先日介護施設のアルバイトに行ったら、菖蒲を見に外出レクを行うと言われた。
日曜日で、さらにお祭りが開かれて混んでいるかもしれないが、翌日か翌々日には梅雨入りすると予報が出ていて、菖蒲の花もちょうど見頃なので連れて行ってあげたい。と思ったのだそうだ。
利用者さんを車に乗せて連れて行った。私は助手席に座った。
公園の入り口そばに車を停めて、利用者さん達を降ろした。提灯が飾られ、中から賑やかな音楽が聞こえてきて、人も沢山いた。
利用者さんはそれぞれの歩行器を押して中に入った。
菖蒲の花を見れるベンチのそばを通ると、ベンチに座っていた人が横にズレたり席を立ったりして開けてくれた。
本当は歩行器に椅子が付いているから大丈夫だったのだが、折角なので利用者さんにベンチに座ってもらった。
すると、ある利用者さんの隣に座っていた女性が話しかけてきた。
「お花が綺麗ですねー。」
「…。」
利用者さん、話しかけられると思ってなかったのか、単に聞こえなかったのかはわからないが、代わりに私が、
「そうですねー。」
と、利用者さんを挟みながら答えた。
その女性は調子を崩さず、
「暑くもなく寒くもなく丁度良いですねー。私ひとつ前の〇〇駅から歩いて来たんですけど、疲れましたねー。帰りは(最寄りの)✕✕駅から帰ります(笑)。〇〇駅前の公園でも催し物をやってましたよ。」
と話されるが、まだ利用者さん反応せず。でも、
「Aさん(利用者さんの名前)!〇〇駅前の公園って知ってますよね!?今日そこでもお祭りやってるんですって!」
と私が言うと、
「知ってるよ!へぇーお祭りやってるんだねー。」
と返事があった。
元々Aさんはお花とお祭りが好きで、歌とお喋りも好きなおっとりとした方である。
ここ最近居眠りが多くなり、服薬や食事を忘れたりして、そろそろ独り暮らしはキツイんじゃないかと言う話が出ていた。
隣の女性が変わらず自然に話してくれるので、Aさんもかつての調子が戻ってきて、
「(お花が)ホントに綺麗だねー。」
と笑顔で話されていた。
しばらくすると、違う利用者さん達が合流され、菖蒲の花をバックに集合写真を撮ることになった。
利用者さん達の移動の手伝いをしていたら、ある利用者さん(Bさん)が歩行器に座った状態で、ある女の人の手を握って親しそうに話していた。近づいてみると、
「ご主人と二人で来たのねー。素敵ねー。」
「奥さん(Bさん)も元気そうでよかったー。」
と聞こえ、私が、
「お二人はお知り合いなんですか?」
と聞いたら、その女性が、
「いえ。初めてお会いしました。」
と返事され、その後も、
「奥さんのお洋服素敵ねー。」
「あら、あなたのお洋服の方が素敵よー。」
と褒め合い、その女性は、
「奥さん、若い頃とっても綺麗だったんでしょうね、奥さんの若い頃に会いたかったわー。」
と話されていた。そして、
「元気で過ごしてくださいね。」
と言って去っていった。
綺麗だったと過去形は少し気になったが、それを引いても余りある良い関わりだなと思った。
公園を一回りして、早く帰りたそうな利用者さん数名を先に車に乗せた。
その際車イスも車のトランクに乗せようとしたら、ある職員が、
「車イスは残したほうが良いんじゃない!?」
と言って、残った利用者さんの内の歩行器1台と交換した。歩行器には椅子があるが、椅子に座ったままの移動はしていないのだ。車イスなら座ったまま職員が押して移動出来る。
私はさらに水筒も乗せようとした。私的には、水分補給は終わったし、荷物になるからと思ったのだが、同じ職員から、
「水分持ってっちゃって大丈夫!?みんな飲んだ?」
と聞かれ、
「飲みましたよ。…でも、やっぱまだ持ってたほうが良いですよね…。」
と返事したら、千円札を渡され、それでいざとなったら飲み物を買ってほしいと言われた。
(その職員さんはドライバーとして車に戻った。)
私がぼんやりし過ぎなのかもしれないが、適切な準備と判断、お金などの用意の良さがスゴイなと思った。実は今回の外出レクを考えたのもその職員さんである。
残った利用者さんともう一度菖蒲の花を見て回った。一人車イスでの移動になったおかげで、誰か疲れて歩けなくなっても、移動できるようになった。職員の不安が減ったし、たぶん利用者さん達も気が楽になったと思う。
車が戻ってきて、残りの利用者さんも車に乗って施設に戻った。
危うく預かった千円札を返しそびれそうになったが、なんとか思い出してその職員さんに渡すと、
「忘れてたから、何だか得した気分になるね!」
と笑顔でおどけていた。
