昨年の4月にNHKEテレで放送開始したテレビアニメ「少年アシベGO!GO!ゴマちゃん」(毎週火曜日午後6時45分から)。
先日、第二期目の放送が発表になった。つまり、今年の4月からも、引き続き放送があるという事である。
まずはめでたい。
ゴマちゃんも、安堵の溜息とともにこう申しております。
ゴマちゃん「きゅー(よかった)……」
この作品に脚本で参加し、最初の担当回を書いてから一年と少しが経った。実は昨年の末から既に第二期の製作は決定していて、私たち脚本家チームは二期目の脚本作業に入っているのだが、映像作品というものはオフィシャルな発表があるまでは製作過程を内緒にしていなければならず、先日のアナウンスで晴れて公になったのでこうして記事にもできるという次第。特にアニメの場合、権利関係やグッズの販売スケジュールなどと作品が密接にリンクしているから、先走ってスタッフの誰かが公表してしまうと色々とトラブルの元になるので、昔からこうした決め事がなされている。当然と言えば当然だと思う(別にイジワルで隠しているのではありません)。
「二期目発表」を受けた先日の会議で、とある人からこんな話が出た。
「公になったからには、皆さん、SNS等でどしどし露出させましょう」
こうしたツールのある今では、これもまた重要な番宣活動の一つになり、有効な手立てである。
ゴマちゃんに関しては前にも一度書いた。
私は、脚本家になって来年でちょうど30年になるのだが、この30年の間に、こうした「キャラクターもの」はピカチュウを除くとほとんど書いていない(もっともあれはキャラクターものといってもだいぶドラマ性が強いから、厳密な意味ではキャラの魅力に特化したこのジャンルには入らないと思うのだが)。だがこうしたキャラものについては、敬遠していた訳でも嫌いな訳でもなく、単に依頼が来なかったに過ぎない。
いざ書いてみると。
何とも楽しい。
ゴマちゃんを中心に、アシベ、子供たち、妙な大人たちが入り乱れ、時にほっこりし、時に笑えて泣けて、時にカオスな展開になる事もあり、これはもうゴマちゃんという希有なキャラクターが巻き起こす独特の世界観である。一年前からずっと、この世界に浸りながら、かなり新鮮な気持ちで脚本を書いている。原作は既に二十数年前のものだが、そこには時代に関係のないオリジナリティがあり、お陰で今でもその楽しさは古びていない。
言えば、「いつの世も、ゴマちゃんはゴマちゃん」なのだ。
こうした作品に私を呼んで下さったプロデューサーと近藤信宏監督には、大変感謝している。
ありがたい事だ。
一期目の昨年は、私にはたまたまプールや銭湯、水族館、雪といった話が巡って来る機会が多く、「私は『水回り担当』です」と言って自分で笑っていた。
これも前に書いたが、脚本を書く時は自然と各キャラクターになりきっているので、プールの中を泳ぐゴマちゃんのシーンを書いていると、何だか自分まで開放感一杯の気分になり、キーボードの前でしばしほのぼのするのが常だった。
これまで、ヒーローや悪党、その他様々なキャラに「なりきって」脚本を書いてきたが、さすがにあざらしの赤ちゃんになりきったのはこれが初めてで(当たり前だが)、何とも不思議な、しあわせな、穏やかな心持ちになるから不思議なものである。これも当たり前だが、他の作品では「あざらしの赤ちゃんの気持ちになる」機会などあり得ないので、つまりは得がたい経験をしているという事になる。ゴマちゃんは基本的に「きゅー」しか言わないのだが、「このシーンの『きゅー』はこんな気持ちだな」とか、「こっちの『きゅー』はちょっと怒ってるんだよな」とか、同じ「きゅー」でもそれぞれに違う意味があり(その点はピカチュウの「ピカ」と同じ)、書けば書くほど愛着の湧いてくるキャラクターである。これもまた、得がたい経験といえる。
二期目は、これもたまたまとある種類の類似回が回ってきていて、一期目とは違う楽しさを味わっている。どんな「巡り合わせ」になっているのかは、4月からの放送を楽しみにしていただきたい。
冒頭にゴマちゃんの安堵の溜息を書いた。
テレビアニメーションとは因果なもので、一期目の製作が始まり、放送が始まってもしばらくは、「二期目があるかどうか」はわからない。勿論継続されるという事は文句なしに人気のある証だからこんなに嬉しい事はないのだが、そこにたどり着くまでは、スタッフやキャストは苦労の連続なのである。
だから二期目の決まったゴマちゃんは、今、「きゅー(よかった)……」と安堵している次第なのだ。
よかったね、ゴマちゃん。
これからもよろしくお願いします。
三期目を勝ち取るために、GO!GO!だきゅー(笑)。