うちらのじだい -14ページ目

第17話 夏子の選んだ人生

夏子は20歳で出産、結婚。
そして21歳で離婚。
私を置いて知らない男と姿を消して、1年がたとうとしていた。




私が一歳になったある日、夏子がひょっこり帰ってきた。
本当ならばあんな事をしたんだから、たやすくは帰ってこれないだろう。

しかもげっそり痩せて…。






美津子もその夫も、元々かなり甘やかす性格で、本当ならば子供を見捨てて出て行った娘がいきなり帰ってきたら一発ビンタくらいしてもおかしくない。



でもかなり痩せて帰ってきた娘に、美津子は得意な料理を奮った。







夏子の隣にいた見知らぬ男の分まで…。






2人はかなりお腹を好かせていたみたいで、野良犬のようにがっついた。
なんともう3日もご飯を食べていなかったらしい…。






満足そうにすると、美津子にお金を借りたいと言い出し、10万円ほど貸してもらうとまた2人でどこかに消えてしまった。





はっきり言って自分勝手にも程がありすぎる。





でもそんな甘やかし方で育ててきてしまった美津子も悪いと思う。
美津子は自分でも甘やかす事がいけないと思っていた。
でも可愛い娘を思うといつもどうしようもなくなってしまう。
それが本当は夏子のためにはいっさいならないのに…。




それから夏子は一人暮らししながらも、男と付き合っては別れての繰り返しだった。
私の誕生日会をやるときや、お正月とかイベントごとがあると私の元に帰ってきていたが、毎回毎回連れてくる男の顔はいつも違った。





それから妊娠、この件に関しては前にも書いたが息子が産まれる。

息子の名前は拓海と言った。


父親はいない。


またもや本当にすぐ別れてしまった…。








それから夏子は、男はもう必要ないと決意する。
一人で息子を育てる決意をし、親戚のおばさんの元で芸者になる。

元モデルという事もあり、顔もスタイルも良かった夏子はすぐに一番の売れっ子になった。
それと同時に夏子は忙しい毎日にとても子育てはできないと言い出した。両親の面倒は死ぬまで夏子が責任を持って見るから、拓海を見ていてほしいと。






それを聞いた美津子と夫は、夏子が住む田舎へと私を連れ飛んでいった。
もちろん仕事も辞め、家も売り、全てを捨てて遠い田舎町へとやってきた。





少しは古いけど庭も付いて温泉付きの大きな家でみんなで住むことになった。








そこで私は真央から聞くまでは何も知らずに小学校四年生の現在まで生活してきた。






夏子が心を入れ替えて頑張っていた。
毎日綺麗な着物を来て仕事に行く、それも芸能人や大企業の社長、医者や弁護士クラスの人しか相手にしなかった。
毎日のように高級寿司屋のお土産を持って帰ってきたり、私が遅くまで起きていると2人しかいないのにピザ屋さんに電話して、翌朝みんなも食べれるように興味あるものは片っ端から頼み、会計は一万くらいはいつも払っていた。
私たちはその頃すごく贅沢な生活をしていた。





人が変わったように働く心や子供を大切にする心を持ってくれた夏子に感謝したい。

第16話 美津子の決意

美津子と夫は一晩中ドアを叩く秀樹とその母親に対し、いないふりをした。



電気はすべて消して布団の中に私を抱きながら息をひそめて隠れていた。


それは毎日続いた、美津子は秀樹がまだ若干二十歳と言う事もあり、すぐに再婚するんだろうと思った。そうなると私が秀樹の新しい妻に大事にされない事を思ったらどうしても手放したくなかったらしい。


でも秀樹にとったら大事なものを2つ失う悲しみは大きかったと思う。
大好きな妻とその子供との幸せな日々が無くなるんだから…。




美津子は40代ながら体力的にも精神的にも子育てはキツいと思ったが、私を面倒見ていく事を固く決意した。
やっと自分の二人の娘が大きくなり、子育てが一段落ついた所なのに、まだ一歳にも満たない赤ちゃんを一から育てる事は容易な事ではない。
お金だってかかるし、身体もボロボロになる。
でも美津子の決心は固かった。









人から見たらおかしいんだろうなと思う、美津子の自分の娘がすべてワガママでしたことなのに秀樹から子供を取り上げるなんて。
私も他人だったらそう思うに違いない。
秀樹の気持ちはどうなるのだろうかと…。








それから秀樹の家族と夏子の家族で私を引き取る話はついた、秀樹の家族が泣く泣く私を諦めた。



ただ1人夏子は現れることなくまだ姿を消していた。











それからすぐ秀樹は再婚したらしい、今は3人の子供がいるらしい。私は秀樹の顔を覚えてはいないから、どんな人だったのか分からないし街であっても気付かないだろう。
あれから21年もたっているのだから。
でも許されるなら、今すぐにでも会ってみたいと思う。
タウンページや104でも調べてはみたけど、見つからなかった。
秀樹の方が探してくれたとしても、私は引っ越しを10回以上もしてるし、ましては今はかなり地方の方に住んでいるから見つけることはできないと思う。
もしかしたら私の事はもう頭の中にはないかもしれない、それでもいいから会いたいと思ってしまう。
今私には娘が1人いるから秀樹は知らない間にお爺ちゃんになっている。
娘を会わせてあげたい。
でも秀樹を見つけられない…。

私は願う、秀樹が幸せでいる事と元気でいること。
そして、いつかきっと会える日が来ることを…。

第15話 私が養女になった理由

これは大人になった今だから知った理由だ、子供の頃に知っても多分複雑で分からなかったと思う。産みの母、私のお姉ちゃんの名前は夏子。お父さんの名前は秀樹と言うらしい。
2人は高校時代から付き合っていた、同じ年で親公認でお互いの家を行き来するような仲だった。





そして夏子が19歳の時に妊娠した、それが私だった。



そして結婚、出産をした。





夏子がご飯を作って待ってると、秀樹は帰ってこない。
秀樹は自分の母親の家でご飯を食べてくるのが好きだったらしい。
夏子が言うにはマザコンだと言っていた。









そして夏子は秀樹に対して愛情がなくなってきてしまい、不倫をした。








夏子は不倫相手の男と一緒に家を出ていってしまった。
その間私は秀樹の実家で育てられていた。







そして私の育ての母でもありお婆ちゃんでもある美津子は、いなくなった娘を探しに夫と朝も昼も夜も探し回った。






秀樹も探し回った。








すると夜スナックで働いている夏子を見つけることができた。
無理やり秀樹がいる秀樹の実家に連れて帰った。





秀樹は夏子とやり直したかったらしいが、夏子はこれから先秀樹とやっていくつもりは全くなかったらしい。
夏子も秀樹も話し合いはなかなか解決しなかった。


頑固な夏子に泣く泣く秀樹は諦めた。
夏子は不倫相手とやっていくため、秀樹が私を引き取ることにした。






秀樹の実家では離れた部屋にたった1人私が座布団一枚の上で何かしていたらしい。
それを見た美津子が可哀相に思い心の中で何をしてでも私を養女に引き取ることを決意。








その間夏子は不倫相手とすぐ出ていってしまい誰も行方が分からなくなる。






美津子は私と1日だけ一緒にいさせてほしいと、秀樹の母と秀樹にお願いする。
私はまだ一歳にも満たない赤ちゃんだった。
承諾を貰うと美津子は私を家につれて来た。
それから2日、3日と時は過ぎる。








美津子は私を返すつもりはなかった。











そして、とうとう不信に思った秀樹の家族が私を引き取りに家に来た。