土屋は席に着くなり、俺にこう言った。
「ケンちゃん!キセキを起こさないかい?!」
そして俺が何か言葉を返す暇もなくこう続けた。
「僕ね、実は大学を3回生の時に中退してたんだ。理由はね、海外ボランティアってあるじゃん?
あれに2回生の時に参加したのがきっかけなんだけど、
とにかく自分の普段の当たり前の生活が向こうでは当たり前じゃなかったんだ!
僕に何が出来るわけじゃないけど、とにかく悔しくて...
その時の光景を目に焼き付けておこうって。
そして日本に帰って来て、僕のまた元通りの生活が始まったんだけど、
この生活に疑問を感じたままずーっと時間だけが過ぎ去っていったある日、
僕の人生を変える出会いがあったんだ!でね...」
とまだ話途中の土屋の会話を、俺は
「ちょっと待ってくれ土屋!」
という一言で止めた。
俺は土屋に相談があると言われてここに来た訳だが、
この話の流れからいくと、おそらくは自己開示からの、
壮大な夢物語を語り始めて、要するに俺にそのプロジェクトを手伝えということなんだろうと、
瞬時に理解した。
というのも俺はボランティアだとか人助けだとか、そういった類の話が大の苦手だった。
「なあ土屋、大学を中退した過程の説明はもういいよ。なんとなく分かったから。
で、お前今何やってんの?」
と俺が話題を逸らそうと興奮気味に話す土屋の話を省略して訪ねると、土屋は、
「うん。今はね、アルバイトで生計を立ててキセキを起こす準備をしてるんだ!」
「...お前さっきからキセキ、キセキって何言ってんの?」
とは訪ねつつも、土屋の真っ直ぐな目は眩しいぐらいに輝いていて、
今が嫌でしょうがない俺には、あいつが何を考えているかは分からないが、
他人の敷いたレールの上を歩かざるおえない俺よりも、
やっている事、言っている事はともかく、
なんか自分の人生歩んでいるな~と少しうらやましかった。
でもその気持ちはこれから語られる土屋の夢物語で一変すると共に、
この土屋との再会こそが、あの男との出会いの引き金になったのだ。