大きな励ましではないのに、

少し元気が戻る言葉がある。


「それ、いいですね」

「なんか、楽しそうですね」

「無理しないでくださいね」


そんな、

何でもない一言。


言った本人は、

きっとそこまで深く考えていない。

特別に励まそうとしたわけでもない。

気の利いたことを言おうとしたわけでもない。


その場の流れで、

自然に出た言葉なのだと思う。

それなのに、

受け取った側の心には、

少し残ることがある。


朝から少し気持ちが重い日。

やることはあるのに、

どこか力が入らない日。


別に何か大きな問題があるわけではない。

人に相談するほどでもない。

ただ、

なんとなく気持ちの向きが定まらない。


そんな時に、

ふいに軽い一言をもらう。

「それ、いいですね」

たったそれだけで、

さっきまで少し沈んでいた気持ちが、

ほんの少し上を向く。


大げさに元気になるわけではない。

悩みが消えるわけでもない。

急に前向きな人になるわけでもない。


それでも、

少しだけ呼吸が楽になる。

自分が思っていたより、

その一言を欲しがっていたのかもしれない。


ちゃんと見てくれているとか、

深く分かってくれているとか、

そこまでの話ではない。

ほんの少し、

今の自分に触れた言葉だった。


それで十分な時がある。

言葉の力というと、

立派な言葉を思い浮かべることがある。


人生を変える言葉。

強く背中を押す言葉。

忘れられない名言。

もちろん、

そういう言葉に救われることもある。


でも、

日々の中で本当に助けになるのは、

もっと小さな言葉だったりする。

その服、似合っていますね。


それ、面白そうですね。

今日は少し顔色いいですね。

気をつけて帰ってくださいね。


何気なく交わした言葉の中に、

小さな灯りみたいなものがある。

言われた瞬間は、

さらっと受け取る。


あとから、

少しだけ効いてくる。

そういう一言がある。

こちらが元気に見えている日でも、

内側では少し疲れていることがある。


いつも通りに話していても、

本当は少し気持ちが下がっていることもある。

そんな時、

何でもない一言が、

思ったより深いところに届く。


だから、

言葉はあまり大げさでなくていいのかもしれない。

相手を変えようとしなくていい。

正解を渡そうとしなくていい。

少し感じたことを、

そのままやわらかく置く。


それだけで、

誰かの一日が少し軽くなることがある。

何でもない一言で、

少し元気が戻ることがある。


たぶん、

人は大きな言葉だけで支えられているわけではない。

ちょっとした声かけ。

何気ない反応。

通りすがりのようなやさしさ。

そういう小さなものが、

気づかないところで、

その日の自分を支えてくれている。


そしてきっと、

自分が誰かにかけた何でもない一言も、

どこかで少し役に立っていることがある。

そう思うと、

言葉を難しく考えすぎなくてもいい気がする。


今日も、

自分の中から出てくる言葉を、

少しだけやさしく置いていきたい。