いつもありがとうございます。ハクジュと申します。創作発表してます。
【インクの神様5】
琴葉がバスに乗車。ストーカー側のインフルエンザダブルバイン工作が始まる。バス内に帝、湧いて出る。
「八人目」
ピコッ。
「九人目」
ピコッ。
「囲まれてた人」
ピコッ。
琴葉は今度も、赤いハンコを押された。帝とセットで湧いてる有吉がツッコミを入れる。
「凪、もう何回ハンコ押しても同じだよ。琴葉さん、ただの赤い人になっちゃったよ」
「そうか? じゃあ、今度は黄色いハンコだ。これなら字が見えるだろ」
ピコッ。
翌日、琴葉は二色の人になって通勤に出た。
琴葉がバス乗車。ストーカー側のインフルエンザダブルバインド工作が始まる。バス内に帝、湧いて出る。
「十人目」
ピコッ。
「囲まれてた人」
ピコッ。
黄色の文字もつぶれてきたとして、琴葉は緑のハンコを押された。
一週間後、琴葉は七色になって職場に出勤するようになった。しかし、そのころにはバス内にインフルエンザ工作は見当たらなくなった。休日朝、琴葉の自宅に訪問客。
「ちわーす、ハーメルンです。インク消しに来ました」
帝が青い制服でやってきた。琴葉は文句をつけた。
「遅いよ」
「ごめん」
帝凪は両手を腰に当てて偉そうにしている琴葉の前で、先生に怒られた時のように起立していた。琴葉は言った。
「雨印のコーヒー牛乳飲むの?」
「いただきます」
マウス・ツー・マウスをした二人なのに、まるでロマンチックにならず。凪の渡したインク消しで、琴葉はやっと普通の地肌と生活を取り戻した。のちにハーメルンの手厚いサポートを受ける。
ハーメルンの女ボス、天神みことは昼休みに執務室で水煙管を吹いていた。
「あー、極楽極楽」
甘いミントの香りが口いっぱいに広がってたまらないのである。三十代前半の若い肌がうるうると喜んでいる。
彼女は基本、青が好きなのだが、ちょっと趣向を変えて、職場にローズピンクのおサルの時計を飾ってみた。情が移って最近かわいいと思う。そこへ、もっと若い隊員、帝凪が書類を持ってやってきた。
「ボス、身体に悪いです」
「これノンニコチンだからむしろ美容にいいの」
「そうなんですか」
帝は新型水煙管に感心したようだ。みことは自慢してみせた。
「今時の女子がまずいニコチンなんか吸うわけないでしょ」
「それ貸してくれませんか」
「駄目」
「どうしてですか」
「面白いから」
「ボス」
彼女はついつい若手をからかってしまった。
(続く)