時間旅行の果てに (スローターハウス5) | 裏窓のブログ

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今朝は暴風雨のような雨が降っていたらしく、眠っている夢の中で窓に雨が叩きつけられるような音がひたすら鳴っていたような……


起きてからとりあえずレコードに針を落とす、一枚目がジャズ、フュージョン界の超絶技巧派ドラマー、ビリー・コブハムの73年発表のソロデビュー作


(スペクトラム)


それまでマイルス・デイビスのレコーディングに参加したり、ジョン・マクラフリン率いるマハヴィシュヌ・オーケストラのメンバーであったキャリアがこの作品に裏打ちされている


ジャズをベースにロック、ファンク、フュージョン等のテイストを加味し、そこに重量級技巧ドラミングが全面に押し出された作品


一曲目のスピーディーな手数の多いイントロに絡みつくように弾きまくってくるギターがこれまた凄い!

このギタリストが、この作品の2年後にリッチー・ブラックモアの後任としてディープ・パープルに加入するトミー・ボーリン!


曲はビリー・コブハムの作品だが、存在感のあるスリリングなギタープレイを聴かせている、キーボードのヤン・ハマーとのバトルも絶妙だ!


これを聴くと一発で目が覚める(笑)


ビリー・コブハムの作品はブレイクビーツの宝庫なので後々、多くのアーティストにサンプリングされている


そして2枚目は日本のジャズシンガー・笠井紀美子による72年発表の作品


  (アンブレラ)


元々、ジャズシンガーとして活躍していた彼女がロックに挑戦した唯一の作品でプロデュースがかまやつひろし!

この時代のジャパニーズ・グルーヴ最高峰のひとつとも言える、ためのあるレイドバックリズムに乗せて日本語詩でブギーからブルース、ソフトロックまで歌いこなす

バックに参加しているメンバーも細野晴臣、鈴木茂、つのだひろ、大野克夫などの強者揃い


メロディーラインにはどことなく、ウォッカ・コリンズ、上久保ジュン、成田賢、トゥーマッチなどと同じ70年代ニューロックの匂いを感じる


コレ聴きながらの目覚めのコーヒーと煙草がまた美味い(笑)


で、自分のライブはというと! 4月5日に新大久保アースダムにて!

詳細は次回の記事で!


さて、今回のムービーレビューは


1972年のアメリカ映画、監督はジョージ・ロイ・ヒルによるSF映画


  (スローターハウス5)


この作品の原作はアメリカの作家カート・ヴォネガットのSF小説、独特なスタイルで綴られるヴォネガットの小説が映画化されると、こんな感じになるのか…… と思わせる

そもそもジョージ・ロイ・ヒルという監督は、映像化が非常に困難に思える複雑な内容の長編小説を熟練の職人技で映画化する、すごい特技を持ち合わせた人らしい


ストーリーを進めると


主人公のビリー・ビルグリム(マイケル・サックス)がタイプライターで手紙を打っているシーンから始まる

地元新聞の編集者に宛てたその手紙には ー 私は時間に縛られず、時を前に進んだり後ろに戻ったりします、しかし、その移動を自分でコントロールすることはできません ー とある


シーン変わり、第二次大戦下のヨーロッパの雪原、みすぼらしい姿で隠れているところをドイツ軍に発見され捕虜となるビリー青年、彼は故郷の町で検眼師の学校に通っていたが徴兵され、やむなく出征していた

どちらかというと、影の薄いひ弱なタイプ、共に捕虜となり同じ収容所に送られるアメリカ兵ラザロ(ロン・リーブマン)はうだつの上がらないビリーが気に入らないらしく、相棒が移送中に死んだのもビリーのせいだと言いがかりをつけ、いつか殺してやる! とすごむ


場面変わって、トランファマドール星、中年となったビリーは若手ポルノ女優のモンタナ(ヴァレリー・ペリン)と仲睦まじく過ごしている

2人は地球人類のサンプルとして、トランファマドール星人に拉致されてきた、なぜ宇宙人にビリーが選ばれたのか?はわからないが、モンタナがビリーの相手に選ばれたことには理由がある、彼女はビリーの息子のグラビア・オナペットであり、ビリー自身も密かに彼女を気に入っていたのが、その理由だった


シーン変わり、結婚式、戦争が終わり故郷に戻ったビリーは検眼師学校のオーナーの娘であるバレンシアと結婚する、義父に湖畔の家を与えられたビリーは逆玉に乗る、だが性的魅力に欠けるバレンシアよりペットの犬を可愛がるビリー、平凡だが幸せな日々を過ごす


シーン変わり、ドイツの古都ドレスデン、捕虜となったビリーたちはこの街の収容所に移された

ビリーは相変わらずラザロから嫌がらせを受けているが年上のダービーがいつも助けてくれる

ダービーは常識的な元教師で家族を愛する男だった


シーン変わり、バーモント州の山、検眼師になったビリーはカナダの会合に参加するため飛行機に乗るが、この飛行機が墜落、奇跡的に助かったビリーは病院に運ばれる

この事故の知らせを聞いたバレンシアは取り乱し、車を無理に飛ばしたため途中で追突事故を起こし死んでしまう


シーン変わり、再びドレスデン、ビリーたちは捕虜収容所の入口で整列させられている、無表情なドイツ軍将校が演説する ー この収容所はシュラフト・ホフ・フュンフ、第5屠殺場(スローターハウス5)という名前である、非常時に備え、この名前を忘れるな! シュラフト・ホフ・フュンフ ー


さて、ここまで……時空を超えたエピソードがランダム再生のように並べられているものの、デタラメに並べられているようでも、個々のエピソードの意図するところは単純明快で、それを巧みにつなぎあわせているので無理なく物語は流れる 


やがてビリーのタイムトラベルは1945年の2月13日のドレスデンへと進行する、この日、連合国軍はドイツの街ドレスデンに無差別爆撃を行う、戦争も終わりかけていたこの時期、戦略的に意味がないとされていた街を何故壊滅させたのかは今でも謎として残る


ドレスデンの捕虜収容所にいたビリーは、こうして味方の絨毯爆撃をくらった、ビリーはダービーたちと共に地下壕に避難し生き残る、空襲後に瓦礫の山と化した街でビリーたち捕虜は死体回収作業を命じられるが、その作業中に起こったくだらない行き違いからダービーはドイツ兵に射殺される


ビリー自身もそれから数十年後、ラザロの的はずれな逆恨みで命を落とすことになるが、こうしたやり取りを経て、ビリーはトランファマドール星人から学んだ運命論を信仰するようになる


ー 人生には始まりも中間も終わりもない、世界は瞬間の集積なのだ、だから生き抜くためには良い瞬間に集中し、悪い人瞬間は無視する、過去も現在も未来も変えられない、自由意志などというものは宇宙には存在しない、ボタンは押される、そういうものだ ー


この作品の根本は人間の愚かさに対する絶望なのかも知れない ……