「制度の利用を阻害すること」もハラスメントです【ハラスメント対策シリーズ:第5回】
「制度の利用を阻害すること」もハラスメントです
~妊娠・出産等、育児・介護休業等に関するハラスメントと、事業主の実務対応まとめ~
こんにちは、社会保険労務士の小林です!
妊娠・出産等に関するハラスメントには2つの型があります
ハラスメント対策についての解説はいよいよ最終回です。
今回は、均等法第15条に規定される妊娠・出産等に関するハラスメントと、育児・介護休業法第25条に規定される育児・介護休業等に関するハラスメントを取り上げます。
妊娠・出産等に関するハラスメントには、産前休業などの制度等の利用に関する言動により就業環境が害される「制度等の利用への嫌がらせ型」と、妊娠・出産したこと自体に関する言動により就業環境が害される「状態への嫌がらせ型」があります。
育児・介護休業等に関するハラスメントは、育児休業や介護休業などの制度等の利用に関する言動により就業環境が害されるものです。
業務分担や安全配慮等の観点から、客観的に見て業務上の必要性に基づく言動は、ハラスメントには該当しません。例えば、業務調整のために妊婦健診の日程調整を労働者の意向を確認しながら行うことは問題ありません。
「解雇その他不利益な取扱いを示唆するもの」は1回でも該当
制度等の利用の請求等をしたい旨を相談しただけで、上司が「休みを取るなら辞めてもらう」などと解雇その他不利益な取扱いを示唆する言動は、1回でもハラスメントに該当します。
一方、同僚による請求の取り下げを求める言動などは、繰り返し又は継続的に行われる場合に該当するとされています。
この違いは、実務上の判断で特に押さえておきたいポイントです。
また、育児休業を取得する本人ではなく、その配偶者に対して否定的な言動を行うことも、ハラスメントの発生の原因や背景になり得るとされています。
事業主が講ずべき雇用管理上の措置:4本柱で整理しましょう
ここまで5回にわたり各ハラスメントの内容を見てきましたが、事業主が講ずべき措置の骨格は共通しています。次の4本柱で自社の体制を点検してみましょう。
① 方針の明確化と周知・啓発
ハラスメントを行ってはならない旨の方針と、行為者への厳正な対処方針を、就業規則その他の服務規律等を定めた文書に規定し、管理監督者を含む全労働者に周知・啓発します。
カスタマーハラスメントについては、労働者を保護する旨の方針を顧客等にも周知することが被害防止に効果的です。
② 相談体制の整備
相談窓口をあらかじめ定め、労働者(求職者等に対するセクハラは求職者等にも)に周知します。
ハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合や該当するか微妙な場合も含め、広く相談に対応できる体制が必要です。
③ 事後の迅速かつ適切な対応
事実関係を迅速かつ正確に確認し、事実が確認できた場合は、被害者への配慮の措置と行為者への適正な措置を講じます。
事実が確認できなかった場合も、改めて方針を周知するなどの再発防止策を講じることが求められます。
④ プライバシー保護と不利益取扱いの禁止
相談者・行為者等のプライバシー(性的指向・ジェンダーアイデンティティ、病歴、不妊治療等の機微な個人情報を含みます)を保護する措置を講じ、その旨を周知します。
また、相談をしたことや事実確認に協力したことを理由とする解雇その他不利益な取扱いを行わない旨を定め、周知・啓発することも必須です。
施行日までに確認しておきたいチェックリスト
令和8年10月1日の施行に向けて、次の点を確認しておきましょう。
就業規則その他の服務規律等を定めた文書に、6つのハラスメントすべてについての方針が規定されているか
相談窓口の担当者が、カスタマーハラスメントや求職者等に対するセクハラも含めて対応できる体制になっているか
顧客等への対応マニュアルに、カスタマーハラスメントの対処方針が反映されているか
採用面接・説明会・インターンシップに関するルール(実施体制、連絡手段等)が明確化され、担当者と求職者等の双方に周知されているか
妊娠・出産、育児・介護に関する制度が利用できる旨が、全従業員に周知されているか
おわりに:全5回のシリーズはこれで完結です
第1回から第5回まで、ハラスメント対策の全体像、パワーハラスメント、カスタマーハラスメント、セクシュアルハラスメント・求職者等に対するセクシュアルハラスメント、そして妊娠・出産等・育児・介護休業等に関するハラスメントと事業主の実務対応まで、一通り確認してきました。
令和8年10月1日の施行まで時間は限られています。
就業規則の見直しや研修の実施など、自社の対策に不安がある方は、お気軽にご相談ください。
※【出典】厚生労働省「事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット」(都道府県労働局雇用環境・均等部(室)、令和8年7月作成)、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律、並びに各指針に基づき作成。
・・・・・・・・・・
この記事は令和8年8月10日時点の内容で作成しました。今後の状況により変更となる可能性がありますのでご了承下さい。
社会保険労務士法人ケーズ・インテリジェンス
