第16話 美津子の決意 | うちらのじだい

第16話 美津子の決意

美津子と夫は一晩中ドアを叩く秀樹とその母親に対し、いないふりをした。



電気はすべて消して布団の中に私を抱きながら息をひそめて隠れていた。


それは毎日続いた、美津子は秀樹がまだ若干二十歳と言う事もあり、すぐに再婚するんだろうと思った。そうなると私が秀樹の新しい妻に大事にされない事を思ったらどうしても手放したくなかったらしい。


でも秀樹にとったら大事なものを2つ失う悲しみは大きかったと思う。
大好きな妻とその子供との幸せな日々が無くなるんだから…。




美津子は40代ながら体力的にも精神的にも子育てはキツいと思ったが、私を面倒見ていく事を固く決意した。
やっと自分の二人の娘が大きくなり、子育てが一段落ついた所なのに、まだ一歳にも満たない赤ちゃんを一から育てる事は容易な事ではない。
お金だってかかるし、身体もボロボロになる。
でも美津子の決心は固かった。









人から見たらおかしいんだろうなと思う、美津子の自分の娘がすべてワガママでしたことなのに秀樹から子供を取り上げるなんて。
私も他人だったらそう思うに違いない。
秀樹の気持ちはどうなるのだろうかと…。








それから秀樹の家族と夏子の家族で私を引き取る話はついた、秀樹の家族が泣く泣く私を諦めた。



ただ1人夏子は現れることなくまだ姿を消していた。











それからすぐ秀樹は再婚したらしい、今は3人の子供がいるらしい。私は秀樹の顔を覚えてはいないから、どんな人だったのか分からないし街であっても気付かないだろう。
あれから21年もたっているのだから。
でも許されるなら、今すぐにでも会ってみたいと思う。
タウンページや104でも調べてはみたけど、見つからなかった。
秀樹の方が探してくれたとしても、私は引っ越しを10回以上もしてるし、ましては今はかなり地方の方に住んでいるから見つけることはできないと思う。
もしかしたら私の事はもう頭の中にはないかもしれない、それでもいいから会いたいと思ってしまう。
今私には娘が1人いるから秀樹は知らない間にお爺ちゃんになっている。
娘を会わせてあげたい。
でも秀樹を見つけられない…。

私は願う、秀樹が幸せでいる事と元気でいること。
そして、いつかきっと会える日が来ることを…。