道番組の内容が人の社会的評価を低下させるか否かについては、一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準として判断すべきである。

二 テレビジョン放送をされた報道番組によって摘示された事実がどのようなものであるかについては、一般の視聴者の普通の注意と視聴の仕方とを基準とし、その番組の全体的な構成、これに登場した者の発言の内容、画面に表示された文字情報の内容を重視し、映像及び音声に係る情報の内容並びに放送内容全体から受ける印象等を総合的に考慮して判断すべきである。

三 テレビジョン放送をされた報道番組において、A市産の野菜のダイオキシン類汚染に関し、B研究所の調査結果によればA市産の野菜のダイオキシン類濃度が一g当たり〇・六四~三・八〇ピコグラムである旨記載されたフリップが示され、その野菜がほうれん草をメインとするA市産の葉っぱ物であるとの説明がされたなど判示の事実関係の下では、その番組により摘示された事実の重要な部分は、ほうれん草を中心とするA市産の葉物野菜が全般的にダイオキシン類による高濃度の汚染状態にあり、その測定値が上記数値で示される高い水準にあることとみるべきであり、別の調査結果においてA市産のラベルが付けられた白菜一検体から上記最高値に比較的近似した測定値が得られたことなどをもって、上記摘示された事実の重要な部分について真実であることの証明があるとはいえない。

(三につき、補足意見がある。)

【参照条文】 民法709

       民法710

       刑法230の2-1

【掲載誌】  最高裁判所民事判例集57巻9号1075頁