(第1章)希望が湧いてくる
私は高校生の頃、菊池寛の作品をよく読んだ。
菊池寛は、難しいことをやさしく、分かり易く
綴るから、さわやかに読書ができた。
「恩讐の彼方に」は、苦労した者どうしが培う
思いやりのほうが、恨みよりも強いということを
感じさせる物語である。
人間を楽天的、肯定的にみる精神は、「積極的に
生きる」ことを教えてくれる。
中島敦の「山月記」は、難解だが、名文だ。
たとえ虎に変貌しても友情は損なわれない
という人間に対する思いやりが温かく描かれて
いる。読後にさわやかな風が吹きこんでくるのは、
人間に対する肯定的な見解があるからだろう。
これらの作家の作品には、「人間は素晴らしい」という
見方が貫かれいる為、読む者に「希望」と「生きる活力」
を与えてくれる。