第2 会社の一部を譲渡する場合 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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2 会社の一部を譲渡する場合

1 事業譲渡

 合併や会社分割等の行為が組織法上の行為であり、消滅会社の全財産が存続会社に包括的に承継されるのとは異なって、事業譲渡の場合、あくまでも取引法上の契約であるため、契約で定めた範囲の財産が個別に移転するにすぎません。したがって、事業譲渡により、資産や債務が当然に譲受会社に引き継がれるわけではありません。

 事業譲渡による場合のメリットとしては、当事者は契約によって自由に、譲受人が引き継ぐ資産や負債の内容を決定できるという点があります。また、合併や会社分割のように、財産を包括的に承継するわけではないので、偶発債務の承継を遮断することができます。

 他方で、事業譲渡による場合、会社法をはじめとする様々な規制を受けることとなります。まず、その実行には取締役会決議(会社法3624項)のほかに株主総会の特別決議(会社法467112号、309211号)が必要になりますし、反対する株主には株式買取請求権があります(会社法4691項)。また、事業譲渡に伴って、資産の譲渡や債務の移転がなされた場合には個別に対抗要件や相手方の当事者の同意を得なければなりません。また、許認可を取り直す必要もあります。このように、事業譲渡には、合併や会社分割に比して、手続が煩雑となるというデメリットがあります。さらに、譲渡会社には競業避止義務が課されるほか(会社法211項)、譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、その譲受会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負うことになるので注意が必要です(会社法221項)。

 会社分割の場合は、労働契約承継法によって分割事業の雇用の確保が保障されますが、事業譲渡には、同法の適用がありませんから、従業員の雇用等がそのまま確保できない場合があり、注意が必要です。

 譲渡対価は通常は現金です。普通は会社が譲渡対価を受け取るので、経営者兼株主は退職慰労金名目で実質的な譲渡対価を受け取ることになります。

【コラム】譲渡の対象となる「事業」とは

 株主総会の特別決議を必要とする事業譲渡とはいかなるものをいうかについては、法律上定義がなく、解釈問題となります。「事業」とは、一定の事業目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産の全部または重要な一部を譲渡し、これによって、譲渡会社がその財産によって営んでいた事業活動の全部または重要な一部を譲受人に受け継がせ、譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に競業避止義務を負う結果を伴うものをいうとされています(最大判昭和40922民集19-6-1600)。有機的一体として機能する財産とは、個々の有体財産だけでなく得意先等の経済的価値のある事実関係も含まれます。

2 会社分割

 1つの会社を2つ以上の会社に分けることをいいます。会社分割には、分割する会社(分割会社)がその事業に関して有する権利義務の全部または一部を既存の会社(承継会社)に承継させる吸収分割(会社法229号)と、分割会社が新たに会社(新設会社)を設立して承継させる新設分割(会社法230号)とがあります。   

 個別財産の譲渡行為である事業譲渡とは異なり組織法上の行為で、個々の権利義務についての契約による移転は必要がなく、権利義務は当然に承継されることになるのは合併と同様です。このことを「部分的包括承継」といいます。分割の内容をどのようにするかは、分割計画書または分割契約書(以下、「分割計画書等」といいます)の内容によって決まります。

 手続き的には、権利移転に個別の処理が不要になり、事業譲渡の場合と比べて簡便です。しかし、会社分割は、会社の組織運営の根本に著しい変更をもたらす手続であり、株主や会社債権者に重大な影響を与えるのは合併の場合と同様です。そこで、合併と同様の手続きが必要になります。すなわち、取締役会決議(3624項)、株主総会の特別決議(会社法7831項、7951項、309212号)、会社債権者異議手続(会社法7891項)が必要になるうえ、反対株主には株式買取請求権があります(会社法785条、797条)。

 したがって、より簡便な株式譲渡によることが可能な場合には、会社分割による実益は少ないといえます。実益があるとすれば、売り手において特定の資産を自社に残したい場合や買い手が売り手の一部門のみを吸収したい場合や2社ある場合、兄弟それぞれに承継させたり、会社分割をして、本業を後継者に承継させる場合等の限定されたケースにとどまるものと考えられます。