モラトリアムな日々 -18ページ目

モラトリアムな日々

隙あらば壁に張りつき、酒あらば飲んでしまう。そんな日常です。

定食屋を出、10号線を走り始める。

仙台へ向かう6号線より交通量が少ないから走りやすいだろう、

という目論みは見事に外れた。交通量は多いし道は狭いし悪い。

こんなことなら交通量が多くても道の広い6号線を通るんだった

・・・・・。


・・・・後悔役に立たず

(後悔しても、その後悔が活かされるチャンスは少ない。

チャンスがあったのなら、それはむしろ幸運ともいうべき

状況である。198263作)


排気ガスにまみれ悪い歩道をガッタンガッタン走っていると

、昨日までの首、肩の猛烈な凝り、腿付近の張りと筋肉痛

に加え、左足の膝が痛くなってきた。

これには凹んだ。本格的にガタがきてるな・・・・。

平坦な道はまだいいが、登りになると膝に力を入れないわ

けにも行かず、一漕ぎごとに痛みにおそわれる事になった。


これが旅の重さなのね・・・・・。


病に倒れた少女のように、僕は力なく呟くのだった。

仙台付近は道が悪い(全ての意味で)上に、ゴチャゴチャ入

組んでいて、非常に分かり辛い。これだから都会の道路は

嫌いなのだ。

仙台空港近くでは、誇りまみれのトンネルを永遠一キロ走ら

された挙句、それが間違いだった事に気づき再び戻らされる

という哀しいミスもあった。


これが旅の重さなのね・・・・・。

(2回目)



(自転車旅をする者にとってトンネルは過酷な場所である。

迫り来る大型トラックの轟音、吸い込まれるような風圧。その

威圧感は凄まじい物があった。おまけに埃が舞い、空気も悪

い。歩道があればまだマシな方で、半分のトンネルでは車道

を走らされたのである・・・・・)



