「ミュージアム・シティしおがま」を歩く ―下― 《by マッツアン》 | いっきゅう会がゆく~宮城マスター検定1級合格者のブログ~

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  難関ご当地検定として知られる宮城マスター検定1級の合格者で作る「いっきゅう会」のメンバーが、宮城の魅力をお伝えします!

 マッツアンです。トリビアで紹介した塩竈市の美術館、博物館めぐりの最終回です。

 御釜神社脇の道路を登ると左手の階段の奥に公民館のような建物が見えます。「塩竈市杉村淳美術館」(有料)です。

 

【塩竈市杉村淳美術館】

【再現されたアトリエ】

1950年(昭和25)に建設された塩竈市公民館本町分室で、その一部を改装して2014年(平成26)に美術館を開設しました。杉村淳(1907~2001)は仙台を中心に活躍した洋画家ですが、1946年(昭和21)~1964年(昭和39)頃に塩竈に住んでいました。杉村は地域の風景や鮮魚、マリオネット、ランプ等を題材にした油彩画を数多く残しています。「静物学者」と呼ばれるほど静物画が得意だった画家です。常設展示されている作品はそれほど多くはないのですが、塩釜港に係留されている漁船の様子や水揚げされたウミタナゴ、タラなどを描いた作品は塩竈だからこそ描けた作品です。地元漁師の方が鮮魚の絵を見て「これはあそこで獲れた魚だろう」とまで言及したとの話が伝わっています。館内には杉村のアトリエが再現されており、今にも作家が扉の向こうから出てきそうです。

ここは建物も鑑賞しましょう。公民館自体が塩竈市の有形文化財に指定されていて、特に曲線が美しい集成材を使った大講堂の柱部分は温かみがあって懐かしさが漂う空間を生み出しています。

【大講堂】

使用していない時は見学も可能です。入り口近くには談話室があり、おいしいコーヒーを味わうことができます。

ここから再び御釜神社に戻り、壱番館4階にある「タイムシップ塩竈」を目指します。その途中に日本酒に興味にある方は浦霞酒ギャラリーにちょっと寄ってみてはいかがでしょうか。

【向拝】

コイン式の利き酒コーナーや酒器が展示されています。もちろんお酒を買うこともできます。酒蔵の入口にある木造りの豪華な庇のようなものは「向拝」と言って明治時代に廃寺となった「法連寺」の遺構です。多賀城市のお寺が譲り受けていましたが、縁あって塩竈に戻ってきました。これ以外にも壱番館の近くにはチョコレート屋、生どら焼きが有名な和菓子屋、名菓「しほがま」の老舗菓子店、全国的にも有名なすし店など寄ってみたい魅力的なお店がいっぱいあります。

【壱番館】

【壱番館展望台からの風景】

壱番館は塩竈市役所の色々な部署が入っている建物です。その4階に塩竈の歴史を紹介する「タイムシップ塩竈」(無料)があります。縄文時代から現代までの塩竈の歴史を展示しています。気になったのは仙台藩が建造した軍艦「開成丸」の模型。幕末の1857年(安政4)に幕末の奇才・三浦乾也が設計し寒風沢島で建造された洋式帆船です。江戸を数回往復したことは記録されていますが、その最後がどうなったのか不明とされる船です。壱番館では屋上にも行きましょう。屋上には展望台があり、塩竈市全体を見渡すことができます。

壱番館から仙石線の下を通り抜けて「塩竈市津波防災センター」を目指します。途中、東日本大震災モニュメント、10mの津波を乗り越えた巡視船「おしか」の錨を眺めながら、「シオーモの小径」を進みます。

 

【巡視船おしかの錨】

【宮沢賢治の碑】

シオーモの小径は明治以降に塩竈を訪れた正岡子規、田山花袋、斎藤茂吉、与謝野晶子、宮沢賢治などの文学者たちの作品を刻んだ石碑を見ながら歩ける遊歩道です。シオーモは宮沢賢治の童話「ポラーノの広場」で塩竈をイメージした架空のまちの名前です。賢治は1912年(明治4516歳の時、修学旅行で石巻、塩竈、仙台を訪れています。この小径は塩竈に関わる文学の野外ミュージアムといったところでしょうか。

マリンゲート塩釜を抜け「塩竈市津波防災センター」(無料)を訪れます。

【塩竈市津波防災センター】

【巡視船まつしま】

ここでは東日本大震災が起きてからの一週間に焦点をあててどのように変化していったのかを記録展示している施設です。館内では津波が押し寄せる様子や次第にがれきが撤去されていく様子等のパネルが展示されているほか、巡視船「まつしま」が大津波を乗り越える緊迫した様子の映像が流れていています。

 これだけのミュージアムがある塩竈市。一日では歩ききれない街です。日を改めて訪問するか、一泊することをお薦めします。さあ、「ミュージアム・シティ」塩竈を堪能しましょう!