令和8年10月施行:同一労働同一賃金改正【第3回】
雇用管理指針の改正、会社は何を整備すればよいのか
こんにちは、社会保険労務士の小林です!
3回シリーズの最終回です。
今回は令和8年10月1日から変わる「雇用管理指針」の改正内容と、実際に会社として何をすればよいかをまとめてお伝えします。
「指針」とはいえ、事業主に義務として求められる内容も含まれていますので、ぜひ最後までお読みください。
雇用管理指針とは何か
雇用管理指針(正式名称:事業主が講ずべき短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針・平成19年厚生労働省告示第326号)は、パート・有期雇用労働者の適切な雇用管理のために事業主がとるべき措置を定めたものです。
今回の改正でいくつかの内容が追加・強化されました。
追加①:職業能力開発法の適用を認識・遵守することが必要です
職業能力開発促進法は、事業主が雇用する労働者に必要な職業訓練を行い、また自ら学ぼうとする労働者を支援する努力義務等を定めた法律です。
今回の指針改正で、この法律がパートタイム・有期雇用労働者にも適用されることを事業主が認識し、遵守しなければならない旨が明記されました。
研修機会やスキルアップの機会をパート社員に提供しているか、改めて確認してみましょう。
追加②:公正な評価に基づく賃金決定
パートタイム・有期雇用労働者の賃金を決定するにあたっては、職務の内容、職務の成果、意欲、能力または経験等を公正に評価し、昇給に反映させることが望ましいとされました。
正社員と共通する職務については、共通する賃金制度や評価基準を設けることも考えられます。
「正社員と同じように評価できる仕組みがあるか」という視点で、自社の人事評価制度を見直す良い機会です。
追加③:過半数代表者の選出ルールが明確化されました
パートタイム・有期雇用労働者に関する就業規則の作成・変更を行う際には、パートタイム・有期雇用労働者の過半数を代表する者(「パート・有期過半数代表者」)の意見を聴くよう努めなければなりません(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第7条)。
今回の改正では、このパート・有期過半数代表者の要件が次のように明確化されました。
管理監督者(労働基準法第41条第2号に規定する監督または管理の地位にある者)でないこと
意見を聴取する旨を明らかにして実施された投票・挙手等の手続により選出された者で、事業主の意向に基づき選出されたものでないこと
また、パート・有期過半数代表者として正当な行為をしたことを理由に解雇等の不利益な取扱いをしてはならないこと、および事務を円滑に遂行できるよう事務スペース・事務機器の提供等の配慮が義務付けられています。
追加④:待遇差の説明義務の方法が具体化されました
パートタイム・有期雇用労働者から正社員との待遇差について説明を求められた場合、事業主は適切に説明しなければなりません(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第14条第2項)。
今回の改正で、その説明方法が次のように具体化されました。
「資料を活用し、口頭により説明する方法」または「説明すべき事項を全て記載した分かりやすい資料を交付する方法」のいずれかによること
口頭で説明する場合は、説明に使用した資料を交付することが望ましい
資料の交付が困難な場合でも、後から閲覧できる機会を設ける等の工夫をするよう努めること
さらに、説明を求められていない場合でも、労働契約の更新時等に待遇差の内容・理由に関する分かりやすい資料を交付したり、説明を求めることができる旨を周知したりすることが望ましいとされています。
追加⑤:正社員転換推進措置の実施方法
パートタイム・有期雇用労働者の正社員転換を推進するため、法第13条の措置を講じる際には次の点が求められます。
正社員等への転換制度を設けるとともに、複数の措置を講ずることが望ましい
労働契約の更新時の面談等を活用し、パートタイム・有期雇用労働者の意向を確認して、その意向に配慮しなければならない
また、転換制度の内容や実績をウェブサイト等で定期的に公表することも望ましいとされています。
今すぐ確認すべき実務チェックリスト
3回シリーズを通じて解説してきた内容を踏まえ、令和8年10月1日までに対応が必要な事項をまとめます。
労働条件通知書:「待遇の相違等について説明を求めることができる旨」と相談窓口を追記する(違反した場合は10万円以下の過料)
賞与・退職手当の支給基準:目的を整理し、パートへの扱いが説明できるか確認する
各種手当(無事故手当・家族手当・住宅手当等)・休暇・褒賞:正社員との均衡が取れているか確認する
パート・有期過半数代表者の選出方法:適正な手続きで選出されているか確認する
待遇差の説明体制:資料の整備や口頭説明の手順を整えておく
職業能力開発:パートへの研修・スキルアップ機会を検討する
なお、不合理な待遇差を解消する際には、正社員の労働条件を引き下げることなく、パートタイム・有期雇用労働者の労働条件の改善によって解消することが求められています。
正社員の待遇を下げる方向での対応は、法律の趣旨に反しますので注意が必要です。
おわりに
3回にわたってお伝えしてきた内容、いかがでしたでしょうか。
「同一労働同一賃金」というテーマは、対応の範囲が広く「どこから手をつければよいか分からない」とおっしゃる経営者・人事担当者の方も多くいらっしゃいます。
大切なのは、まず自社の現状を把握することです。
労働条件通知書の見直しは今すぐできる第一歩。
ぜひ今日からでも始めてみてください。
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この記事は令和8年6月21日時点の内容で作成しました。今後の状況により変更となる可能性がありますのでご了承下さい。
社会保険労務士法人ケーズ・インテリジェンス
