「野 菊」
加 藤 高 穂
咲き残る島の野菊の丈低し
去年最後の句会は、能古島で行われ、生まれて初めて、吟行なるものを経験した。
都合により参加できない仲間があったのは残念だが、川﨑八千雄兄がチャーターして下さった高速艇で、東中洲の船着場から那珂川を下る。河口には強風と荒波を避け、ウミネコやカモメが、あちらこちらに群れをなして浮かんでいた。子供の頃、耳にした童謡「カモメの水兵さん」の歌詞が、思わず蘇ってくる。
天気晴朗だが、冬の季節風に煽られ、海は少々荒れ気味である。湾内とは言え、青く広がる海には白波が立ち、波高は優に一㍍を超えている。艇は速度を上げ、真っ向から波に突っ込んで行くといった風だ。展望が効くよう、船室の壁や天井は、透明なグラスファイバーで覆われているため、ピッチングを繰り返し、舳先から波底に船体が落下するたび、大きな衝撃と共に、波が天井を越えていくのが見て取れる。久々に海を身近に感じた。
能古島に着くと、別の船に食事が用意されており、島名産の万葉牡蠣に舌鼓を打ちつつ、ビール片手に心楽しい語らいの時を過ごす。陶然たる心持になった処で、島の中腹にある句会々場の博物館まで上り、句作のため小一時間の猶予が与えられた。
五句選とあって、竹本是、川﨑の両兄は勿論、青木敬忠、田中良朋、田中正晴の諸兄は、味のある五句を早々に短冊に認められる。だが自分はと言えば、一向に句ができない。皆に遅れ、漸く生まれたのが、坂道で見かけた野菊の句だった。
2012.1.20.