涙目で呟く。俺のミスだけどよォ。シクシク。

こんな精神状態だから、阿武隈川を渡った時なんて何の感慨

も無かった。利根川ではあんなに喜んでいたのに・・・・。

2時間もガタガタの歩道を走り続けていると、仙台と緯度的に

並ぶ蒲生に着いた。


・・・・一応喜んでおくか。

体痛いなぁ・・・・・・。

まだ20キロもあるよォ・・・・・。


膝も痛いし、ちょっとした登りでもキツくなっていた。

道路は工事箇所が多く、歩道が使えるのかどうかも分からな

ところが多い。

工事っぽいが、アスファルトは綺麗にならされているし、ここは

通れるのだろうと思い入った歩道で、遂に先細りの行き止まり

にハマッた事があった。


「ありえない」


と呟き、首を振る。

その狭いところでUターンを余儀なくされる。再び100メートル

ほど戻り、交通量の多い車道を走る事に。

ホントに、心も体もグッタリするミス(?)だった。10時にもなる

と日差しが強くなり、気温もかなり高くなっていた。

しばらく行くと歩道が復活したので、そちらに戻る。

小さな段差を乗り越えた時、後輪がガタン、という音を立てた。

嫌な予感がした。



自転車を降りて見てみると、後輪は、見事にパンクしていた。




旅の重さ
\500
株式会社レントラックジャパン



「旅の重さ」と言う映画がある。

家出をした少女が四国を放浪していく中で、様々な人に出会い

数奇な体験をし、成長していく。しかしいつしか、旅の疲労や、

出会う人の悪意、天候の悪化などにより、少女は病に倒れてい

く。これを「旅の重さ」と表現したのだ。結末はここには書かない

が、とてもいい映画で、僕は大好きである。1970年頃に撮られ

たもの。主演は高橋洋子さん。

                旅の重さ
              
                 \500
          株式会社レントラックジャパン



9月5日、旅は4日目である。

野宿ポイントは夜も静かで、よく眠る事が出来た。

カップラーメンとご飯と言ういつも通りの朝食を平らげ、午前4時

には荷物を自転車に積み、出発した。いい時間を過ごさせてくれ

た松川浦に別れを告げ走り出す。

この日は松島まで進む予定であった。仙台に住んでいる友達が

、松島は綺麗なところだし、公園もあるから野宿も出来るのでは

ないか?とアドバイスをくれたのだ。


松川浦からすぐのところに県道38号線があり、この道を辿って

いけば仙台を通らず海沿いに北上できるので、仙台へ向かうトラ

ックの山を回避すべく6号線は避け38号線を走る事にした。

まだ暗いが、道幅は広く路面の状態もよく交通量も皆無なので、

快調に飛ばす事ができた。

ずっとこんな道なら最高なのに・・・。気分もよく、思わず歌を口ず

さむほど。


2時間も走り亘理町に差し掛かかったあたりから、急激に交通量

が増え始めた。そりゃ大都会「仙台」が近いんだから、仕方のな

い事か・・・・・。

路面の状態は、徐々に悪化していった。歩道を走り続けるのは

辛すぎる・・・・。しかし車道には仙台へ向かう大量のトラック・・・。

厳しいなあ・・・・・。


午前7時過ぎ、朝食を摂りたかったので、国道6号線に合流した。

松屋かすき屋がいいなぁ。しかしなかなか見つからない。

フラフラしていると、トラックの運ちゃんが利用していくような定食

屋が見つかったので入ることにした。こんな時間からやってるな

んてすごい。

店内には様々なお惣菜が並べられていて、客はプレートに自分

の好みのものを乗せ、レジでグラムを量ってお金を払う仕組みら

しい。惣菜はざっと40種類はあって、空腹の僕にはどれも美味そ

うに見えた。覚えている限り・・・


卵焼き、サラダ、ほうれん草お浸し、唐揚げ、ソーセージ、アジの

南蛮漬け、麻婆豆腐。それにご飯とみそ汁をつけて、900円であ

った。


と、取りすぎたぜ・・・・・。


朝食に900円は・・・・・・・。しかし実際食べてみると、もの凄

いボリューム。900円は妥当だと納得。もちろん全部食べま

したけどね。

ポットから熱いお茶を注ぎ、地図を開く。

やはり6号線(すぐに4号線になる)の交通量はありえない。

隣を走る10号の方がまだましだろう。福田まで10号線で

み、45号線に合流。そこから松島までは20キロくらいだ。


大体の目安がついたところで、店を出た。

まだ8時前だと言うのに、日差しがだいぶキツい。

今日も1日暑くなりそうだ・・・・・。

荷物を置いて軽身になると、早速先ほどの漁師町へ向かった。

観光客がまばらにいる。どうやってこんなところ(失礼)に来た

んだろう?あ、車か・・・・・。

何か食べさせてくれる店は3~4軒ある。どこも美味そうだ。


結局、客が5人ほど入っているこじんまりした店に入ることにし

た。暖簾をくぐって中に入る。古い木のテーブルに丸イス。

結構年季が入っている。店に貼られたメニューを見回すと、ど

うやらここの名物はホッキ貝であることが分かった。

今日は少し豪華に、刺身定食1600円、瓶ビール500円を注

文した。

ややあって、おばさんが瓶ビールと、漬物を少し持ってきてくれ

た。これで1杯やれって事なのかな?


     tik

           たまりませんなっ!!


グラスに注いだビールはよく冷えていて、とても美味そうだ。

これを一息に飲み干す。


・・・・・・・美味いっ!!!


メチャクチャ美味い!漬物を口に放り込み、ビールをまた一口。

漬物はキャベツと人参を塩で揉んだだけのシンプルな物。

その塩気が、1日汗をかいた体にはありがたい。

店先は大きく開かれている。暖簾の隙間から覗く青い海が、キ

ラキラまぶしい。気温は高いはずだが、潮風が緩く入り込んで

きて店の中はちょうど心地よい温度になっている。

うまい事出来てるんだな、と思う。


ビールを半分ほど飲んだ頃、刺身定食が登場した。


      oliumnl

              ゴージャス・・・・・・・


わ~!メッチャ美味そう!!早速名物のホッキ貝をいただく。

うん、美味い!思っていたよりも身は柔かく肉厚である。磯の香

りと貝の旨味が絶品。白身魚も身が締まっていて美味かった。

みそ汁も海草のダシかな?まさに海の恵みを活かした、素敵な

刺身定食であった。

豪華な昼食を食べ終え会計を済ませた後、店のハキハキした

綺麗なおばさん(失礼)に


「この辺でお風呂入れるところはありますか?」


と聞いてみた。

すると、ここから5分ほどの旅館に温泉があるとのこと。

この人とっても感じが良くて、もし俺に金があるなら夜も食べに

来たい、と思わせるのであった。漁師町特有の魅力なのかな?


近くの温泉は700円で入浴できた。露天もあり、お湯は白濁の

ヌルヌル系でとても気持ちがいい。地底で堆積した海草の成分

が溶け出してきている、と書いてあった。

鏡を見ると、まだ出発して3日間しか経っていないのに肌は真っ

黒で、無精ひげが伸びている。もろ旅人の風貌である。

心なしか体も引き締まり、腹筋がはっきり浮き出ている。


やっぱりカロリー消耗してんだなァ・・・。

(3度目)



