第3314回【判例】3人を自家用車でひいて1名を死亡させた
交通事故の裁判の判決のお話。
2024年6月7日金曜日の投稿です。
【転載・コピー自由です。】
今日のお話は、高齢者が車を運転し、歩道に乗り上げて
自動販売機と3人に接触し、1名死亡、2名重傷となった
交通事故の死亡事件の刑事裁判の判決の例の紹介です。
☆判決日 2023年1月27日金曜日
☆事件番号 非公表
☆事件名 自動車運転処罰法違反【過失致死傷】事件
☆裁判所名 大阪地方裁判所 堺支部
☆裁判長 蜷川省吾 裁判官
☆被 告 A【男性90才】
☆検察側 求刑 禁錮 5年
◎判 決 被告を禁錮3年に処する。
☆主な事件の経緯
2021年11月、大阪府のB市の商業施設の付近で、
被告の高齢者Aさんは、アクセルとブレーキを
間違えて、アクセルを踏み込み、自家用車が歩道に
乗り上げて、商業施設の壁と柱と自動販売機に体当たり
して停止しました。
この事故で、男性のCさんが死亡し、女性のDさんと
Eさんの2名が重傷を負い、3名とも救急車で運ばれました。
被告のAさんは、90才の高齢者でしたが、大阪府警に
逮捕されました。
☆【当裁判所の判断】
「被告は、ブレーキとアクセルを踏み間違えると言う致命的な
誤りを犯した。」
「被告が高齢で過去に交通違反をほとんどしたことがない
事情を考慮しても、3人を死傷させたと言う結果は、重大で、
過失の程度は同種の事案の中でも重い分類に属する。」
「実刑はやむを得ない。」
「禁錮3年を言い渡す。」
☆法律の検討
平成二十五年 法律 第八十六号
自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律。
第五条【過失運転致死傷】
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた
者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は、百万円以下の罰金刑
に処する。
但し、その障害が軽い時は情状によりその刑を免除することが出来る。
今回の裁判では、第五条【過失運転致死傷】の法律に基づいて
審理が行われたようです。
これに対して、よく対比される法律が、
☆第二条【危険運転致死傷】
次に掲げる行為を行い、よって人を負傷させたものは、
十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は、一年以上の
有期懲役に処する。
八 通行禁止道路【道路標識若しくは道路標示により又は、
その他法令の規定により自動車の通行が禁止されている
道路又はその部分であって、これを通行することが
人又は車の交通の危険を生じさせるものとして政令で定める
ものをいう。】を進行し、かつ、重大な交通の危険を
生じさせる速度で自動車を運転する行為。
事故が発生したのが、商業施設の駐車場に自家用車が
駐車していました。
車は公道の上を走行しておらず、私有地の中に駐車し、
運転操作を誤って、3人を事故に巻き込みました。
よって、重大な交通の危険を生じさせる速度は出て
いませんでした。
☆結語
この裁判は、公道の道路上ではなく、民有地で発生した
事故で、商業施設の駐車スペースから、商業施設内の
歩道に乗り上げ、建物の角に車両が暴走し、体当たりして
買い物客の3人が死傷しました。
死者が出たので、第二条【危険運転致死傷】の法律を用いる
のか、第五條【過失運転致死傷】の法律を用いるのか、
どうなのかと注目された裁判でした。
運転免許証を返納すると、行動範囲が狭くなり、
自家用車を運転していた頃と比較すると大変に
不便になります。
年金暮らしの低所得の高齢者が低価格で利用
出来るタクシーなどの社会の交通システムなど、
国民レベルで考えてみる必要があると僕は思って
います。
90才と言う年齢になると判断力や、身体の能力が
著しく低下するそうです。
早めに、車両の運転については控えた方がよさそうです。
【次回に続く。】【転載・コピー自由です。】