※⑰から篠田をサドと表します。



お読みいただきありがとうございます。引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです。




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「優子に友達ぃぃぃ!?」







晴れ渡る青空。
朝の教室に響き渡るトウヨウ達の声。周りの生徒はその声に驚き、ガンを飛ばす。



「す、すいません…」



周りの生徒は何事もなかったようにいつもの教室へと戻った。



5人はかたまって小声で話始める。


「そう、あの優子がだ。さっき何人かの生徒が見たそうだ。」


ムチャブリが手帳を開きながら話す。


「で、誰なんだよ?その友達は?」


「それが・・・1年の篠田だ。」


「えーー!!」


5人が再び叫ぶ。周りの生徒たちもまたガンを飛ばした。


「す、すいません・・・」


「篠田ってあのシルバーローズのか?」

グリが尋ねた。

「ああ、でも抜けたって噂だ。」


「それで優子とつるんでんのか・・・」



「優子にゃあ舎弟みてえな奴らしかいなかったが、あの1年の間で恐れられている篠田が下につくとは思えない。こうなりゃ友達とみていいだろう。」


「良かったじゃねえか・・・」



グリは窓から広がる青空を見た。


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『今日からおめえは・・・サドだ』



昨日の優子が言った言葉を思い返しながら”サド”は学園の門をくぐった。
そこにはいつものマジ女の風景。しかしいつも見えてる景色よりなぜかサドには明るく見えた。
校庭を歩いていると、後ろから声がかかる。
先ほどまで思い返していたのと同じ声だ。


「サド~待てよ~、一緒にいこーぜえ。」


優子は駆けてきた。いつもの独特の恰好。顔は昨日の傷が目立っていた。
しかし優子はそんなことは全く気にしていないようだ。


「あんまり大声でその名前を言うな。本当にサドだと思われるだろ。」


言った通り周りが少しざわついているのが分かった。


「だってホントじゃねえかよ。」


二人並んで歩く。
そこには拳を合わせた者同士にしか見えない、つながりができていた。

あの後優子が何度も”サド”と呼ぶので、サドも止めるのをやめた。
キリがなかったのもあるが、どこか気に入っていたのかもしれない。




二人は校舎へと入った。
異変を感じる。いたるところでヤンキー達がざわめきあっていた。
互いに耳打ちし合ったり、固まって話している。
共通するのが聞かされた者たちの表情が驚きへと変わること。



「どうしたんだ?なんかおかしいな…?」



キョロキョロと辺りを見回す優子。



「…ラッパッパに関することに違いない。今日は見回りの日じゃないはず…」


「おめぇ、詳しいんだな。」



冷静に分析するサドを優子は見上げた。サドは優子を見る。


「大島が知らなさすぎるだけだ。テッペン目指すんだ…情報は大きな武器になる。今のラッパッパには勢いだけでは立ち向かえない…」




「ふーん、よくわかんねぇや。てかサド!その大島っていうのやめい!なんか変な感じがするんだよ!優子って呼べ!」



「じゃあサドはやめろ…」


「嫌だ…サドはサドだ。前のお前とはもう違うんだよ。」



「フッ、勝手にしろ、“優子”。」


そう言い篠田は歩き始める。しかしその表情は明るかった。以前の篠田を知っていたものが今のサドを見れば恐らく驚くであろう。それほど優子は篠田の心を変えた。


優子はニッコリ八重歯を出した。



「可愛いとこあんじゃねーかっ!」


サドの背中を勢いよく叩く。
2人は一年生の廊下に出た。
その時優子のしたについていた派手なヤンキーが駆け寄ってくる。息が荒れている。
一瞬横にいた篠田をみて息を飲んだが、すぐに優子に向き直った。


