「カンナの花」
加 藤 高 穂
あかときの風にさゆらぎカンナ咲く
空澄めば火のごと赤く花カンナ
秋も終りに近い日のことだった。ふと自然の空気に触れたくなり、宝満川の畔へと自転車を走らせた。気の向くままに見知らぬ道を行くと、畑に立並ぶ、赤や黄色のカンナの花に出会ったのである。
子どもの頃は、よく目にした花だったが、最近はとんと見かけなくなった。それだけに、何か旧知の友と巡り逢えたかのような懐かしさを覚え、暫し自転車を止めて、花の姿を楽しませて貰った。
原産地はインド、中国、マレー地方とあるが、現在栽培されているのは大部分が南米原産と聞く。いずれにせよ、熱帯地方に生れた花らしく、太陽を感じさせる情熱的な赤や黄色が、いかにも似つかわしい。
春山行夫氏の『花の文化史』には、ビルマ(現ミャンマー)に伝わる花カンナ誕生の話が紹介されていた。悪魔デワダットは、仏陀が有名なのを嫉妬。あるとき、仏陀が通る道の丘の上に、丸石を持ち上げ、待ち受けていた。それとは知らぬ仏陀が、そこを通りかかった瞬間だった。突然、丸石が転がり落ちてくるや、仏陀の足にぶち当たったのである。石は粉々に砕け、何千もの破片となって飛び散った。その欠片のひとつが、仏陀の足の指を傷つけ、その血が地面に流れ落ちた。と、そこからカンナの花が咲き出したという。
暗い情念によって傷つき流された血をも、祝福に満ちた美しい花へと咲き変わらせる、天来の心と魂に、生かされたいものである。