個人的な訴訟の提起等を理由とする懲戒解雇の有効性 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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東京高等裁判所判決平成17年11月30日

『平成18年重要判例解説』労働法1事件

モルガンスタンレー・ジャパン・リミテッド(懲戒解雇・本訴)事件

譴責処分無効確認請求各控訴事件

【判示事項】 1 従業員が自己の扱う金融商品の営業成績に影響を及ぼす第三者の発表に対抗して行った個人的な訴訟の提起等の一連の行為について,それが従業員の全く私的な行為と認められるのでない限り,使用者の事業活動の一環として行われるものとして,使用者の指揮命令権限が及ぶというべきであり,就業規則等による規制の対象ともなるとされた例

2 一審原告が,訴外協会が行った本件留意点の発表に対抗して個人的に訴訟を提起したこと,および一審被告会社による当該訴訟取下命令に従わなかったことが,就業規則等に反する非違行為に当たるとされた例

3 エグゼクティブ・ディレクターという高い地位にある一審原告が,会社の組織体としての検討や方針を離れ,その指揮命令を拒否して,本件訴訟提起等の一連の行為をしたことに対する本件懲戒解雇につき,規律違反の程度は極めて重大であり,また,会社の対外的信用も少なからず毀損されたし,指揮命令に服さないという同人の姿勢は明確かつ強固であるから,企業秩序維持の観点からは,同人をそのまま従業員の組織内にとどめることは困難であり,懲戒権の濫用ということはできないとして,処分として重すぎるとした一審判断が退けられ,有効とされた例

【掲載誌】  労働判例919号83頁