「どうした?そんな慌てて…?」


呼吸を整える。



「それが…大変なんです。学校中が大騒ぎです。」


「そう言えばいつもと違ったな。」


「実は…今日“部長”が来るそうです。」



優子はサドを見た。



「あーあんまり顔ださねぇやつだろ?」


「やはりな…薄々感づいてはいたが…まさか本当だとはな。」



優子の顔はすでにやる気に満ちていた。


「よし!やっときやがったな!ぶっ飛ばしてここのテッペンになる。」


鼻息をあらげる。その目は本気だった。サドがため息をついた。



「やめておけ…今は行っても勝てる相手じゃない。」

「何でわかんだよ?」

「部長とする前に四天王の誰かにやられるのがオチだ。あいつらの強さは半端じゃない…」

「じゃあどーすんだよ?!」

「別に永遠に勝てないと言ってない。私は強くなる…さらにだ。決着は卒業式。それまでよーく相手を知るんだな。」


「相手のこと知るって…なんか卑怯じゃね?私はそんなのは嫌だぜ?」


優子はしかめ面になる。

「相手のことを調べるのも強さの内だ。ま、分かったところで勝率が0からほんの少し上がるだけだがなぁ。」


「サドがそこまで言うってことは相当な強さだな。全然聞いたことなかった…」


「フンッ、無知があそこまで勇敢だとは。知ってたら誰もセリナの野郎に吹っ掛けたりはしない。それより…相手を知ることも大事だがさらに重要なことがある。」


「なんだよ?」


「・・・ラッパッパを乗っとるためには強力な仲間が必要だ…」


「仲間…?」


優子はポカンとした表情でサドを眺める。
サドは再びため息をついた。


「まさか、二人だけで挑もうとか考えていたのか?」


「え?ま、まあ・・・はは・・・でも私は何人こよーがぶっ潰す!」


サドは優子がそんなことを考えていたことは承知していたし、相手は普通のヤンキー達じゃないと言いたかったがそれも面倒なので、サドは自らの教室へそそくさと歩いていってしまった。



「ちょ、おい!行っちまった…サドの野郎、ちゃんと考えてんだなあ。」


サドの背中を見て、優子はつぶやいた。


「な!ババ抜きだ!負けたら飯おごれよ!はは!」


優子は笑いながら舎弟の者へ言った。そして優子も自らの教室に向かう。




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青龍会本部_



「ローズがやられました…」



薄暗い部屋で言葉を発したのはニシ。部屋の中央には大きな長机がおかれている。席には青龍会組織の幹部達が座っていた。そして一番奥に座るのはバードである。
行われているのは青龍会の緊急会議。


「そうですか、で…一体誰にですか?」


バードが口を開く。


「それが同じチームであった篠田です。篠田はその後、大島に付いたと思われます。」


「また大島さんですか…話題が尽きませんね…」


バードが少し微笑む。
そしてスノーがバードの元へ近づいていった。耳元に顔を近づける。


「バードさん、そろそろ本題に。ラッパッパがもうすぐ動き出すとの情報です。」


「分かった、下がっていい…」


バードが立ち上がる。四仁神、そして幹部達も無意識に力が入る。部屋が緊張感に包まれた。
そしてバードは部屋を見渡し、口を開き始めた。


「約半年…約半年ぶりにラッパッパ部長が来る…我が青龍会はこの半年で大きく飛躍した。皆に感謝する。部長に情報は回っていることは確実だろう。だがその実態まで定かではないはずだ。現在、青龍会は下部組織の者も含めれば勢力はラッパッパと同等と見た。そこで3ヶ月後のX day …我々青龍会はラッパッパとの戦争を行う!…」


