【コラム】 相続放棄・事実上の相続放棄(遺産分割)と登記
(ⅰ)相続放棄と登記 まず、民法915条所定の期間内に家庭裁判所に放棄の申述をすると、相続人は相続開始時に遡って相続開始がなかったと同じ地位におかれるこことなり、この効力は絶対的で、何人に対しても、登記等なくしてその効力を生ずると解すべきである(最判昭和46・1・20民集21巻1号16頁)とされます。すなわち、相続放棄によって持分を取得した他の相続人は、登記なくしてこれを第三者に対抗することができます。 (ⅱ)遺産分割と登記 他方、遺産分割により相続分と異なる相続分を取得した相続人は、その登記を経なければ、分割後に権利を取得した第三者に対し、自己の権利の取得を対抗することができない(最判昭和46・1・26民集25巻1号90頁)とされます。 (ⅲ)判例に対する評価 相続放棄も遺産分割も遡及効がありますから(民法939条、909条本文)、 かかる判例の結論の違いについて批判的な学説もあります。 しかし、これに対して肯定的な意見として、相続放棄の場合、相続放棄 をした者が持分を処分したりすれば、それは法定単純承認事由になるため (民法921条3号)、事実上、相続放棄後の第三者は、相続放棄をした相 続人の差押債権者ということになるとした上で、そもそも相続人の債権者 は、当該相続人がもともと有していた財産を引き当てに考えるべきで、相 続財産に対する期待はそれほど保護に値せず、判例の結論は説得的だとす るものもあります(内田貴『民法Ⅳ補訂版』352頁)。 したがって、相続放棄の場合には対抗問題としての処理、つまり登記の先後を優劣の基準にして考えることをしないことも合理的であると考えられます。 |