モラトリアムな日々 -19ページ目

モラトリアムな日々

隙あらば壁に張りつき、酒あらば飲んでしまう。そんな日常です。

国道沿いの町には松屋やすき屋、マクドナルドなど、チェーン店が

あり、自転車旅をしている僕にはとてもありがたい。

コンビにもいいが、これらの店なら水と休憩場所が無料で確保でき

るのだ。


植田のすき屋に入った僕が注文した物、青ネギ牛丼(?)大盛りの

セット、オクラ。セットには生卵、お新香、みそ汁が付くので結構な

ボリュームである。これを朝の9時過ぎからわしわし食べる。


やはり俺はとんでもなくカロリーを消費しているのだな・・・・。


カウンターの向かいのおっさんがこちらに熱い視線を送っている。

バンダナに速乾Tシャツ、7分丈のスポーツパンツ、肌は真っ黒。

朝から大盛り牛丼。おまけに店の前には荷物をドッサリ積んだマウ

ンテンバイク。


なんて分かりやすいんでしょう。こんな人いたら、俺でも見ちゃう。


食事を終え、地図を開く。

目的地のいわきまでは20数キロである。その数キロ手前にいわき

湯本という温泉町がある。ここで風呂に入ろうかな?

今日は疲労を考えて、どこかの宿に泊まる事は朝から決めていた。

宿に風呂があるなら湯本で入らないでも・・・・・。

まあいいや、いわきに着いたら決めよう。


店を出て自転車に乗ろうとすると、さっきこちらを見ていたおっさん

が話し掛けてきた


「どこまで行くの?」


「北海道です。今日はいわきまで」


「日立が大変だったでしょう?この先も坂はあるんだよ」


「ええ~・・・・・・・」


いろいろ話していると、おっさんはおもむろに財布から何かチケット

を取り出し、僕にくれた。それは「アクアマリンふくしま」入浴割引券

であった。


「俺も良く行くんだ。い~い所だよ」


そう言って彼は車で颯爽と去っていった。

2日ぶりに人と話せたのと、親切を受けたのが嬉しかった。アクア

マリンふくしまは沿岸部で遠いから行けないが、気持ちだけで充

分だ。


その後約2時間走り、いわきの町に到着した。

午前11時30分であった。

インド人の騒がしさに目覚め、午前四時に大洗をを出発した

二日目。まだ時間も早い為か、交通量は少ない。

昨日の疲れは・・・・・・やはり足が張っている感覚がある。
しかし筋肉痛というほどではなく、今日の約80キロ程の行程

には耐えられそうな気がした。


出発して20キロほど走ると、久慈という海産物加工工場(?)

の立ち並ぶ町へ出た。時刻は午前5時。東の空が赤く染まり

始めている。今日は小さな雲が散らばった空である。これは

いい朝焼けの空が見られるかもしれないな・・・・・。


道路沿いのコンビニで菓子パンとオレンジジュースを買って

日の出を待つ事にした。約10分後、一瞬ごとにその色を変

えていく、素晴らしい朝焼けを目にする事が出来た。



    asayake

    (後3分も経てば・・・・・・・・・)


    asayake2

    (うお~。めっちゃ綺麗)