興奮気味に話すバード。
部屋にいた者達が大きくざわめく。
ニシが立ち上がった。



「本当ですか!?」


「はい、そのことを本日ラッパッパに伝える。何があっても行うと…」



「確かに今の勢力なら動いていいでしょう。」


スノーが口を開いた。


「アイツは使うのー?」


マナツが突然尋ねた。口にはいつも通り飴が加えられている。


「…まだ分かりませんね。あの人に関しては慎重に検討しなければ…少々危険ですから…」


「ふーん…まぁいいや、いいおもちゃ見つけちゃったし…♪」


皆再びバードに注目する。
マナツ最後の言葉を聞いたものは居なかった。


「この3ヶ月は準備期間だと考えればいいでしょう…そしてこのマジ女に青龍会の歴史を作る!」


バードの声が部屋中に響き渡った。


「早速、ラッパッパを出迎えにいきましょう。」


スノーが言った。そして会議は終わり、青龍会は四仁神を先頭に多くの者が動き始めた。



スノーがバードに耳打ちをする。


「バードさん、情報操作の件は未だ原因不明です。ラッパッパが絡んでいることは間違いなでしょう。」



「ええ…まぁ、なんとかなるでしょう。」


バードは不敵な笑みを浮かべた。そして大きく歩き始めた。




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―教室―



「優子さん、今日調子悪いっすね。」


ラッパッパ部長が登場するという事で学園中が騒がしくなっているなが、優子は舎弟達とトランプをしていた。

毎度のこと、勝負事には強い優子であったが今日だけは中々勝てずにいた。優子に苛々がたまる。これが最後と言われたが、また最後の2人に残ってしまった。



「くそー何で勝てねぇんだよ!…まさかおめぇらイカサマこいてねぇだろうな?」

優子は睨み付ける。


「し、してないす。最後引いてください!」


「よーし…おりゃあ!」


残った二枚を慎重に見極めた末、選びとった一枚。


「………。。。」


優子の目に写ったのはジョーカーだった。

「だああ!また負けた!くそッ、貸せ!」

そう言い残りのトランプを取り上げる。


「修業だ!あーなんか嫌な予感がするぜ。この私がこんな負けるとわ…」


優子はトランプを箱に入れ、そして制服のポケットにしまった。
トランプの一番上にはジョーカーが不気味に光っていた…



その時、教室に慌ただしく生徒が入ってきた。



「優子さん!ラッパッパです!」




学園中が大きくざわめき始めた。




1枚の木の葉が落ちた瞬間、
優子は駆け出した。

「ウラアッッ!!」


優子は右足を上げ、篠田の腹部をめがけ飛んだ。


その速さは申し分ない。



ドンッ!

鈍い音が神社に響き渡る。篠田はニヤリと口を上げた。


「くっ…」



優子の前蹴りは篠田には届いていなかった。直前でブロックが入っている。

優子の反撃を待たぬまま、篠田は優子の足を掴み、投げる。
転がる。しかしすぐに立ち上がった。篠田も後追いはしない。
優子は制服についた砂ぼこりを払った。
あまりダメージはなさそうだ。



「ふぅ~あれガードするか~。やっぱつえーよ、おめぇ。」


優子は余裕の笑みを見せる。


「本気出せよ…大島」



優子の目を見た。


「ちぇっ、やっぱバレてたか。じゃ、お言葉に甘えて…」


優子は髪をかきあげる。その瞬間先ほどまでの目付きと変わり、鋭くそして殺気に満ちている。



『なるほど…これが大島優子…面白い…』


篠田も構える。隙はない。
そしてゆっくり、互いに円を描くように歩く。
瞬間、優子が動き出した。それに合わせ篠田も動く。

優子は顔面めがけ拳を繰り出す。普通の人から見れば相当の速さであったが、身長差ゆえ少しスピードが落ちた。篠田は見逃さない。


片手で優子の拳をギリギリで止める。大きな破裂音。
篠田は優子の腹部めがけ蹴りを出す。


優子はすぐさま掴まれていた手をほどき両腕でガードに回った。

ドンッっっ!!


