「大地の息吹き」
加 藤 高 穂
草萌ゆる大地の息吹き野に山に
下萌えを踏みて幼の二歩三歩
青き踏む野に満目の光あり
昔といっても、そんなに遠い日のことではない。私どもが子供だった頃は、町中にあっても牛や馬、山羊や豚、さらに鶏などと触れ合う機会は少なくなかった。それだけ多くの動物たちが、私ども人間と力を合わせ、共に生きていたのである。否、彼らこそが、どれだけ大きな力となって私どもの命を育み、助けてくれたことか。それを思うと、物言わぬ動物たちの従順で純朴かつ温和な姿に、唯々、頭が下がるばかりである。
下草が萌えだし、野山に大地の息吹きを感じる時候ともなれば、動物たちも新しい生命誕生の時期を迎える。生れたばかりの仔馬が覚束ない四肢を踏んばって、一所懸命に立ち上がろうとして、若草を踏み、この世の第一歩を踏み出すのだ。
「濡れた仔馬のたてがみを、撫でりゃ両手に朝の露」と子供時代に好んで歌っていた童謡を、何故かふと思い出した。
わが子が、初めて自分の足で立ち上がった時もそうだった。周りの拍手と「上手!上手!」という声に励まされ、喜色満面、倒れては立ち上がりを繰り返していた。こうして、第一歩を踏み出すことになる。
だが皆が皆、拍手と歓声に包まれ、この世の第一歩を踏みだすわけではない。人それぞれである。ただ、尊い命を授かって生まれたお一人お一人には、私どもの思いを超えた、測り知れない大きな祝福と恵みが先立っているのだ。