第9 死因贈与
1 死因贈与と遺贈に関する規定の準用
死因贈与とは、贈与者の死亡によって贈与の効力が発生する契約です。遺贈が相手方のない単独行為であり、遺贈者の意思のみで成立するのに
対して、死因贈与は贈与者と受贈者の合意による契約である点が異なりま
す。
しかし、贈与者の死亡によりその効力が生じる点では、遺贈と共通しているため、死因贈与には、遺贈に関する規定の準用があります(民法554条)。
この点、遺贈について厳格な方式(民法967条~984条)が定められているのは、遺贈が単独行為であるためですから、死因贈与については、これらの規定は準用されず、口頭で死因贈与契約は成立します。また、遺言の取消に関する民法1022条がその方式に関する部分を除いて準用されますから、書面で死因贈与契約がなされていたとしても、意思表示による撤回が認められます(最判昭和47・5・25民集26巻4号805頁)。
2 負担付死因贈与の例外
負担付死因贈与にも、遺贈に関する規定が準用されます。ただし、最判昭和57・4・30民集36巻4号763頁は、負担の履行が先履行となっている負担付死因贈与の撤回について、「贈与者の最終意思を尊重するの余り受贈者の利益を犠牲にすることは相当でない」として、「負担の履行状況にもかかわらず負担付死因贈与契約の全部又は一部の取消をすることがやむをえないと認められる特段の事情がない限り、遺言の取消に関する民法1022条、1023条の各規定を準用するのは相当でない」としました。
この判旨からすると、例えば、【事例】において長男丙に対して、事業を承継させる代わりに、経営者甲や妻乙の面倒を最期まで看ることを条件として死因贈与を行って(負担付死因贈与)、長男丙がその条件を守ってきた場合に、甲の死後、この死因贈与と抵触する遺言が発見されたとしても、遺言の取消に関する民法1022条、1023条の規定は、特段の事情のない限り、準用されず、撤回は認められないと思われます。