気仙沼大島だけで栽培されている野菜に「大島カブ」があります。
( 大島カブ(2014.12.20)写真提供:小野寺佑紀 )
独特の食味や色味から「サトウカブ」、「ニンジンカブ」とも呼ばれています。一般的な蕪(アブラナ科アブラナ属ラパ)とは違いアブラナ科アブラナ属ルタバガというセイヨウアブラナの変種です。蕪と同様に肥大した根を食べるのですが、枝根が多くあまり形は良くありません。
原産地はスウェーデンとされ、欧州では広く栽培されている野菜です。日本では明治初年に東北や北海道に食用・飼料用として導入されましたが、明治以前から在来種としてあったのでは?という話もあります。
( 収穫間近の大島カブ(2023.11.23) )
( 軒先で干される大島カブ(2016.12.23)写真提供:小野寺佑紀 )
気仙沼大島では6月から7月に自家採種した種を播き、霜が降る12~1月頃に収穫します。気仙沼大島では一般的な蕪を「ダイコンカブ」「ツケモノカブ」と呼び、「カブ」は大島カブを指します。現地では大島カブを細かく刻みもち米、ササギ(大角豆)を一緒に炊き込んで、おこわのような郷土料理「カブブカシ」(蕪蒸かし)として食べます。やさしい甘さが口いっぱいに広がり気持ちがほっとする料理です。今では収穫した大島カブを寒風に晒した後、細かく刻み砂糖をまぶして冷凍保存し、通年で食べられるようにしている家庭が多いそうです。「カブブカシ」は直売所や道の駅で販売されることもあるそうです。
( カブフカシ )
元々は「ガシドシ」(飢饉年)の救荒作物(カテモノ)として栽培されていました。明治以降のサツマイモやジャガイモなどの普及により、その栽培は減りましたが、郷土料理の材料として大切に伝承されている「大島カブ」。現地で一度味わってみてはいかがでしょう。
参考資料:東北民俗の会刊「東北民俗」第57輯小野寺佑紀「宮城県北部の在来種のルタバガ‐大島カブを事例として‐」
(執筆:斗田浜 仁)