妹がいる。韓国の金さんと結婚して 熊本シティーで ひっそりと暮らしている。

金さんは 日本が嫌いだ。金さんは ビニールハウスで野菜を育てる仕事で収入を得ている。

金さんは 日本が嫌いだ。金さんは 韓国在住の頃はホテルの支配人であった。

金さんは 日本が嫌いだ。頭脳明晰。数カ国語を理解出来、性格温厚、真実の笑顔を持ち合わせ 軍隊で鍛え上げた肉体を持つ。

金さんは 日本が嫌いだ。様々な資格と高い学歴を武器に就職活動に1年も掛けて必死にアピールを続けたが ビニールハウスで野菜を育てている。

金さんは 日本が嫌いだ。

今年限りで金さんと妹は日本を去り韓国へと帰る。巨大なホテルがオープンして役職待遇でスカウトされたそうだ。収入も命の危機を感じた今年の夏レベルを二週間で得るそうである。金額が上がって良かった云々を言うつもりは一切無い。きっと金に負けない大切なものを得ているはずだから。

金さん 妹を宜しく頼むよ。

でも韓国の人達の笑顔は何で あんなに爽やかなんだろう。また 薬局前のペ・ヨンジュンに会いたくなった。
図書館で頭痛がするほど知識を詰め込み娘と二人して施設を後にした。横殴りの雨に 為すすべもなく ずぶ濡れ親子は車内へと滑り込む。さあママを迎えにいこう。こんなに雨がひどく降るとは想像してなかったのでタオルも無い。両腕でへばり付いた水滴を払い飛ばし顔を見合わせ笑った。

降り続く強い雨の中 目的地に到着。ママが出てくるのを待っている娘…。少しばかり雨足が弱ってきたので窓を開ける。強風と共に雨が車内に降り込んでくる。
「 キャア一!風がおこってる!」
表現の素晴らしさに息を呑んだ。親バカなのである。
台風の影響で外は雨が降っている。雨音で目を覚ます事も無かったので降り出して間もないのだろう。玄関ドアの外で一服付けながら いつものように空を見上げれば 何となく懐かしい色をした空が街の朝を優しく包み込んでいるようだ。心のスクリーンに 白黒映像ながら 電車通りの街並みをバスに乗ってアルバイトに向かう俺の姿が映し出されている。今朝の雨のようにシトシトと街は優しく濡れている。
あの頃撫でつけていたポマ一ドの匂いが 吹きつける風と共に頬を横切って行った。(散歩は中止だな。)煙草を揉み消して部屋へと戻る。朝っぱらから ビールを開けるのも今から仕事に向かう嫁さんに悪いし 昨夜の夕食の残りの混ぜ御飯とうどんを食べて 嫁さんを勤務先まで送迎してあげることにした。小学校一年生の娘もそれに乗っかる。「ママが仕事終わるまで図書館に行こうよ。パパ連れて行って!」いいねえ。図書館。
角打ちには本物の出会いなど ほとんど無いが 図書館へ行けば何かしら本物との出会いが必ず有る。とりあえず 途中まで目を通した写真集から読もう。江戸時代から残っている何気ない日常の写真がその時代の説明と共にスクラップされているもので 先人たちの貴重な笑顔や風景などを見ると何故だか落ち着いた気分になるんだ。