その蹴りは優子の予想遥かに超え重かった。
両腕でガードしたにも関わらず数メートルよろめいた。
短く息を漏らす優子。



「痛って~…まだ痺れてやがる。」


腕を振る。
そう言い再び構えた。
優子自身調子は悪くなかった。むしろ強い者を目の前にして、いつにも増して動きがよかった。

優子はそういうタイプの人間だった。
篠田は相当強い。優子は篠田のたった二回の攻撃でそれを悟った。


追撃。
何も言わず篠田が勢いよく詰め寄った。
再び腹部めがけ蹴りを繰り出した。優子は再びガードに回る。


「同じ手はくわねーよ!」



次の瞬間、優子に届く寸前で蹴りを止めた。
コンマ何秒で篠田は優子のガードを見切った。
素早く逆の足で蹴りを出す。



「なっっ…!」



優子もガードが間に合わない。
蹴りがヒットする。
吹き飛ぶ優子。しかし踏ん張った。砂ぼこりが舞う。
優子は肩をおさえる。


『こいつ・・・あの一瞬で態勢を低くして、致命傷を避けた・・・?』

「あっぶね~。」

「どうやら命拾いしたようだな。」



篠田が口を開く。



「あれ喰らったらあばら2,3本どころじゃないからな。それに・・・おめえ、さっきから私の腹しか狙ってねえな・・・?」




「フッ・・・気づくのが早いな。ボディでジワジワと痛ぶるのが好きなだけさ。」



篠田が微笑む。



「おめえ・・・そんなキレーな顔して、むごいんだな。」


「何が悪い?」


「別に。でも・・・その余裕すぐに無くしてやんだよ!!」

優子が駆ける。

拳を出す。しかし弾かれる。反対の手でもう一度反撃。

篠田は頭を下げた。優子の攻撃をうまくいなしていく。優子が遅いわけじゃない。篠田のその圧倒的な格闘センスが優子に襲い掛かる。




「喧嘩じゃ負けねえッ!」


優子が叫ぶ。

態勢を低くした篠田の腹部に膝を入れる。


「かはっ・・・」



ようやく一発が入る。しかし篠田がすぐに動いた。優子の腕をつかんだ。背負い投げ。篠田と優子の体格差からすればそれは容易だった。

背中を強打する。しかし目は篠田をしっかりと見ていた。

篠田が倒れている優子の腹部に蹴りを出した。




『くそ、立ってちゃ間に合んねえ・・・』




篠田の蹴りは惜しくも届かない。優子は転がりながら避けた。しかしさらなる蹴りの追撃が来る。次々に蹴りを転がり避けていく優子を見て、篠田は楽しんでいる。優子の制服は砂だらけだ。

篠田の蹴りの応酬が少し止まった。刹那、優子の体はブレイクダンスのように回転する。そして足を掛けた。篠田が倒れる。優子はすかさず首を絞めた。




「うらあ、油断禁物!」




「くっ・・・」



暴れる篠田を優子はしっかりと押さえていた。

篠田の首が徐々に絞まっていく。

しかし篠田の右腕が動いた。



「アアッ!!」



優子の脇腹に肘が入った。絞めていた腕が一瞬緩む。

その隙に篠田が腕をほどいた。そして体を転がし立ち上がった。優子も脇腹を押さえながらも、立ち上がる。

しかし篠田はすぐそこまで迫っていた。優子の”顔”目掛け拳を出した。




「そんな大振りじゃあたんねーよっ!」



優子が躱す。篠田の拳が宙を舞う。しかし拳を止めない。



『?』



そのまま突き出した拳の勢いを利用し、篠田が前宙した。

そして踵落とし。”あびせ蹴り”

全体重がかかっている。

篠田の体格からは想像できない攻撃だ。




優子の首にのしかかる。



「ウラアッ!」




視界が揺れる。地面に叩きつけられる優子。大きな音がした。

互いに倒れ胸で呼吸している。

しかし優子が先に立った。首を押さえる。

篠田も後に続き立つ。静かに呼吸を整える。



「はあ・・・なんて攻撃だ。今のは腕間に合わなかったら死んでたな。はは。はあ・・・」




優子はギリギリ腕一本のガードが間に合った。



「はあ・・・よく防いだな・・・」



「まあよ。それに腹だけ攻撃する余裕も無くなったんじゃね?」



「遊びは終わりさ・・・」



「楽しくなってきやがった。」



優子が笑う。前に降りてきた髪をかきあげる。

そして互いに声を上げ走り出した。



同時に拳を出した。リーチからすれば篠田優勢だったが、優子の拳が先に届く。

篠田の口が切れた。目が光る。次の瞬間、篠田の右足の上段蹴りが飛んできた。しかし優子のガード。重かったが優子は踏ん張った。しかし篠田は足を下ろさず、中段蹴りへと攻撃をすぐさま移す。流れるような攻撃。

