「東海道四谷怪談」の感想です(5) 川に落ちた櫛。 | 1904katuoさんのブログ

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砂岡事務所プロデュース、『東海道四谷怪談』のあらすじと感想です。

沢山の間違いとネタバレ、激しい私見をお許し下さい。

台詞と順序は不正確です。

ご容赦下さい。

前回の続きです。



(赤穂浪士の討ち入りの頃の物語です。

舞台は、洋装と和装の2バージョンで演じられました)


・場面は、夕暮れの河原です。


そこでは、みすぼらしい姿になった、お弓(白瀬裕大さん)と、乳母のお槙(土倉有貴さん)が、野宿をしていました。

お弓の実家の伊藤家は、婿の伊右衛門(平野 良さん)が、喜兵衛(なだぎ武さん)と、お梅(今川碧海さん)を殺した責任により、取り潰されたのです。


その上、最後まで、お弓の傍を離れなかった、お槙が大勢のねずみに、川に引きずり込まれて亡くなりました。


お弓は、絶望のあまり、ダンボールの小屋に入り、死んだように横たわります。


そのとき、同じ河原では、鰻(うなぎ)掻きに転職した直助(桑野晃輔さん)が、川底から櫛を見つけました。


(←直助は、和装では、職人らしいはっぴ姿です。

洋装では、ダメージジーンズと黒いタンクトップの上に、Gジャンを着ています。

お袖(白瀬裕大さん、二役)と所帯を持ってから、地道に暮らしている様子が伺えます)


直助「何だ?

毛が引っかかったな。

薄汚い。

…こいつは、鼈甲(べっこう)だ!

どれ、洗ってみよう!」


直助は、嬉しそうに、川の浅瀬で櫛を洗います。


彼は、美しい櫛が、川に流された、お岩(田渕法明さん)の遺体から、落ちたものだとは知りません。

こうして、お岩の願い通り、母の形見の櫛は、妹のお袖に渡ることになりました。


同じ頃、舞台の二階の橋の上では、失踪した伊右衛門が、釣りをしています。

すると、彼の母のお熊(土倉有貴さん、二役)が、『俗名 民谷伊右衛門』と書かれた卒塔婆を持って現れました。


(←お熊は、腰が曲がり、灰色の髪をした年配の女性です。

原作では、彼女は、小平(北村健人さん)の父の後妻になっています。


そして原作では、お熊は、血の繋がらない孫を苛めていましたが、息子の伊右衛門のことは、愛玩しているようです。

しかし、父に捨てられ、母が再婚した伊右衛門には、帰る場所はありません)


再会したお熊は、伊右衛門の無事を喜び、卒塔婆を渡して説明します。

これを河原に立てるのは、殺人犯の息子は、もう死んでいると、世間に思わせるためだと。


さらに、お熊は、高野(吉良)家からの、お墨付き(紹介状)を差し出します。

これがあれば、良い士官の口が見つかり、浪人の苦労から抜け出せると。


そして、お熊は、よろよろと去って行きました。


そのとき、二人のやり取りを聞いていた、直助が、伊右衛門に声をかけました。


直助「もし、伊右衛門様。

お久しうござります」

伊右衛門「そういうお前は、直助か?」

直助「伊右衛門様。

今は、お前は、俺にとっては、義姉の仇というところさ」


しかし、小悪党の直助は、お袖の姉の、お岩を死なせた伊右衛門に、悪びれずに接します。


直助「(俺が仇を討つ)

…と言うところだが、言わねーの」


そして直助は、伊右衛門が、お墨付きによって出世したあかつきには、分け前をくれるように頼みます。

こうして、二人の利害は一致しました。


そのとき、伊右衛門の釣糸に魚がかかります。

すると、その拍子に、卒塔婆が河原に落ちました。


それを見つけたお弓は、仇である伊右衛門が、亡くなったと誤解して、驚愕します。

そして彼女は、真偽を確かめるために、急いで橋の上に駆け上がりました。


お弓「あなた様!

お聞き申したいことがござります!!」


伊右衛門は、慌てて顔を背けます。

そして直助は、『伊右衛門は、病死したのか?』と尋ねるお弓を、騙すことになりました。


直助「…何だ、確かに死んだ。

死んだ、死んだ!」


すると、お弓は、あまりの無念さに泣き崩れます。

出来ることなら自分が、親と娘の仇を討ちたかったと。


(←お弓は、家族を愛し、忠実なお槙に深く感謝していました。

しかし、彼女の優しい気持ちが、自分たちが陥れた、お岩に向かうことは、ありませんでした)


そのとき伊右衛門は、衝動的にお弓を、橋から蹴り落として殺害します。

(←私見ですが、今回の舞台では、伊右衛門が、自分の意思で殺した被害者は、子供を愛する親ばかりだと思いました。

(←四谷左門(植本純米さん)と、小仏小平(北村健人さん)と、お弓です)


自分の母に会った直後に、娘の死を悲しむ、お弓を理由もなく殺害したことに、伊右衛門の傷を感じました)


やがて、目の前で行われた殺人に、唖然としていた直助は、呟きます。


直助「…なるほど。

お前は、強悪(ごうあく)だなぁ」

伊右衛門「(うなぎのように)

