砂岡事務所プロデュース、『東海道四谷怪談』のあらすじと感想です。
沢山の間違いとネタバレ、激しい私見をお許し下さい。
台詞と順序は不正確です。
ご容赦下さい。
前回の続きです。
(赤穂浪士の討ち入りの頃の物語です。
舞台は、洋装と和装の2バージョンで演じられました)
・場面は、夕暮れの河原です。
そこでは、みすぼらしい姿になった、お弓(白瀬裕大さん)と、乳母のお槙(土倉有貴さん)が、野宿をしていました。
お弓の実家の伊藤家は、婿の伊右衛門(平野 良さん)が、喜兵衛(なだぎ武さん)と、お梅(今川碧海さん)を殺した責任により、取り潰されたのです。
その上、最後まで、お弓の傍を離れなかった、お槙が大勢のねずみに、川に引きずり込まれて亡くなりました。
お弓は、絶望のあまり、ダンボールの小屋に入り、死んだように横たわります。
そのとき、同じ河原では、鰻(うなぎ)掻きに転職した直助(桑野晃輔さん)が、川底から櫛を見つけました。
(←直助は、和装では、職人らしいはっぴ姿です。
洋装では、ダメージジーンズと黒いタンクトップの上に、Gジャンを着ています。
お袖(白瀬裕大さん、二役)と所帯を持ってから、地道に暮らしている様子が伺えます)
直助「何だ?
毛が引っかかったな。
薄汚い。
…こいつは、鼈甲(べっこう)だ!
どれ、洗ってみよう!」
直助は、嬉しそうに、川の浅瀬で櫛を洗います。
彼は、美しい櫛が、川に流された、お岩(田渕法明さん)の遺体から、落ちたものだとは知りません。
こうして、お岩の願い通り、母の形見の櫛は、妹のお袖に渡ることになりました。
同じ頃、舞台の二階の橋の上では、失踪した伊右衛門が、釣りをしています。
すると、彼の母のお熊(土倉有貴さん、二役)が、『俗名 民谷伊右衛門』と書かれた卒塔婆を持って現れました。
(←お熊は、腰が曲がり、灰色の髪をした年配の女性です。
原作では、彼女は、小平(北村健人さん)の父の後妻になっています。
そして原作では、お熊は、血の繋がらない孫を苛めていましたが、息子の伊右衛門のことは、愛玩しているようです。
しかし、父に捨てられ、母が再婚した伊右衛門には、帰る場所はありません)
再会したお熊は、伊右衛門の無事を喜び、卒塔婆を渡して説明します。
これを河原に立てるのは、殺人犯の息子は、もう死んでいると、世間に思わせるためだと。
さらに、お熊は、高野(吉良)家からの、お墨付き(紹介状)を差し出します。
これがあれば、良い士官の口が見つかり、浪人の苦労から抜け出せると。
そして、お熊は、よろよろと去って行きました。
そのとき、二人のやり取りを聞いていた、直助が、伊右衛門に声をかけました。
直助「もし、伊右衛門様。
お久しうござります」
伊右衛門「そういうお前は、直助か?」
直助「伊右衛門様。
今は、お前は、俺にとっては、義姉の仇というところさ」
しかし、小悪党の直助は、お袖の姉の、お岩を死なせた伊右衛門に、悪びれずに接します。
直助「(俺が仇を討つ)
…と言うところだが、言わねーの」
そして直助は、伊右衛門が、お墨付きによって出世したあかつきには、分け前をくれるように頼みます。
こうして、二人の利害は一致しました。
そのとき、伊右衛門の釣糸に魚がかかります。
すると、その拍子に、卒塔婆が河原に落ちました。
それを見つけたお弓は、仇である伊右衛門が、亡くなったと誤解して、驚愕します。
そして彼女は、真偽を確かめるために、急いで橋の上に駆け上がりました。
お弓「あなた様!
お聞き申したいことがござります!!」
伊右衛門は、慌てて顔を背けます。
そして直助は、『伊右衛門は、病死したのか?』と尋ねるお弓を、騙すことになりました。
直助「…何だ、確かに死んだ。
死んだ、死んだ!」
すると、お弓は、あまりの無念さに泣き崩れます。
出来ることなら自分が、親と娘の仇を討ちたかったと。
(←お弓は、家族を愛し、忠実なお槙に深く感謝していました。
しかし、彼女の優しい気持ちが、自分たちが陥れた、お岩に向かうことは、ありませんでした)
そのとき伊右衛門は、衝動的にお弓を、橋から蹴り落として殺害します。
(←私見ですが、今回の舞台では、伊右衛門が、自分の意思で殺した被害者は、子供を愛する親ばかりだと思いました。
(←四谷左門(植本純米さん)と、小仏小平(北村健人さん)と、お弓です)
自分の母に会った直後に、娘の死を悲しむ、お弓を理由もなく殺害したことに、伊右衛門の傷を感じました)
やがて、目の前で行われた殺人に、唖然としていた直助は、呟きます。
直助「…なるほど。
お前は、強悪(ごうあく)だなぁ」
伊右衛門「(うなぎのように)
首が飛んでも、動いて見せるワ!」
伊右衛門は、憎悪に燃える目で言い捨てました。
その後、悪い仲間の秋山(水貴智哉さん)が現れ、伊右衛門の犯行を、奉行所に訴えると脅します。
すると、お岩と離縁してまで、出世を望んだはずの伊右衛門は、秋山への口止めのために、あっさりとお墨付きを差し出しました。
やがて、絶望的に空虚な伊右衛門の立つ橋の下を、戸板に打ちつけられた、お岩と小平の遺体が流れて行きました。
