8月末から9月初頭にかけて到来した台風10号について、政府や保守メディアが煽っている。勿論(もちろん)台風被害への備えや防災対策は必要だが、さすがに針小棒大な口ぶりだ。


 政府、保守メディアは「今回の台風は極めて甚大な被害を与える」「伊勢湾台風や西日本大豪雨に匹敵する災害になる」とマスコミ媒体で積極的に宣伝し、危機感を煽り続けた。

防災服に身を包む岸田総理大臣

 岸田首相と林芳正官房長官は防災服に身を包み、緊急感を演出、政権寄りの日テレ、NHKなどの保守メディアも口を揃えて「史上最大級」「観測史上最高」「厳重な警戒」という文言を乱用した。
台風最新情報などの見出しで危機感を煽った日テレ


 新幹線は台風の進行などを考慮してか史上初の長期計画運休を実施し、高知県などでは台風による防風被害から坂本龍馬ら三志像が撤去された。

坂本龍馬像などが台風に備え撤去されている

 これだけの騒動になったのだからさぞかし大規模な被害になるかと身構えた人も多かったかも知れないが、蓋を開ければ勿論、東海道や九州の被害は深刻だったが、政府やマスメディアが主張していた「伊勢湾台風」や「西日本大豪雨」程の被害にはならなかった。

 いやそもそも台風10号は進行が遅いだけで政府が主張するような防風による災害や多数の死傷者を出す可能性は専門家の中からも懐疑的な声があがっていた。

 3000名以上の犠牲者を出した「伊勢湾台風」に匹敵する規模という主張についても、まず時代背景の違いを考えれば現在の防災体制が整っている日本でたとえそれだけの規模の台風が来たとしても3000名もの犠牲者はまず出ない。

 事実2019年に日本国に上陸した台風19号に関しても政府とマスコミは「狩野川台風(史上6番目の規模で1000人以上犠牲者を出した台風)に匹敵する規模」と誇大宣伝し、有名人なども総動員し、危機感を煽った。
危機感を煽る著名人

 しかし、政府やマスメディア、著名人が言うほど深刻な被害にはならなかった。今回の台風も同様だと私は感じる。ではなぜこれ程までに危機感が煽られているのか?それは様々な見識があるが、危機感や緊急感を煽れば、誰が得をする?それは自民党政権だ!危機感を煽れば、国民が危険を感じる事で緊急事態を演出し、自民党が望む緊急事態条項を国民の要望という通す事が出来る!緊急事態条項は内閣の法案に対する国民や議会の拘束を受けず素早い政治が出来る。その為、自民党などは緊急事態条項で災害などに迅速(迅速)に対応出来ると主張しているが本心は違う。

 実際に自民党が狙っているのは、同条項により、議会を無力化し、憲法を改正する事だ。本来憲法改正には議会の3分の2以上の同意と国民投票が必要だが、緊急事態条項で緊急権を発動すれば議会投票だけで改正が出来る。

 安倍政権による憲法9条の改正と戦争法案は市民や野党の共闘により阻止され、多くの国民も憲法9条改正に懐疑的な見方を示しており、正攻法での改正は難しくなった、そこでまず緊急事態条項導入をという訳だ。

 既に議会は自民党とCIA、大企業勢力による不正選挙で改憲派が多数を占めており、緊急事態条項を発令し、議会採決さえすれば平和憲法は即座に無くなり平和国家の我が日本国はすぐに戦争出来る国となる。

 また緊急事態条項の脅威はそれだけではない。憲法改正がしやすくなったという事は憲法の民主主義的な条文も簡単に変える事が出来るという事である。
独裁者達は緊急権で独裁権利を手にした

 ドイツの独裁者ヒトラーが民主的なワイマール憲法下で独裁体制を確立できた要因の1つが緊急権の乱用であった。ヒトラーに限らずムッソリーニ、フランコ将軍、蒋介石、ドゴールといったファシズム的、軍国主義的な独裁者の多くが国家緊急権や非常事態戒厳令などで民主制から独裁制に移行している。

 緊急事態条項が如何に危険でリスクがあるのかを理解しなければならない。
 更に岸田首相は国民がパリ五輪に注目する中で緊急事態条項の改正に向けた働きかけをこっそり行っている。岸田は緊急事態条項に反対する自民党総裁候補を排除している。

 事実自民党総裁の主要な候補達は全員緊急事態条項の導入に前向きな発言や考えを示しているのだ。
自民党総裁選主要候補

 政府やマスコミの扇動は別として、台風や地震などの災害対策は必要である。防災や災害対策に日頃から備えておく必要はあるし、政府はそれに責任を持たなければならないのは確かだ。

 しかしそれと緊急事態条項は全く別である。防災への対応をしたいのであればれいわ新選組の山本太郎代表が主張しているように防災省を設置し、政府レベルでの防災力強化につとめる事こそ被害の拡大を防ぐ手段なのではなかろうか?