風呂につかりながら、この3日間を振り返る。


最初は不安だらけだったけど、やれば出来るじゃないか。


3日続けば・・・とはよく言うし、案外北海道にも辿り着けるかもし

れない。


明日は大きな目安である仙台を通過するんだ・・・・・。



風呂を上がると、誰もいないのをいい事に、脱衣所のコンセント

で携帯電話の充電をはじめた。この図々しさは、僕が今回の旅

で獲得した貴重な物の一つである。

温泉を出てもまだ3時頃。野宿場所からすぐのところに、海を見

渡せる芝生の公園があったので、水とラジカセと文庫本を持っ

て行ってみることにした。


     jfguf

         素敵なひと時を・・・・・。


旅先で自分の好きな音楽を聴きながら本を読むことが出来るっ

て、なんて素晴らしいんだろう?心が満たされていく・・・。


今日は野宿も出来そうだし、美味しい物は食べられたし、店の

おばちゃんはいい人だし、温泉は最高だったし、今こうして木陰

で本を読んでいる。

もしこの旅が自転車旅じゃなくて、普通に電車や車を使っての

旅だったら、僕はこうした一つ一つの事に、これほどまでに大き

な喜びを感じていただろうか・・・?


そう考えると、僕はやはり自転車で旅に出て良かったなと思うの

である。そしてそれを気づかせてくれたのは、この松川浦という小

さな入り江の漁師町であった。

5時頃、町に一軒の雑貨屋でボンカレーとカップ麺を購入し、テン

トへ戻る。ナイター中継を聞きながらカレーを食べ、7時には就寝

した。台風が近づいていると言うニュースが、とても気になった。

午前3時半にアラームの音で目を覚ました。

インド人がバカ騒ぎしていた昨日とは違い、ぐっすり眠る事が

できた。今日も一日頑張れそうだ。

今日の目標は約100キロ先の「相馬」にしよう。午前4時20分

出発。まだ暗い道路を走り出す。やはり足の張りは取れない・・・。


3日目にして、早くもガタが来た。首である。

サイクリングで首?と思われるかもしれないが、1日9時間近く、

少し上を見上げる体勢を続けていると、猛烈に肩と首が凝って

くる。たまに下を向いたりストレッチをしてやらないと、まさに燃え

るような痛みに襲われる。


そして3日目からよく見かけるようになり、世話にもなったのが、

「道の駅」というもの。高速道路のドライブインのようなものである。

3~40キロおきくらいに設置され、トイレ、土産屋、軽食、道路情

報、休憩所などのサービスをしている。

「道の駅」に着くと何となく安心し、ジュースを買ってベンチで一休

みし地図を広げるなんて事が良くあった。


この日もスタートして2時間ほどで、この旅最初の道の駅「ならは」

に到着し、一休みした。


     dfdt

          早朝の道の駅「ならは」


汚い話で恐縮だが、僕はこの旅で「道の駅」を見かけると、便意を

催すという条件反射的な体に変貌を遂げた。腸が弱く、学校に行

くまでにトイレ途中下車の旅を余儀なくされていた僕が、突発的な

便意に襲われたのは、僅かに1回。これは奇跡とも言えた・・・・。


この日の道のりはあまり記憶に無い・・・・・・・。

記憶にないということは、いつも通りであったということだ。

いつも通り・・・・、田んぼがあり(ずっと海の場合もある)、空はピ

カテン。交通量もそこそこ。多少のアップダウンはあれど、基本的

に道はなだらか。そんな道を、時速16~17キロ程度で走ってい

るのが、この旅の基本であった。


ぶらぶら走り、午前11時30分には相馬付近に到着した。

今日は初めて、「完全な野宿」をするのだ。野宿する場所を探さ

ねばならない。

「自転車漂流講座」に書いてあった、田んぼの廃屋、バス停、空き

地、そんなところを物色しながら、ゆっくりと田舎道を走っていく。


空き地と言えど民家の所有物だったりする訳だよな・・・・・。

そんな所にテントを建てて文句いわれたら、嫌だな・・・・。

どこかいい場所は無いだろうか・・・・・・。


30分も走っていると、海に出た。

驚いたのが、車道から、何の仕切りも無く、いきなり海と言う事。

勢いよく突っ走ってたら、ポチャンだよ。


     gffddgdy

         いきなりこんな光景が。


地図を見てみると、ここは松川浦。大きな入り江(?)と言うのか

波は殆どない。小さなボートが停泊していて、沖では何か養殖し

ている模様。海から突き出る無数の竹。雰囲気あるなァ。

ブラブラ~っと走ってると、小さな漁港町に出た。

小さな店が建ち並び、イカやらホタテやら、海の物を網で焼い

ている。これをツマミにビールを1杯ってのもたまらないなァ。

気に入った。この付近に泊まりたい・・・・。


そこから3分も行かないところに、バイパスへ入るための立体

道路があった。その道路の下は完全に空き地である。

雨もしのげるし、ベストポジションだ。ここに決めた!!


     ge6e

          いいとこみ~っけた!


