シ「あら?こちらにいらしたのね、相葉さん」
『あ…シスター。。勝手に入ってしまってごめんなさい』
シ「いいのよ。こちらは誰でも自由にお祈りできるよう開放してるのよ」
「ありがとうございます。ここ、すごく落ち着きます」
シ「ふふ。今相葉さんが座ってる席ね?翔のお気に入りの席なのよ」
「ホントですか?」
シ「ええ。そういえば、、はじめてあの子がここに来た時もその席に座っていたわ」
はじめて…って
翔ちゃんがこの施設に来た時のこと、だろうか?
「あのう…シスター。翔ちゃ…櫻井さんのこと聞いてもいいですか?」
シ「私に答えられる範囲であれば」
「櫻井さんは、ここが自分の実家だと僕に教えてくれました」
シ「嬉しいわ。そう言ってくれて」
「櫻井さんはいつからここへ?」
シ「一歳になるかならないか、っていうくらいの時からかしら?朝の礼拝の時にここへ来たら、あの子がそこの席に一人で座っていたの」
「一人で?誰にも付き添われずに⁈ 」
シ「ええ。。身寄りの分かる母子手帳とか保険証とか何もない状態でね。。」
「そんな…」
シ「丁度その頃、私は病気で子宮を摘出し退院した直後でね、あーーこの先どんなに望んでも赤ちゃんを授かることはできないんだと落ち込んでいたの。。
だから、養子縁組の話を頂いた時は、この子は神が授けてくれた子なんだわ、って涙ながらに感謝したのよ」
「じゃあ…翔って名前は、シスターが名付けたんですか?」
シ「と、思うでしょう?でもなぜかあの子、名前だけは手のひらに平仮名で書いてあったの。だから漢字だけは私が考えてつけさせてもらったわ」
「羊に羽と書いて翔。素敵な名前ですよね」
シ「ありがとう」
そのあともシスターは目を細めながら
翔ちゃんは子どもの頃まったく手がかからない子だった、とか
正義感が人一倍強く、年下の面倒をよく見る子だった、とか
勉強が大好きで大学も奨学金をもらって主席で卒業した話とかを
色々聞かせてくれた
翔ちゃんは
たとえ血の繋がった両親との縁は薄くても
こんなにもたくさんの愛と優しさをシスターから注がれて育ってきたんだ
良かった✨
「シスター。またここに遊びに来ていいですか?」
シ「ええ。もちろん。いつでも大歓迎よ。気軽に遊びに来てくださいね」
「ありがとうございます」
シ「相葉さん。翔とこれからもずっと仲良くしてやってちょうだいね。あの子一見ぶっきらぼうで誤解されやすかったりするけど、根は優しい子なの」
「はい。知ってます。というか最近助けてもらうことばっかりで気づけました。感謝してもしきれないくらい感謝してます」
シ「ほんと?良かったわ」
楽しい時間はあっという間に過ぎる
子どもたちのお昼寝の寝かしつけを終えた翔ちゃんが
『そろそろ帰るぞ』
と迎えに来たので
シスターに別れを告げ
翔ちゃんと一緒に礼拝堂を後にした
つづく……
ちょっと長くなってしまった(^◇^;)