ご機嫌で再び自転車を漕ぎ出した僕に、この旅最初ともいえ

る難所が立ちはだかった。日立である。日立といえば、そう、あ

のガス機器やなんかの日立だ。

ここの地形はいわゆる「洗濯板」ともいえる地形で、登ったかと

思えば下り、すぐさままた登りそして下りの連続なのである。

辛い登りの後には爽快な下りが待っている。そう、まさに飴と鞭。


飴と鞭飴と鞭飴と鞭飴とむちあめとムチあめと・・・・・・。


やや、登ったのにまた登りだぞ。


これじゃあ鞭鞭じゃないか。ムチムチ。


などとくだらないことを考えながら、ひたすら自転車を漕ぎ続け

た。この辺り、平らである事がないのだ。常に上りか下り。

肉体的にも精神的にもロスする部分が多かった。

日立のような大きな町の近辺を除けば、この日はほぼ田んぼ

の道を走る事になった。


日本は田んぼの国です。


と言いたくなるほど、田んぼばかりである。

その光景は、日本が世界トップクラスの先進国である事を忘れ

させた。同時に、自分の暮らす東京という街がいかに異常な街

であるかということも・・・・・・。


    ianho



午前9時、大洗から50キロほど走った植田という町の「すき屋」

で、休憩を兼ねて朝食(感覚的には昼食だが)を摂る事にした。

昨日の疲れもあり、朝は5時までグッスリ眠れた。


・・・・・・と書きたいところだが、実際そうはいかなかった。

観光地の土曜のキャンプ場がどんなものかを、僕は深く考え

ていなかった。午前1時、外の騒がしさで目を覚ます。学生達

が永遠とコールで飲んでいる。


バカ学生が~~~・・・・(怒)


世の中にはなぁ、自転車で旅してる人もいるんだよ。夜中まで

騒ぐんじゃねえ・・・・・。

まあしかし、僕の所属していた登山サークルの騒がしさはこの

比じゃなかったし、僕も散々迷惑かけた側の人間である。

多めに見てあげましょう・・・・・・。また寝る。


騒がしさで再び目をさます。今度はさっきより近い。ていうか隣

だ。ラジカセ(コンポ付きか?)で大音量で音楽を流しながら、

陽気に踊っている模様。その音楽がまた独特のもの。テントの

通風穴から覗いてみる。


い、インド人め~~~・・・・・。


闇に溶け込む褐色の肌に白い目がキラリ。男女ペアで楽しそー

に踊ってるじゃありませんか。

時計を見ると午前3時。・・・・もう少し寝ていたかったけど、もう

寝れないだろうな・・・・・。

お湯を沸かし、カップラーメンを食べる。昨日のご飯もあるので、

ラーメンライスだ。

午前3時50分には撤収を終え、荷物を積み出発の準備が出

来た。準備体操をしていると、少し遠くからインド人が何か話し

かけてくる。聞き取れなかったので


「え?」


と聞きなおすと、今度は少し大きな声で


「ウルサカッタ?ゴメンネ」


と片言の日本語で言ってきた。

一応悪いな、という気はあるんだ(笑)


「ダイジョウブダヨ」


と返しておいた。楽しくしているインド人と喧嘩する気はないし。

午前4時にキャンプ場を出発した。今日の目標は「いわき」到着

である。30キロほどは国道6号線と並行して走る国道245号を

走る事にした。

漕ぎ出した僕の背中にインド人グループの


「バイバーイ!!」


の声。どこまでも陽気な人たちだ。僕も


「バイバイ!」


と言って手を振った。

うん、なんか少し旅っぽくなってきた(笑)

自宅から100キロ走った「いこいの村涸沼」に到着する頃には

午後1時半になっていた。早速お風呂セットと出し、ロビーへ向

かう。

「いこいの村涸沼」は公共の宿、らしい。涸沼という大きな湖の

辺に立つちょっとした保養所でもあるようだ。

大きい駐車場の芝生はキチンと刈り込まれ、松の木などが植え

られている。建物も結構立派である。

汗まみれのバンダナ姿で入っていくには少し抵抗があったが、

そんな事は言っていられない。受付のお姉さんに入浴だけで可

能かと聞くと、2時半までの入浴になりますが、という断りを付け

て快諾してくれた。いい宿だ。700円払って入浴する。

大きな浴槽が二つ(確か)。窓からの眺めも良い。まだ日の明る

いうちに入る温泉ってのも・・・・


ふぁ~~・・・・・。極楽極楽。


お湯は少しとろみがあってお肌すべすべ系である。

広い温泉なのに客はおっさん一人と俺だけ。100キロこぎ

続けた足をよくマッサージしてやる。明日に疲労は残した

くない・・・・。

風呂でサッパリした後は、10キロほど先の大洗ビーチを目

指すのみである。30分程こぎ、磯の香りが漂ってきたな、と

思ったら、眼前には太平洋が現れていた。


海だ!海!!


この旅初めての海である。大洗サンビーチにはテントサイ

があるらしい。初日から完全な野宿も不安だし、テント場代

せいぜい5~600円だろう、と思いキャンプ場に行く事にした。

大洗のキャンプ場はNPOが主催とのこと。だからかどうか

分からないが、対応がとても悪い。この僕が珍しく大きな声

出すほど、不快な対応をする。


(おめーNPOか何か知らんがよ、金を取っている以上それ

りの対応せにゃならんのじゃないかい?ん?)


