次の問題文は、約1000字で4級想定の評論文です。
最初に文章を読んで、論旨をまとめ、次に意見文を
書かせるというテスト内容です。
全国都道府県公立高校の評論文は、2500字程度あり、
課題作文は、200字程度が平均値なので、およそ半分以下
の分量になります。従い、小6生に相応しい内容になり
ます。文章を基本から学びたい方は、1000字の文章から
スタートすることをお勧めします。
次の文章を読んで問題に答えなさい。
(1) この文章を100字から140字以内に要旨をまとめなさい。
(2) 「父親の権威」を高めるためには、どのようにすべきか、
貴方の考えを100字から140字以内で書きなさい。
父親の権威低下、あるいは家族の弱体化を嘆く声が聞か
れる。だが、これは今に始まったことではない。半世紀前、
高度成長期にも同種の論争があり、当時は、「戸主」の権
限を廃した戦後憲法が原因だとする主張も強かったようだ。
これに対して育児評論家の松田道雄さんが、昔は社会政
策が整っておらず、「家」が一種の基礎自治体として医療や
介護などの扶助をほとんど担っていたから、必然的に家長
が強かったにすぎない---という趣旨の反論を著した(1996年、
岩波新書「おやじ対こども」)松田さんはさらにこう書く。養老
保険(年金)も健康保険も災害保険もすっかりやめてしまって、
みんな家でひきうけるということにしないかぎり、父親は戸主
としての権威を回復しないでしょう。そういうことが、いまでき
るしょうか>。つまり自助からから共助から公助へと社会的
仕組みが整ってきた成果として、家父長を中心とする「家」
が軽くなったのだという。
半世紀前の問いかけをあえて紹介したのは、今やもっと
切実に、政治がめざす「家族」のあり方を問うべき状況だ
がらだ。国民皆保険・皆年金が確立し、社会保障が整備
されるとともに、世帯の平均人数は減少してきた。戦後ま
もない頃は約5人だったものが、2014年は2.36人。世帯の
形では一人暮らしが最も多く、33%を占める。「核家族化」
と言われたのはるか前のことで、現在は「単身化」が急速
に進んでいる。社会保障の充実が家族の縮小や解体を招
いたと見るか、個人の尊重する流れに応えて社会保障が
整備されたと見るかは難しい。おそらく両面があるのだろう。
同居者がいないという意味で、家族そのものが消えつつ、
ある現状には不安を覚える。社会保障費が急増する中で、
「公助=公費による福祉」を縮小して「自助=家族の責任と負
担」を拡大しようという主張にも説得力はある。
しかし、松田さんが「法律が元に戻れば父親が復権するわ
けではない」と見たように、単純に時計の針を戻せばよいと
も思えない。例えば介護にしても、かつて高齢者の面倒は
「家」が見ていたとはいえ、その「家」が引き受ける苦労は
妻、嫁、娘つまり女性に負っていた面が大きい。劇作家の
山崎正和さんも今年7月、Y誌「地球を読む」で祖母の介護
を担って結婚や就職などを犠牲にした女性の例を引き、「古
い因習的な家族観は捨て、介護の社会化をいっそう進める
べきだ」と主張した。
「家族の絆を取り戻せ」と主張する政治家がいる。総論とし
て反対する声は少ないと思う。だが、介護はじめ年金や医
療、子育てなど政策の観点で見た「家族」は、かなり吟味が
必要だ。「家族と社会保障」をより深く語る人に政治家を志
して欲しい。