佐伯祐三
大きな展示会に行った時だった。
目玉の画家はそっちのけで一枚の絵に強烈に興味を惹かれた。
カフェの絵なのだけど、
殴り書きされたかのような、荒々しいタッチ。
さっき塗られたかのような勢いのある色彩。
面をくらって、その日は他の作品を鑑賞しても何も感じませんでした…
家に帰って画家について調べると、
驚いたことに描いたのは日本人。
しかも30年という短い生涯でこの世を去っている人。
佐伯祐三
パリに憧れ、パリで死を選んだ日本人
佐伯祐三は東京美術学校を卒業後、
25歳の時に妻子をともないパリに渡ります。
フォーヴィスムの大家ヴラマンクに「アカデミック!」と作品を批判されたことをきっかけに、パリの堅牢な建物を重厚な筆致で描く独自の作風を確立しました。一時帰国をはさんで再び渡仏しますが結核と精神的衰退により、
パリで最期を迎えます。
実は2度目の渡仏の時には
もうパリに行ったら命が危ないと医師の忠告を受けていました…
彼は多分、自分の命の終わりが近いことを知りながら描き続けたのだと思います。
生き急いだ人生と作品。
乱雑な文字は時間の勢いを表し、躍るような色彩は生命の鮮やかさを表現しているように感じます。
昨年、佐伯祐三の大きな展示会に行ったのですが
その頃の心境が
やりはじめていた事を中途半端に投げたそうとしていた時期だったので…
人生に終わりがある事を再確認するきっかけになりました。
だからこそ、今なにができるのか
そんな問いかけを僕らに提示しているような気がします。