読後感想:「裏町奉行闇仕置 黒洲裁き」 倉坂鬼一郎 著
これまで「小料理のどか屋人情帖」で、温かく人情味あふれる江戸の暮らしにほっこりしていた私にとって、本作はまさに真逆の世界。
血と涙、怒りと無念が交錯する、骨太な時代活劇でした。
旗本の三男坊として気ままな日々を送っていた鎮目藤三郎。しかし、親友を辻斬りに殺され、許嫁は凌辱の果てに自害――。この凄惨な事件が、彼の運命を大きく変えます。
十字剣の達人・時蔵と共に仇討ちを果たし、「表」では裁けぬ悪を闇で裁く“裏町奉行”として生きる道を選ぶ――その決意には、読み手として胸が熱くなりました。
黒洲とは、白洲では裁けぬ悪を断罪する闇の裁きの場。悪党を「キッチリ」裁くその姿は、『必殺仕事人』を思わせる痛快さがあり、まさに読者の鬱憤を晴らしてくれます。
ときに残酷な描写もありますが、それ以上に、理不尽に命や尊厳を奪われた者たちの「無念」を晴らす清涼感があります。
隠れ忍びの二人――耳と目で情報を探る存在――も絶妙で、まるで影の情報屋。彼らの活躍は物語に緊張感と面白さを加え、読者を飽きさせません。
そして何と言っても、二刀流の使い手・時蔵の存在感。無口ながらその背に哀しみと信念を感じさせる佇まいが、作品に深みを与えています。
世に蔓延る悪に鉄槌を下す“裏の正義”――
痛快で、哀切で、それでいて読後には不思議と心が静まるような、そんな魅力のある作品でした。
