「相続させる」旨の遺言と遺言執行者の登記申請権限の有無
(ⅰ)最判平成3・4・19民集45巻4号477頁 「相続させる」旨の遺言は、特段の事情がない限り、遺産分割方法の指 定を定めた遺言と解すべきであり、かつ、何らの行為を要せずして、被相 続人の死亡の時に直ちに当該遺産が指定された相続人に相続により承継 されるとされました。 (ⅱ)最判平成7・1・24判タ874号130頁 これを受けて、特定の不動産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言 があった場合、当該相続人は被相続人名義となっている当該不動産について単独で「相続」を原因とする所有権移転登記手続を行うことができ(不動産登記法63条2項)、遺言執行者は、遺言の執行として所有権移転登記手続をする義務を負うものではないとの判断が示されました。 登記実務でも、「相続させる」旨の遺言について、遺言執行者に相続登記を申請する代理権限はなく、当該相続人から申請すべきであるとの取扱いがなされています(登記研究672号175頁)。 (ⅲ)最判平成11・12・16民集53巻9号1989頁 ただし、「相続させる」旨の遺言の対象となった不動産の登記名義が被 相続人から他の相続人へ移転されている場合には、遺言執行者は、遺言執行の一環として、その妨害を排除するため、当該所有権移転登記の抹消登記手続またはこれに代わる真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を求めることができるとの判断が示されました。 登記実務も、この判決を受けて、「相続させる」旨の遺言があった場合においても、当該不動産につき他の相続人への移転登記が経由される等遺言の実現が妨害される事態が生じたときは、遺言執行者は、その抹消登記手続またはこれに代わる所有権移転登記手続を求める訴訟を提起した上、これを認容する確定判決の正本を添付して、当該移転登記の抹消登記またはこれに代わる所有権移転登記の申請をすることができるとしています(登記研究672号176頁)。 |