「ばかになる」「ばかがついた」というと失礼な!と言われそうですが、この「ばか」は宮城県の方言で、しかも2つの意味を持つという珍しい方言です。
一つ目の意味は「ものもらい」のこと。
目に雑菌が入って充血し瞼がはれ上がった様子を「ばかになった」と言います。江戸時代の仙臺方言集「濱荻」(1813)には「ものもらいひ。目のふち赤くはるゝ也。のめ共いふ。のひる目共いふとぞ。」とあります。また、土井八枝著「仙臺方言集」(1919)には「目の縁の出来物」、同著「仙臺の方言」(1938)には「目蓋にできる小さな腫物。麦粒腫。ものもらひ。」と掲載されています。最近は「ものもらい」自体が減ってしまい、この言葉を使うことが少なくなったような気がします。
もう一つは衣類やペットの毛にくっつく「ひっつきむし」のことで、オナモミ、センダングサ、ヌスビトハギ、ヤブジラミといった植物の種子を指します。
【ヤブジラミ】
宮城県以外でも使われている地方があるそうですが、山形県では「ドロボー」「ヌスット」、秋田県では「ノサバリッコ」福島では「ガンコジ」と言うそうです。上記の方言集に出てこないので比較的新しい方言なのかもしれません。
この二つの「ばか」は「いらないもの。つまらないもの」と言う意味をベースに方言として使われるようになったと考えられています。
ちなみにひっつきむしの「ばか」では「オオオナモミ」、「アメリカセンダングサ」などの外来種が増え続け、在来種のオナモミに至っては環境省の絶滅危惧種Ⅱ類に指定されています。決して「いらないもの」ではない状況のようです。
【オオオナモミ?】
【アメリカセンダングサ】
参考文献:河北選書「とうほく方言の泉」
(執筆:斗田浜 仁)