テントは建てずに荷物だけ置いてブルーシートで包み、早速

松川浦の町を見て回る事にした。

まだお昼過ぎ。偶然見つけたこの小さな漁港町に心はときめ

き、疲れも忘れていた。


     gnt

        野宿場所から海は、徒歩30秒。

いわきは中規模の町である。

駅構内には小さいながらもデパートらしき物もあり、駅前には

レストランやコンビニが立ち並ぶ。バス乗り場もたくさんあり、

学生や若い人たちが行き交う。駅前の大きな通りには、ホテル

が点在している。観光地でもあるようだ。

そんな中をこの格好で走るというのは、少し恥ずかしいものが

あった。

今日は携帯で検索した「いわき中央ビジネスホテル」に泊まる

事にした。素泊まりのみ、3900円。チェックインは午後4時。

荷物は預かってもらえると言う。駅から5分ほどのホテルに、

早速向かう。


・・・・・・・ここか?


普通の四階建ての小さなビルで、二階は美容室である。

ホテルは三階と四階と言う事か・・・・・。

三階に上がり受付の窓を覗くと、畳に座ったおばあちゃ

がウツラウツラしている。


「すみません」


と声を掛けるが、起きてくれない。

こりゃ参ったな・・・・、とんでもないところに来てしまったな

・・・・、と思っていると、奥からおじさんが出てきて


「すみません、お待ちしてました」


と言った。奥にはその奥さんと小学生くらいの娘さんも見え

る。ここに住んでいるんだな・・・・・。

しかしおじさんの対応自体はまともで、重い荷物を三階の

まで上げてもらったり、いろいろ話をして、自転車旅に理解

のある人なのだなと思った。

荷物を置いて身が軽くなったが、チェックインの4時まで時

間を潰さねばならない。一日走った汗と、排気ガスとで体

は汚れている。ここの風呂には期待できないだろうし(失礼

)、どこか温泉でも探すか・・・・・・。

駅前の観光案内などを当たるが、やはり湯本まで戻らなけ

ればならない模様である。今から往復15キロ走る気力は

無いな・・・・・。諦めよう。


暇つぶし観光をすべく、道路標識にあった「フラワーパーク」

に行く事にした。およそ4キロほどの距離らしい。お手ごろだ。

しかし走り始めてみると、これがとんでもない間違いであるこ

とに気づく。4キロは4キロでも、激しい上り坂の4キロであっ

たのだ!!

この旅で初めて自転車を押して歩くハメに・・・・・・。

グテグテになりながらフラワーパークに到着。


    87t68i 8f

          お花がいっぱい。


お花に囲まれながら冷えたジュース飲むってのも、まあ

悪いもんじゃなかったけどね・・・・・。

急すぎて楽しめない下り坂を走り、いわきの町に戻った。


イトーヨーカドーに入り、食料のカップヌードル、ボンカレー、

そして嗜好品の玄米茶、アルフォートを購入した。

レジの隣に牛乳専門の自動販売機があったので、1本

い、飲んだ。ビンがひんやりしてる。とても美味い。


・・・・・・   ?   ?   ?


何だか視線を感じる。何だろう?


・・・・・・・・・


俺って今、相当怪しい人?


あるいは欠食児童風?



恥ずかしくなってその場を離れた。

その後上の階の本屋で角田光代さんの「キッドナップ・ツアー」

を購入した。隣のベンチで読んでいると、5分ほどで眠りに落ち

てしまう。・・・・結構限界来てるな。でもチェックインまで3時間

もある・・・・。

仕方なく、いわきの町をブラブラし、本屋で立ち読みしながら時

間を潰した。何気にこの旅でワースト3の辛さだったかも・・(笑)


午後4時、ようやくホテル(と言えるか?)にチェックイン。

部屋は小さなものだったが、僕には充分だった。窓辺でお湯を

沸かし(内緒で・・・)お茶お入れ、クッキーを食べる。開けた窓

から緩やかな風が吹き込んでくる。この旅で初めてのんびりで

きたな・・・・・・。

館内にコインランドリーがあったので、汚れ物を洗い、乾燥機で

乾かした。洗い物の様子を見るため廊下を歩くたびギシギシ音

が鳴り、隣に泊まっていたおっさん(なんと僕の他にも客が・・・)

はさぞ不快であったろう。


     875

           部屋に洗濯物を干す。


しかしこの宿、ほんとにムードあるよなぁ・・・。

これで宿の女の子が食事を持って来る時しゃもじを落とせば、完

全に「リアリズムの宿」(つげ義春の漫画)の世界だよなぁ・・・・・。

素泊まりのみなのが残念だ。


6時には食事を終え、7時には風呂に入り(やはりいまいち・・・)

早々に眠りに落ちた。白いシーツのベッドが、とても心地よかっ

た。