エドガー•ドガ
「踊り子の画家」とも呼ばれる画家。
それほどドガは生涯をとおしてバレリーナをモチーフにした作品を多く残しています。
生涯、独身を貫きバレリーナを描く男というのは一見、ただのバレエ好きな画家という印象を抱いてしまいますが、、
なぜ描くのか?そこには葛藤と信念の物語があります。
ドガは裕福な家に生まれ
高貴な娯楽とされていたバレエを観ることができましたが、父親が莫大な借金をかかえ、この世を去ってしまいます。
長男のドガは、家や財産を売却したりするなど、大変な苦労を抱えることになってしまいます…
さらに、ドガは30代半ばから網膜の病を患い、視力は年とともに衰え、どんどん光を失っていき、画家としては致命傷の病に苦しみました。
人生の儚さを感じたドガは、この頃から表舞台だけでなく、バレエの裏舞台も描くようになったそうです。
ドガの代表作の「エトワール」
絵の中のバレリーナが踊りだしそうな躍動感があります。ジャンプして、つま先立ちから着地した瞬間の様子。いかに多くのバレエの舞台を観に行ったか想像できます。
しかし、この絵には暗い部分があります。幕の後ろで出番を待つバレリーナに混じって、黒服の男性が描かれています。
当時のオペラ座に通う紳士たちの多くは、バレリーナのパトロンだったそうです。
幕の後ろに見える黒い人影は、踊り子を品定めするパトロンの姿です。ドガは、華やかで美しい世界だけでなく、厳しい現実の世界も描いていたのです。
当時、パリのバレエ界は、金持ちの男性が性の対象として見ている貧しい踊り子の女性が働く場所でした…
ドガが描いたバレリーナは、後世に名前を残すことのない無名の踊り子達が多かったそうです。
人と接することが不器用で、目も悪いので他の画家のように外で描くことはなく
部屋で淡々と制作に取り組んでいたドガ。
それは、名誉の為でも自分の為でもなく
舞台の光を浴びることのない、バレリーナの一瞬の輝きを描きたかったからだと思います。
頭がきれるドガのことなので、
多分、その絵を観てモデルの子の人気がでるよう描いたり
もっと先のことを見越して、こうやって後世に残されるような
長い輝きを導きたしていたのかもしれません。
最期まで、入念にデッサンを怠らなかったドガ。
大胆な構図、しかしそれを上回るデッサン力。
誰よりもバレエを愛し、誰よりも芸術に対して内なる情熱を燃やし続けた画家だと思います。