第2 法人における生命保険の利用と退職手当金等 | 法律大好きのブログ(弁護士村田英幸)

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2 法人における生命保険の利用と退職手当金等

1 法人における生命保険の利用

 納税資金確保のため、法人が生命保険契約を締結し、死亡保険金を原資として経営者の相続人に退職手当金または弔慰金を支給することができます。

2 退職手当金等

1) 退職手当金等とは

被相続人の死亡により相続人その他の者が当該被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与で被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したもの(以下、退職手当金等といいます)の支給を受けた場合においては、当該給与の支給を受けた者について当該給与は相続または遺贈により取得したものとみなされ、相続税の課税財産になります(相続税法312号)。

 退職手当金等は、被相続人の死亡後に被相続人の雇用主から相続人等に直接支給されるものであるため、本来の相続財産には該当しません。しかし、被相続人が死亡の直前に退職手当金等の支給を受けていた場合には、被相続人の財産に含まれて相続税の課税対象となり、相続税が課税されることになります。このような不公平な結論を是正すべく、相続税法は、退職手当金等は相続または遺贈により取得したものとみなして相続税の課税財産としました。

 退職手当金等はみなし相続財産として、退職手当金等から非課税金額を控除した金額が、相続税の課税価格に算入されます。

2) 退職手当金等の非課税金額の算定

 退職手当金等の非課税金額については以下の算式により算出されます。

非課税枠=法定相続人数×500万円

 また、弔慰金の非課税金額については、実質的に弔慰金等に該当するものと認められるものについては、下記の金額までは相続税の課税価格に算入されません(相続税基本通達3-20)。

被相続人の死亡原因

相続税の課税価格に算入されない弔慰金の額

業務上の死亡である場合

その雇用主等から受ける弔慰金等のうち、当該被相続人の死亡当時における賞与以外の普通給与(俸給、給料、賃金、扶養手当、勤務地手当、特殊勤務地手当等の合計額をいいます)の3年分に相当する金額

業務上の死亡でない場合

その雇用主等から受ける弔慰金等のうち、当該被相続人の死亡当時における賞与以外の普通給与の半年分に相当する金額

 上記の表のうち「業務」とは、当該被相続人に遂行すべきものとして割り当てられた仕事をいい、「業務上の死亡」とは、直接業務に起因する死亡または業務と相当因果関係があると認められる死亡をいいます(相続税基本通達3-22)。また、「給与」については、現物で支給されるものも含むことに留意が必要です(相続税基本通達3-24)。

 退職手当金等の受給者が具体的に決まっていない場合、その退職手当金に係る課税対象者とされる受取人は、以下の通りです(相続税基本通達3-25)。おおまかには退職給与規定等により支給を受ける者が具体的に定められているかどうかにより受取人が異なることになります。


受取人

退職給与規程その他これに準ずるもの(退職給与規程等)の定めによりその支給を受ける者が具体的に定められている場合

当該退職給与規程等により支給を受けることとなる者

退職給与規程等により支給を受ける者が具体的に定められていない場合または当該被相続人が退職給与規程等の適用を受けない者である場合

(ⅰ)相続税の申告書を提出する時または国税通則法に基づく更正や決定をする時までに当該被相続人に係る退職手当金等を現実に取得した者がある場合

その取得した者

(ⅱ)相続人全員の協議により当該被相続人に係る退職手当金等の支給を受ける者を定めた場合

その定められた者

(ⅲ)(ⅰ)および(ⅱ)以外の場合

その被相続人に係る相続人の全員

 なお、上記の表のうち(ⅲ)の場合には、各相続人は、当該被相続人に係る退職手当金等を各人均等に取得したものとして取り扱うものとされています。

3 退職手当金等の活用方法

退職金を支給すると、その分現金が会社から流出することになります。その結果、純資産価額や類似業種比準価額も下がります。また、適正な退職金は損金計上できるため、損金計上した分だけ会社の利益が減ることにもなります。つまり、退職金を支給することによって株式の評価額が下がることになるため、現経営者が退職をする時点で、現経営者から後継者に株式を生前贈与するとよいでしょう。

退職金が適正かどうかの判断は、内国法人が各事業年度においてその退職した役員に対して支給した退職給与の額が、当該役員のその内国法人の業務に従事した期間、その退職の事情、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況等に照らし、その退職した役員に対する退職給与として相当であると認められる金額かどうかによります(法人税施行令702号)。相当であると認められる金額を超える金額については、会社においては損金不算入となり、受け取った役員において給与所得とされる可能性もあるので注意が必要です。

同種、類似規模の法人と比較する場合には、主要な方法として、功績倍率法と1年当たり平均額法があります(金子宏『租税法第14版』301頁、弘文堂・2009年)。

(ⅰ)功績倍率法

 役員に対する退職給与が支給されている他の法人で、当該法人と業種・事業規模および退職した役員の地位等が類似するものを選定したうえ、その功績倍率に当該役員の最終月額報酬および勤続年数を乗じて算出する方法

(ⅱ)1年当たり平均額法

 (ⅰ)と同様に、他の法人における退職した役員の勤続年数1年あたりの平均退職給与の額に当該役員の勤続年数を乗じて算出する方法

4 死亡退職金の税務上のメリット

1) 非課税枠の利用

  死亡退職金が遺族の生活の糧となることに鑑み、法定相続人数×500万円が死亡退職金の非課税枠となります(相続税法1216号イ)。この退職金の非課税枠を利用することにより、納税額を低減することができます。これに該当するかどうかは、当該金品が退職給与規程その他これに準ずるものの定めに基づいて受ける場合においてはこれにより、その他の場合においては当該被相続人の地位、功労等を考慮し、当該被相続人の雇用主等が営む事業と類似する事業における当該被相続人と同様な地位にある者が受け、または受けると認められる額等を勘案して判定されます(相続税基本通達3-19)。

また、弔慰金は非課税となる場合がありますが、前述の通り、本来退職金であるものを名目上弔慰金として支給する等した場合には、一定の制限があります(相続税基本通達3-20)。

2) 株式評価額の低減

 取引相場のない株式の評価において、役員死亡退職金、弔慰金、社葬費は債務として算入することができ、株式評価額を低減させる効果もあります。

3) 所得税等が課税されないこと

 役員退職金を死亡退職金とすることでの税務上のメリットもあります。すなわち、役員退職金を退職者の生存時に受領する場合、受領者(被相続人)に退職所得として所得税が課せられます。その上、退職金受領者が死亡した場合、退職金として受領した現金は相続財産に組み入れられたうえ相続税が課せられることになります。これに対して、死亡退職金として受領すれば、前述の非課税枠を利用できるほか、生存時に受領した場合に課せられる所得税がありません。

 したがって、納税資金の確保の観点からすれば、役員退職金を死亡退職金として受け取る方が、後継者たる相続人の手元の現金が多いことになります。