うちらのじだい -18ページ目

第6話 和樹の理由

和樹が転校してから色々噂が耳に入ってきた。
どうやら和樹の両親の離婚の理由は、お父さんの浮気だったらしい。
お母さんは毎日泣いていて、お父さんが愛人宅から帰ってこない日々が続き、お母さんも寂しさに耐えきれずホストクラブに出入りする姿を見た人が何人かいるらしい…。
和樹は両親が帰ってこない中、幼い妹にご飯を作ってあげたり寝かしつけたりしてたらしい。
そしてお母さんがホストクラブで作った借金がお父さんにバレて離婚、和樹は母親の方に引き取られ、妹は父親の方に引き取られた。






きっと和樹は寂しかったんだろう、誰かに構ってほしかったんだろう。
私に集中することが和樹の唯一の逃げ場だったのかもしれない。
和樹は今後大丈夫なのだろうか、誰も知り合いがいない妹とも父親とも離れた土地でどうやって立ち上がってこれからの人生を切り開いていくのだろうか。









そんなこと誰も分かるはずがなかった。






第5話 学級会

学校に着くなり、朝から学級会が始まった。
昨日の出来事に関わった生徒を先生が全員立たせる。




「昨日、ゆうなのお母さんから電話があってな」




先生…そんなことみんなの前で言わなくてもと思った。
なんだかかなり大騒ぎになっている。
もうこれ以上苦しめないでほしい…。
先生は一通りクラスのみんなに出来事を話すと、みんなの前で私が和樹に、そして和樹が私に謝罪をし、握手して仲直りしろという。
本当にいい恥さらしだ。
和樹も私も顔が真っ赤だ。
ただでさえ握手なんて恥ずかしいのにこの先生はみんなの前でしろと言うのか…子供心を全く考えていない。


先に和樹が「ごめんよ」と謝った。それに続き私も「ごめん」と謝った。



どうして私が謝らなければいけないのだろう、手を出したからいけないのかと考えてると、クラスの一番の悪の和樹が大声で泣き出した。




和樹もよっぽどためていたものがあったのだろう、和樹が転入時に何があったのかは知らないが、和樹は和樹なりに苦労したんだろう。
だからクラスで一番の悪になったのだろう。
すんなりクラスに馴染めた私が気に入らなかったのかもしれないし、腕相撲で負けたのがよっぽど悔しかったのかもしれない。
和樹は泣き続けた、クラスのみんなは和樹が泣いているのが信じられなくて驚いている。









翌日、和樹は名字が変わり、違う学校に引っ越した。

















和樹も色々大変だったのだろう

第4話 怒りの電話

私は家に帰った、精神的に疲れていてどうやって帰ったのか覚えていない。身体がやけに重いのは痛みがあるからじゃなかった。




「和樹だって転校生じゃん…」




心の中で何度も何度もつぶやく。




家のドアを開ける。




「…ただいま」




お母さんこんな私の顔見たら悲しむだろうなと思いながら呟いた。自分の娘が傷だらけになって帰ってきたら、普通の親なら心配するだろう…。


なんだか申し訳なかった、でももう和樹たちから逃げられなかった。


何度断っても、決闘しようと毎日待っているのだから。


「…あんた?!どうしたの?!!誰にやられたの?!」


軽く母はパニックになっている。


お母さん…ごめんなさい…ごめんなさい…と心の中で叫ぶのと同時に溜めていた涙が一気にこぼれ落ちた。でも、学校で転校生だからという理由で男子にやられたなんて言えない。だってそんなこと言ったら母は自分を責めてしまうから…。転校させたのは私たちの責任だと思いこんでしまうから。



「男子と喧嘩したの…」



私は母にそれ以上のことは言わなかった。と言ってもお母さんもそれ以上聞いてこなかった。



母は立ち上がると急いでどこかに電話した。



「もしもし、先生ですか?うちの子が傷だらけになって帰ってきんですけど…ええ、男子にやられたと言っているんですけどどういうことですか?!きちんと指導してくれないと困ります!!」



母はかなりの過保護だった。
なにやら担任の先生に電話している様子だ、かなり怒った口調で話している。どういうつもりなのだろうか…これは私と和樹の問題で先生との問題ではない。もうこれ以上問題を大きくしないでほしい!もうこれで和樹と決闘が終わり、明日から明るい学校生活が待っているのだから。



「ちょっとお母さんやめてよ!」



母はいくら止めてもやめなかった。



私にとって一番あり得ないことが起こった。



「明日学級会でクラス全員で話し合うことになったから」







母は確かにそう言った。