首が飛んでも、動いて見せるワ!」


伊右衛門は、憎悪に燃える目で言い捨てました。


その後、悪い仲間の秋山(水貴智哉さん)が現れ、伊右衛門の犯行を、奉行所に訴えると脅します。

すると、お岩と離縁してまで、出世を望んだはずの伊右衛門は、秋山への口止めのために、あっさりとお墨付きを差し出しました。


やがて、絶望的に空虚な伊右衛門の立つ橋の下を、戸板に打ちつけられた、お岩と小平の遺体が流れて行きました。


その後、刀を抜いた伊右衛門と、鰻掻きの竿を握る直助と、赤穂浪士の回文状を持った与茂七(白又 敦さん)が、並んで『だんまり』を演じます。

(←歌舞伎の見得を切るような動作です。


三人は無言で、スローモーションで動いています。

そして与茂七は、直助と仮の夫婦になった、お袖の許嫁でした)


すると暗闇の中で、与茂七の回文状は、直助の手に渡り、直助の竿は、与茂七に渡りました。

やがて三人は、ばらばらに別れて行きます。


その後、与茂七は、回文状を取り戻すため、お袖が居るとは知らずに、直助の家を探し、訪ねて行くことになりました。


・場面は、直助とお袖が暮らす、三角屋敷に変わります。


そこでお袖は、お寺の門前で線香や仏花を売ったり、洗濯の内職をしたりして、つつましく生活していました。


(←部屋の上段には、お袖の父の左門と、与茂七のモノクロ写真の遺影が並んでいます。

しかし、お袖は、二人の死を悼みながらも、直助との生活に、幸せを見い出しているようです)


そんなとき、古着屋の庄七(今川碧海さん、二役)が、お袖に洗濯を頼みに来ます。

その着物は、お岩の遺体を火葬する前に、安い値段で古着屋へ、横流しされたものでした。


お袖は、見覚えのある着物を手にして、不審な表情になっています。

しかし彼女は、不吉な考えを振り切るように、着物をたらいの水に浸けました。

(←さらに舞台の左側には、先に火葬された小平の着ていた服が、洗濯されて干してあります)


そのとき、直助が帰宅しました。


直助「何だ?

このたらいの中にも、洗濯物があるな。

たいそうに稼ぐな。

それに引きかえ、俺は今日は、(うなぎ漁に)あぶれてしまった」


直助は、働き者のお袖を、愛おしそうに見つめます。

そして、お袖は、今日は父と与茂七の百ヶ日だったため、直助が、生き物の殺生をせずに良かった、と思いました。


(←直助は、お袖の愛を得るために、彼女の許嫁の与茂七を、闇討ちにします。

しかし、直助が殺したのは別人でした。


そして、何も知らないお袖は、与茂七と父の仇を討ってもらうために、直助と仮の夫婦になりました。

そんな二人の生活は、今日で九十九日を迎えます)


まだ、身体を重ねてはいませんが、仲の良い二人は、米屋の支払いについて相談します。

そのとき直助は、川で拾った櫛のことを思い出しました。


直助「おっと、あるぞ!

この櫛は、(質屋で)いくらくらい貸すであろう?」


直助は、得意そうな笑顔で、鼈甲(べっこう)の櫛を見せました。

その瞬間、お袖は驚きます。


お袖「もし、この櫛は、どこで拾はしやんした?!」


直助は、櫛は、橋の下で鰻掻きに引っ掛かったのだ、と説明します。

お袖は、姉が大切にしていた、母の形見の櫛が、川に落ちていたと聞いて、不安になりました。


その後、直助は、お袖が、いつまでも身体を許してくれないことに拗ねて、子供のように床で手足をバタバタします。

しかしお袖は、困った顔で、仇討ちの約束を果たしてくれるまでは、本当の夫婦にはならない、と断りました。


すると直助は、お袖の脚にしがみついて甘えます。


直助「女房どの!

わたくしめは、はなはだ空腹。

どうか夕飯を、お願い申します!」


お袖は、直助の愛嬌のある言動と、自分を尊重してくれる優しさに、お姉さんのような笑顔になりました。

そしてお袖は、決して櫛を質入れしないように頼むと、台所に去って行きます。


すると直助は、懐から櫛を取り出して、ニヤリと笑いました。


直助「へへへ。

姉の櫛だろうが、お袋の足袋だろうが。

俺の手に渡っては、そのままにしておくものか!」


直助は、こっそりと、櫛を売り飛ばすつもりです。

(←しかし直助は、遊ぶ金欲しさではなく、生活費を工面しようとしているようです)


そのとき、舞台の右側に置かれた、台車に積まれた大量のダンボール箱が、地震のようにガタガタと揺れました。

そして、ダンボール箱の後ろから、血まみれの細い腕が伸びて、直助の胸元を掴みます。

さらに、ねずみが櫛をくわえて、お岩の着物の入った、たらいの中に飛び込みました。


直助は、恐怖に悲鳴を上げますが、食事を運んで来た、お袖は不思議そうです。

(←舞台上には、ねずみは登場しません。

そして、直助のパニックは、伊右衛門のお弓殺しを見たことで、自分の殺人に対する罪悪感が、刺激されたようにも見えました)


その後、お袖は、直助に頼まれて、たらいの中を調べますが、何も変わりはありません。

そして直助は、仏壇の前に置かれていた櫛を、お袖の髪に差しました。


直助「この櫛は、俺は嫌だ!

お前が差して、明日、姉御に届けるがいい!」

お袖「もし、そのような所に差しては…」


お袖は、直助が頭のてっぺんに差した櫛を、あきれたように直します。

(←やましいことの無い、お袖には、呪い(幻覚?)は感じられません)


しかし、その後、あんまとして呼ばれた宅悦は、お袖に、お岩の無惨な最期を話してしまいます。

さらに、その頃、与茂七も、回文状を取り戻すため、直助の行方を追っていました…。



まだ続きます。

長いのに読んで下さって、貴重なお時間を下さって、本当にありがとうございます。