だがこれも優子に防がれる。見切られていた。一瞬止まった篠田だが、地面に手を付き右足を後ろへしゃがみながら回転する。篠田のかかとが優子の足に飛んでくる。

しかし篠田の足払いは空を切った。顔を上げるとそこには飛んでいる優子の姿。



「オラアッ!」



飛んだ状態からの優子の蹴りが篠田の側頭に撃たれる。

倒れた。篠田の息が荒くなる。



「はあ、もらった!」



優子が篠田にのしかかる。マウントポジションを取った。



「覚悟しろよ~」



優子の連打が始まった。篠田も顔の前でガードを張るが徐々に開き始めた。

完全にガードが解かれ、次々と優子の拳が入る。篠田はやられている中でも見た。優子の笑っている表情を。



『こいつ・・・ッ』



篠田は優子の背中に膝を入れた。今ある力を振り絞り。

優子のマウントが外れる。篠田はすぐさま立ち上がり片手で優子の胸倉を掴む。

そして自らの目の前まで優子の顔を上げる。優子は足がついていなかった。

もう一方の手で優子の顔に拳を放つ。優子はもがくがどうしようもできない。

互いに満身創痍だった。篠田の拳が止まった。そして優子を投げる。




「ハア・・・ハア・・・」



篠田は限界が近づいてきていた。

先程の優子の連打がかなり効いていた。膝が折れそうだ。立っているだけで精一杯である。

優子はゆっくり手を付き立ち上がった。前髪をかきあげる。




「ハア・・・ハア・・・たのしー。はは。」




優子も胸で大きく何度も息をする。優子自身も体力がほとんど残っていない事は分かっていた。

そして再び口を開く。




「ハア・・・初めてだ、私とここまで喧嘩できる奴はよお。やっぱ・・・ハア・・・おめえつえーよ・・・

あ~もう防御すんのめんどくせえや・・・こっからは純粋な殴り合いだ・・・先にぶっ倒れたほうが負けだ・・・ハア・・・」




「望むところだ・・・小細工は・・・ナシだ・・・ハア・・・」




「ハァ…やっぱり・・・おめえもヤンキーだな・・・」




「うるさい・・・」



互いに呼吸を整える。大きく息を吸った。

刹那、鋭く互いを睨んだ。


互いに終わりを感じ始めていた。


二人は走り出した。



叫ぶ。





同時に拳を繰り出した。先程とは違って、リーチの差から篠田の拳が先に届いた。優子の顔が揺れる。
篠田も攻撃をやめなかった。更なる追撃。優子もとっさに反撃に出た。篠田の速い拳をかいくぐる。
篠田の顔が揺れた。口の中に鉄の味が広がる。篠田は視界がぼんやりとしてきた。優子の攻撃は続く。腹部に膝が入る。体が上に上がった瞬間、背中に肘打ちがはいる。



「ガハッッ……」




「ははは!あーたのしー!はぁ…」




優子は笑う。篠田も優子の限界を感じていた。それでも優子は笑い続けた。



篠田は何とか拳を出す。しかし優子にはあたらなかった。ここへきて少しの実力差があらわになってきた。

篠田は何度も拳を繰り出す。しかし当たらない。当たったとしてもかする程度だった。



優子には時間がゆっくり流れているように思えた。篠田の拳もまた。優子が強い者と拳を合わせると、ごくたまにに起きる現象。有り余る集中力。そして楽しさが楽しさを超えた証拠である。極地に至った優子はもう止めることはできなかった。




篠田は意識が朦朧とするなか、最後の力を振り絞り、優子へと向かった。しかし今の体力ではどうすることもできなかった。優子が篠田を弾き返す。そして篠田の顔面目掛け思い切り拳を出す。


その時、薄れる視界の中篠田は優子の拳が見えた。

「アアッッ!!」



『…かわせる…』



しかし体は考えについてきてくれなかった。篠田の頭は少ししか動かなかった。完全にかわすことはできなかった。優子の拳が篠田の瞼をかすめる。優子の鋭く尖った拳が篠田の瞼を切った。血が滲み出る。




篠田には反撃する力がなかった。最後に優子の右が篠田の顎を揺らす。
篠田は大きく倒れた。
優子は笑う。更に追撃しようと、倒れている篠田の胸ぐらをつかもうとした。しかしやっと冷静になり始めた優子はその手を離しす。その表情から篠田がもう攻撃できないことを悟った。
篠田は諦めきれず体を起こそうとした。しかし体が言うことをきかない。
体が再び地面についた。
篠田の中の気持ちの糸が完全にきれた。




