「あんた、何いってんの?」 

鼻で笑って、言ったんだ。


鼻で笑うは、嘲り笑い



そんなにいい女と

結婚したつもりで??



私が、弘田さんのもとで働いたり

食事をしたり、飲みに行ったり


そんなつながりを

持っていたのは15歳〜20歳




私たちの関係性は


バイト先のオーナーと

近所に住むバイト女子



親のように慕っていたとか

特別に目をかけてもらったとか


そんなことは、特にない。


ごく最近、私の次男であるりくの

20歳の御祝いを

届けに来てくれるまでは




すっかり忘れていたのだ…。





「弘田さんには、

子どもがいないから」


母の言葉をきっかけに、思い出したのは



私が20歳の時に


弘田さんの隣で飲んだ

綺麗な甘酸っぱいカクテルの味と


弘田さんの家族の話






ワクワクしながら読み終えた推理小説も

泣きながら見終わった感動の名作映画も


さりげない日常を重ねながら

どこかに忘れてきた


それが、アラフィフになった

私の現実である。



弘田さんも、きっとカクテルの夜のことは、覚えていないと思うし


パチンコ事件は、覚えているかもしれないけれども




私が、昔ドラマでみた 

あの家政婦のように



↑実際の画像です。




耳をそばだてていたことは


きっと、気づいていなかったし

今までも、そしてこれからも


弘田さんにとっては、

「知らないこと」なのだろう。



ずっと忘れていた弘田さんとの時間を

鮮明に思い出したら










あのキツネははじめ、十万ものキツネとおんなじだった。

だけど、いまじゃもう

ぼくの友だちになっているんだから、この世に一ぴきしかいないキツネなんだよ。



人間は、この大切なことをわすれているんだ。


面倒をみた相手には

いつまでも責任があるんだ。



「星の王子様」

のことを思い出したが、



この一節だって

年齢とともに感じ方が変わる。







弘田さん夫妻の、子どもに纏わる

いろんな話を聞いたとき


20歳の私の感想は??


子どもがいない、そのワケは

ちまたで噂の「奥さんの手術」

ではなかったらしい。






今の私は、20歳の私に


そこなの?と言いたい反面

そこでしょ!とも思う。





私の母も含め

周辺にいる人たちは、みな今でも


奥様から発信された

女性の病気体験談をもとに



「奥様が病気になって手術をしたから、子どもをもつことができなかったのだ。」

と思っている。




弘田さんの奥様が

意図していたのか いないのか。


もし、私が奥様に

真意をきいたら?




ばかねぇ。まこちゃんは。

相変わらず。


と首をかしげて、ため息をつき


私は、そんな

手の込んだ真似しないわよ。




呆れ顔で、そう言うような気がするけれども

一生そんな日は、来ないだろうとも思う。




愛するいうこと


それは、感情ではない。


意思に裏付けられた

技術である。


エーリッヒ・ フロム 「愛するということ」