有給をとって、両親を連れて上野の森美術館で開かれている『五大浮世絵師展』に行ってきた。


父が歴史や美術が好きなので、定年退職してから家にこもってばかりで、政治やお金の愚痴を言っている父の気晴らしになるんじゃないかと考えたのだ。


電車で出かけ、上野駅に着き、いざ展示会場に行こう!となったところで父が、

「ちょっと木陰で休もうか。」

と言ってきた。

「電車で酔ったかもしれない。」

とのことだった。母も私も心配したが、

「お父さんはここで休んでるから二人で行っておいで。」

と言われ、父を残して2人で展示会場に向かった。

母は、

「お父さん昨日の夜もパソコンやっててあんまり寝てないからね。」

と言っていて、

(引きこもりの昼夜逆転生活にこの暑さはこたえたんだろうな😓)

と思った。


平日でも、会場の上野の森美術館の入り口には当日券を買うための列が出来ており、私たちは15分程並んで券を買って入場した。


中に入ってすぐにナレーションが聞けるQRコードがあり、ダウンロードし、ワイヤありイヤホンをスマホに挿した。


まだ1、2点しか絵を見ていなかったが、父から着信があった。でも電話に出ても声が聞こえない。電話が切れ、こちらから折り返して繋がってもやっぱり声が聞こえない。何度か繰り返し、試しにスピーカーにしたら声が聞こえた。

「もしもし、聞こえる?お父さん元気になったからそっちに行こうと思うんだけど、場所どこ?」

と声が響いた。音がうるさいと思ったので、

「迎えに行くね!」

と早々に電話を切った。母に事情を伝え、

私はスタッフさんに再入場出来るか聞いた。

「再入場は出来ないのですが、理由によります。理由は何ですか?」

と聞かれ、父を迎えに行きたい旨を伝え、再入場の券を貰った。


会場を出たら、すぐに父の姿を見つけた。

「もう大丈夫なの?」

と聞いたら、

「(座ってたところの)前の建物の守衛さんに、

『ちょっと休めるところありませんか?』

って聞いたら休ませてもらって元気になった。」

と言った。

(内弁慶なのに意外と行動力がある。ってか、相当参ってたな😱)

と思った。本人も、

「昨日夜中までパソコンやってたからあんまり寝てなかったんだよね。」

と自覚していた。


再び当日券の列に並んだ。

並んでいる間私は父のスマホを点検した。

(何でちゃんと通話できなかったんだろう?)

と思ったからだ。すると、

「(電話の時)こっちの声が聞こえてないんじゃないかと思ったんだよね。お父さんのスマホおかしい…というか、お父さんが未熟だから…」

と言った。普段の父はスマホが使えず、

「このスマホはおかしい!!」

とすぐキレるので、今日はすごく素直だなとびっくりした。

そして今回の通話のバタバタは、イヤホンを挿したま電話した私のせいである。ということがこの時点になってやっと気がついた😣💨。

(そういえば"着信"は表示が出ただけで、鳴ってなかった😅)

父にはそのことを伝えた。


そうこうしてやっと中に入れた。

中は混んでいた。壁に沿って展示が続いており(2階もある)、1枚の絵につきナレーションが1、2分続くせいか、なかなか人が動かず次の絵に移れなかった。


とはいえ父は、

「髪の毛とかこんな細い線、どうやって版画にしたんだろうね〜。ホントに版画かな〜?」

と興味を示していた。

(私達はスマホに疲れていたので、ナレーションを聴くのを諦めていた。)


父の顔がだんだん絵に近づいていき、

「白い線の中に入らないでください。」

とスタッフさんに注意された。

(床にこれ以上近づいてはいけないという線が引かれていた。)

「怒られちゃった。」

と言っていた。


しばらくすると母が戻ってきて、3人で鑑賞した。

母は、

「ちんたらして全然進まないのよね!」

と混み合っているのも憚らず大きな声で言ったので(母はガラケーである。)、

「シー!みんなおんなじ気持ちだよ、デカい声で言わないでよ!」

と返した。


あと母は、喜多川歌麿、葛飾北斎、歌川広重がみなある時期に美人画を描いているのだが、

「美人画はみんな同じねー。」

と言ったり、葛飾北斎は90歳まで生き、父は、

「江戸時代で90まで生きるなんてスゴイな〜。」

と言った一方で、

「タッチが違うからお弟子さんが名前を借りて描いたんだね。」

と決めつけていた。


歌川広重の『東海道五十三次』を見ていると私が、

「どこからどこまで?」

と聞くと、父が

「日本橋から京都の三条大橋までだったかな?たぶん。」

と言っていた。

しかし歴史に詳しい父でも読めない地名があったのだが、母が英語で書かれた題名を見れば読み方が分かると教えてくれた。母は、

「ローマ字だから読めるね。」

と言って読んで回り始めた。

「〇〇ブリッジ」、「四日市三重リバー」

と、なんか得意げだった。


母はいつの間にか解説員のように絵のそばに立っていて、完全に線を越えていたのだが、背が小さくて人に隠れて見えなかったのか、スタッフさんに一度も注意されなかった。

一度注意された父は、

「あっまた怒られちゃう。」

と小声で言って、ずっと線を気にしていた。


葛飾北斎と歌川広重の浮世絵には、きれいな青やオレンジのグラデーションが使われていて、青は空や海、オレンジは夕空や雲の色に使われていた。


母が歌川広重の『弓張月』という絵を見て、

「この月は海に映った月だね!」

と言った。谷が描かれていて、谷間だけ青く塗られ、そこに三日月が描かれている。

私は谷を見上げた形で描いているから、空に浮かぶ月だと思ったが、

(海に浮かぶ月というのもいいな)

と思った。


かれこれ3時間ぐらい見て、電車の帰宅ラッシュ前を目指し、他は寄り道せずに帰った。

なんだかんだ楽しかったかな😄