その後、刀を抜いた伊右衛門と、鰻掻きの竿を握る直助と、赤穂浪士の回文状を持った与茂七(白又 敦さん)が、並んで『だんまり』を演じます。
(←歌舞伎の見得を切るような動作です。
三人は無言で、スローモーションで動いています。
そして与茂七は、直助と仮の夫婦になった、お袖の許嫁でした)
すると暗闇の中で、与茂七の回文状は、直助の手に渡り、直助の竿は、与茂七に渡りました。
やがて三人は、ばらばらに別れて行きます。
その後、与茂七は、回文状を取り戻すため、お袖が居るとは知らずに、直助の家を探し、訪ねて行くことになりました。
・場面は、直助とお袖が暮らす、三角屋敷に変わります。
そこでお袖は、お寺の門前で線香や仏花を売ったり、洗濯の内職をしたりして、つつましく生活していました。
(←部屋の上段には、お袖の父の左門と、与茂七のモノクロ写真の遺影が並んでいます。
しかし、お袖は、二人の死を悼みながらも、直助との生活に、幸せを見い出しているようです)
そんなとき、古着屋の庄七(今川碧海さん、二役)が、お袖に洗濯を頼みに来ます。
その着物は、お岩の遺体を火葬する前に、安い値段で古着屋へ、横流しされたものでした。
お袖は、見覚えのある着物を手にして、不審な表情になっています。
しかし彼女は、不吉な考えを振り切るように、着物をたらいの水に浸けました。
(←さらに舞台の左側には、先に火葬された小平の着ていた服が、洗濯されて干してあります)
そのとき、直助が帰宅しました。
直助「何だ?
このたらいの中にも、洗濯物があるな。
たいそうに稼ぐな。
それに引きかえ、俺は今日は、(うなぎ漁に)あぶれてしまった」
直助は、働き者のお袖を、愛おしそうに見つめます。
そして、お袖は、今日は父と与茂七の百ヶ日だったため、直助が、生き物の殺生をせずに良かった、と思いました。
(←直助は、お袖の愛を得るために、彼女の許嫁の与茂七を、闇討ちにします。
しかし、直助が殺したのは別人でした。
そして、何も知らないお袖は、与茂七と父の仇を討ってもらうために、直助と仮の夫婦になりました。
そんな二人の生活は、今日で九十九日を迎えます)
まだ、身体を重ねてはいませんが、仲の良い二人は、米屋の支払いについて相談します。
そのとき直助は、川で拾った櫛のことを思い出しました。
直助「おっと、あるぞ!
この櫛は、(質屋で)いくらくらい貸すであろう?」
直助は、得意そうな笑顔で、鼈甲(べっこう)の櫛を見せました。
その瞬間、お袖は驚きます。
お袖「もし、この櫛は、どこで拾はしやんした?!」
直助は、櫛は、橋の下で鰻掻きに引っ掛かったのだ、と説明します。
お袖は、姉が大切にしていた、母の形見の櫛が、川に落ちていたと聞いて、不安になりました。
その後、直助は、お袖が、いつまでも身体を許してくれないことに拗ねて、子供のように床で手足をバタバタします。
しかしお袖は、困った顔で、仇討ちの約束を果たしてくれるまでは、本当の夫婦にはならない、と断りました。
すると直助は、お袖の脚にしがみついて甘えます。
直助「女房どの!
わたくしめは、はなはだ空腹。
どうか夕飯を、お願い申します!」
お袖は、直助の愛嬌のある言動と、自分を尊重してくれる優しさに、お姉さんのような笑顔になりました。
そしてお袖は、決して櫛を質入れしないように頼むと、台所に去って行きます。
すると直助は、懐から櫛を取り出して、ニヤリと笑いました。
直助「へへへ。
姉の櫛だろうが、お袋の足袋だろうが。
俺の手に渡っては、そのままにしておくものか!」
直助は、こっそりと、櫛を売り飛ばすつもりです。
(←しかし直助は、遊ぶ金欲しさではなく、生活費を工面しようとしているようです)
そのとき、舞台の右側に置かれた、台車に積まれた大量のダンボール箱が、地震のようにガタガタと揺れました。
そして、ダンボール箱の後ろから、血まみれの細い腕が伸びて、直助の胸元を掴みます。
さらに、ねずみが櫛をくわえて、お岩の着物の入った、たらいの中に飛び込みました。
直助は、恐怖に悲鳴を上げますが、食事を運んで来た、お袖は不思議そうです。
(←舞台上には、ねずみは登場しません。
そして、直助のパニックは、伊右衛門のお弓殺しを見たことで、自分の殺人に対する罪悪感が、刺激されたようにも見えました)
その後、お袖は、直助に頼まれて、たらいの中を調べますが、何も変わりはありません。
そして直助は、仏壇の前に置かれていた櫛を、お袖の髪に差しました。
直助「この櫛は、俺は嫌だ!
お前が差して、明日、姉御に届けるがいい!」
お袖「もし、そのような所に差しては…」
お袖は、直助が頭のてっぺんに差した櫛を、あきれたように直します。
(←やましいことの無い、お袖には、呪い(幻覚?)は感じられません)
しかし、その後、あんまとして呼ばれた宅悦は、お袖に、お岩の無惨な最期を話してしまいます。
さらに、その頃、与茂七も、回文状を取り戻すため、直助の行方を追っていました…。
まだ続きます。
長いのに読んで下さって、貴重なお時間を下さって、本当にありがとうございます。