心の中で毒づきながら、2500円を支払う。高い・・・。しか

し今さら他を探す気力は無い・・・・。

まあ、泊めてもらえるだけましか・・・、と気を取り直してテント

を立て、荷物を入れる。自転車のキャリーも点検してみる。少

しぐらついている気もするけど、大丈夫なのかな・・・・・?


     テントサイト

  (温泉で使った手ぬぐい、タオル、バンダナを干す)

3時ごろから買出しも兼ねて、大洗を自転車でブラブラして

みた。土曜日だしまだまだ暑いので、ビーチに遊びに来る

観光客で賑わっている。

少し大きめの広場に屋台がズラリと並び、美味しそうなも

のを売っている。ここでこれをツマミにビールを1杯というの

もいいな・・・・、と思ったが、観光客向けの為か少し値段が

高い。テント場代に2500円払ってしまった身としては厳し

いな・・・・・。

結局コンビニを探し、ボンカレーと水とカップラーメン、そして

缶ビールを一本購入し、テント場から程近いビーチへ向か

った。

台風の影響もあるのか、波は少し高い気がした。防波堤に

座り、サーファー達がサーフィンを楽しんでいるのを眺めつつ

、缶ビールを開ける。


今日は長かったな・・・・・・。


でも無事に辿り着く事が出来た。


    大洗  

  (大洗ビーチ。左下の影は、防波堤に座る僕)


    なみうちぎわ

   (せっかくだから波打ち際まで行ってみた)


潮風がとても気持ちよかった。ビールを飲み終える頃には

だいぶ日が傾いていた。海に沈む夕日を見たいという気も

ったが、そんな悠著な事も言っていられない・・・・。

テント場に戻ると、ラジオでナイター中継を聞きながら食事

の準備をした。米を2合ほど炊き、カレーを温めて食べる。

米は半合ほど残しておいて、明日の朝食にもする。

腹が満たされると一日の疲れからか、急激に睡魔に襲われ

た。午後7時には寝袋に潜り込み、眠りにおちた。


順調に走り続ける僕であったが、分からない事が2つあった。


いつ休めばいいのか、そして、今日はどこに泊まるのか?


という2つである。

初日の、ハイな状態である。40キロ走っても疲労らしい疲労

は見られない。しかし、このペースで走り続けていればバテ

るのは明らかだ。結局走り出して3時間、自宅から約50キロ

にある牛久市内の「松屋」に入り、休憩を兼ねて朝食を摂る事

にした。

注文したのは、牛めし大盛り、生卵、野菜サラダ。朝7時から

これだけがっつくバンダナ姿の男を、店員はどう見たか?

「自転車漂流講座」に、とにかく腹が減るし、体が資本なのだか

ら、食費はケチらずしっかり摂った方が良い、というアドバイス

があった。早速実践している訳である。

しかしこれをペロリと平らげ、一番信じられなかったのは僕自

身であった。


ありえねェ・・・。どんだけカロリー消費してるんだよ?


食後の水を飲みつつ、地図を眺め、


・今日は、何となく区切りもいいし水戸付近の大洗ビーチまで走

 ろう。

・その手前にある「いこいの村涸沼」でお風呂に入ろう


という計画を立てた。

その後ホームセンターの開く9時半まで休憩し、小型空気入れ

と荷物を縛りつけるゴムロープを購入した後、再び走り始めた。


10時近くにもなると、日差しがだいぶ強くなってくる。

この辺(千葉茨城の境くらい?)は、大きな町がポツンポツンとあ

る他は、田んぼが大部分を占めるようになっていた。

東京からそんなに来ていないのに、ずいぶん田舎なんだな・・・。

青い空に強い日差し。一面の田んぼの道を走っていると、


俺は夏に間に合ったのだな。


とふと思った。

もう九月だし、今年は夏を味わわずに終るのかと思っていたか

ら、少し嬉しかった。

その後ひたすら走り続け、奥谷というところで右折し県道16号

に入り、「いこいの村涸沼」に到着。この旅最初の温泉に入れ

ることになった。