「ハァ…敗けだ…」


篠田が呟く。




優子は髪をかきあげる。
そして口を開いた。




「ハァ…おめぇSだろ…?こんな喧嘩のしかたするやつ…初めてだよ…」



優子が篠田に近づく。



篠田の顔に手をつきだす。
反射的に篠田は目をつむってしまう。しかしその手は直前で止まっていた。ゆっくりと目を開けると、その手は優しく開かれていた。





「今日からおめぇは……サドだ…」





優子が微笑む。その微笑みに篠田もどこかなごむ。






篠田は差しのべられた手を掴む。その手は柔らかくそして暖かかった。




優子は勢いよく篠田を起こす。



『こいつには…まだこんな力が残ってたんだな…完敗だな…』


篠田を起こすと優子は周りで倒れているローズたちを一瞥する。




「おい!おめぇら、もうこいつに関わんじゃねえ!今日からこいつは、私の…





“仲間”だ!」





篠田はあきれたような顔をする。しかし優子の目は本気であった。そして篠田に向かって笑う。




「分かったんならさっさと散るんだな。私が暴れださない内に…」





優子は最後の言葉を強め、鬼の形相に変わる。それを見たローズたちは互いに肩を貸しあいながら逃げていった。神社には優子と篠田の二人になった。夕陽も少しずつ落ちてきている。









「イテテテ…おめぇの蹴りいてぇんだよ。ほんとサドだわ…」




腕を押さえながら、優子は微笑む。




「変なあだ名つけんな。って聞けよ。」




優子はもう走り出していた。そして神社の賽銭箱の前にたつ。




「サド~早くこっちこいよ~!」


優子が大きく手招きをする。



「だからその呼び方はやめろって…」



篠田はそう言いながらも少しだけ笑った。
こんな自分に何も考えずに接してくれる存在、自分よりも強く、そしてそれをなんとも思っていない存在に出会えたことに、篠田はどこか感じたことのない気持ちが沸いていた。




「はやくーこいよー」




篠田は足を引きずりながら、ゆっくりと近づいていった。
そして優子と二人賽銭箱の前に立つ。




「よし、サドお前これ投げろ。」




優子が小銭を差し出す。


「何で25円なんだよ…」


「そりゃあ゛二重にご縁がありますように”って意味だよ!」



「フッ、なんだよそれ。」



「いいから早く投げろよ!」



そう言われ篠田は賽銭箱に小銭を投げ入れた。小銭と木箱のぶつかり合う独特の音が響き渡った。




優子は手を合わせた。
横目で見ていた篠田もそっと手を合わせた。
痣や傷の痛みもなぜかこのときは忘れていた…








これが後に語り継がれることとなる優子と篠田の出会い。







そして”サド“の誕生であった…








ムチャブリ「イヤー_(^^;)ゞ#3もいよいよ大詰めかなー?笑」





マジメ「もう少し続くそうですよ♪」



ザコ「早く俺たちメインのストーリーはできないのかね( ̄ー ̄)」




チャラ「ほんとだぜーヽ(*´▽)ノ♪」





ムチャブリ「ってか!優子とグリさんはどこ行ってんだよ?!こっちは情報手にいれたっていうのに!」





マジメ「さぁ知りません( ロ_ロ)ゞ」






ザコ「リーダーなら先に帰ったぜ♪」





( ̄□||||!!






チャラ「優子は?」





マジメ「さあ┐('~`;)┌また喧嘩でもしてるんじゃないんですか( ロ_ロ)ゞ」






ザコ「それはある!」






ムチャブリ「おっと?作者からの伝言だ。次回予告!?」






チャラ「何て書いてんだよ( ☆∀☆)」





ザコ「いよいよ俺たちの出番…!」





マジメ「この流れでそれはないでしょう( ロ_ロ)ゞ」




ザコ「はいそーですか( ̄ー ̄)」






ムチャブリ「え~次回はがちの喧嘩シーン。#3の重要ポイントです。かなり長くなります。喧嘩シーンはうまくかけてるかな?だとよ…」





チャラ「誰の喧嘩だよ!!」







ムチャブリ「まぁ俺たちが全くの無関係だと言うことは分かる…」





( ロ_ロ)ゞ






(/ー ̄;)





(ノ-_-)ノ~┻━┻








o(T△T=T△T)o





To be continued …