
はぁぁぁぁ 間に合った
急ぎで書き直した台本をプリントアウトし、担当者へ渡す
これで文句はないだろう
コンプライアンスに厳しい昨今
企業イメージを重視するスポンサーは些細な事にも口を挟んでくるようになった
どんな理不尽な要求にだって、金をもらって働いている以上全力を尽くす
ただ…
スポンサー受けを狙った仕事をした後に残るこのモヤモヤは、塵のように積み重なり、相当メンタルをエグる
どんなに寝不足で疲れてても一睡もできないのだ
こんな時は…
早朝でも対応しているスポーツジムに顔を出し
無心でエアロバイクを漕いで漕いで漕ぎまくる
そのあとプロテインを飲みがてら休憩を挟み、ベンチプレスを使った筋トレをしてから、最後にマッサージを受けて帰るのが俺のルーティン
今日もそのルーティンを終え、シャワーを浴び帰ろうとすると、ふと聞き慣れない音を耳にする
パシパシパシパシ
ダンダンダン
ボスボスボス
担当してくれたトレーナーに何の音か尋ねると
「あ〜。あれはキックボクシングです。今まで夜しかやってなかったんですけど、出勤前にしたいという人が増えてきて今月から始めたんですよ」
『へぇ〜』
キックボクシング
ネーミングからして痛そうなトレーニングだなぁ
実際にやってみたいとは思わないけど、格闘技は昔から見るのは好きだったので興味はある
『覗いてってもいいですかね?』
「ええ、もちろん構いません。どうぞどうぞ」
窓越しに中の様子を見学すると
・・・あれ?
バシバシバシッ
ダンダンダンッ
バシッバシッバシッ
あの顔って……

トイレでヤラれそうになっていたアイツか⁈
んだよ、
そんなに鍛えてんなら、あん時 原田のエロ親父の腕力からだって簡単に逃げ出せただろうに
やっぱ、枕営業目的か?
いやいや
あのマネージャーは、そんな風に仕事取らせるような感じには見えなかったし…
に、しても
良いパンチとキックしてるな
ありゃ相当体幹が鍛えられてるぞ
モデルだけしとくのは勿体無いな
そういえば…
〝根性だけは人一倍あるんです。与えられた仕事はホントどんなことだってやります〟
必死なマネージャーの売り込みを思い出す
あの名刺どこにいったっけ?
帰ったら山積みに埋もれたデスクの中から掘り出してみるとするか
・
この判断が功を制したのは
それから半年後のことだった
つづく……
雅紀くんのこと
少しだけ認識できた、みたいね
ニノマネージャーの売り込みも成功です