はじめての方、ようこそ。再来、応援してくださっている方にありがとうございます。ハクジュと申します。集団ストーカー被害記録と、趣味のファンタジーといろんなジャンル書いてます。ご興味のある方はこちら。
 
ファンタジー過去作品はこちら。お時間のない方は作詞シリーズが短くてお手頃かと思います。
 

創作発表します。今作は前作ほど暗くないですよ。ポップな感じで私は好きです。

 

【インフルエンザサンドイッチ1】

 

 桐谷雪穂は二十代。港南区に住んでいたが、集団ストーカー被害に苦しんだ後、旭区あさかの丘病院に入院し、家族と病院側に統合失調を認めさせられた。退院後は旭区で一人暮らしを始めた。最初は統合失調を受け入れ、おとなしく薬を飲んでいた。

 ゆきつけの医者は鶴ヶ峰駅近くの土井耳鼻咽喉科。医者が夫婦で開業しているところで、診察券を入れる箱は、男の先生、女の先生と書かれ、少しユーモラスだが、子供でも分かるように分けられている。

ナースが患者を中待合室に呼ぶときはこう。

 「では男の先生の患者さんお呼びします。高橋さん、小峰さんーー中待合室でお待ちください。次は女の先生の患者さんお呼びします。北野さん、渡辺さんーー中待合室でお待ちください」

 

 雪穂はある時から、インターネットで集団ストーカー被害者の会の存在を意識し始め、統合失調を否定しだした。それから各種病院と町ぐるみの露骨な攻撃を受けるようになった。

 雪穂はブログで被害告発記事を書き始め、人気のないブラックペッパーシリーズを更新した。加害者ナースの名札をチェックし、名前の一部を、加害者の内輪でしかわからないように公開した。

 すると鶴ヶ峰中の行きつけの診療所ナースが全員、名札を付けなくなった。ただし、米樹薬局をはじめとする薬局と精神科あさかの丘病院だけはどうしても薬剤師とナースが名札を外せないらしい。加害者は名札を裏返す、名札の裏にペンを装着して、ペン先から名札表側にキーホルダーを下げ、名前が見えないように工作するようになった。

 雪穂はSNSの威力に驚き、ブラックペッパーが楽しくなって、後半で得意のギャグを披露するようになった。それでも町ぐるみの攻撃が終わるわけではなく、雪穂は土井耳鼻咽喉科の五十代の女性受付看護師長のいじめに困っていた。

 

 雪穂は初夏、土井耳鼻科を利用した。受付看護師長はヨガか何かやっているらしく、背筋が伸びでいて、女優のように細かった。若いころ美しいとは言われなかったかもしれないが、女性は年を重ねると健康美を評価されるようになる。

 この時期、あるニュースが話題になった。雪穂が耳鼻科を利用した時も、院内のTVで同じ報道があった。雪穂は待ってる間はTVが見たかった。

 「では男の先生の患者さんお呼びします。鶴間さん、今宿さんーー中待合室でお待ちください。では次は女の先生の患者さんお呼びします。宮田さん、畑中さんーー中待合室でお待ちください」

 その時、雪穂は呼ばれなかった。だから報道を見ていた。中待合室からはTVが見えないからだ。すると何分かして、受付長が言った。

 「桐谷さん、中待合室にお入りください」

 こんな例外、いまだかつてない。男の先生の患者さん、女の先生の患者さんで、まとめて呼ぶのが土井方式だ。中待合室は飽和状態。受付長が患者の人数を一人増やす意味なんかどこにもない。

 雪穂はいったん中待合の中に入ったが、あまりにも待ち時間が長かったので、一般待合室に戻ってTVを見ていた。そこから中待合室が十分見える。患者が減ったら入ればいいのだ。しかし、受付長は雪穂に言った

 「桐谷さん、中待合室に入ってください」

 「まだあんなに待ってるじゃないですか」

 「でも入ってください」

 受付長は雪穂がTVを見られないように工作した。

 

 夏から秋への季節の変わり目がやってきた、やわらかなラベンダー色が流行している。季節もののお菓子の箱とか、子供のサンダルとか、何かにつけてラベンダー。

 雪穂が土井耳鼻科を利用した時だ。風邪の季節で待合室はぎゅうぎゅう。自分の隣にすごい咳をしているマスクの青年がいて、うつされないか心配だった。彼もラベンダーのシャツを着ていて、赤、オレンジをアクセントにしたスカイブルーの派手なスニーカーが駄々っ子のようだった。

 もしかしたら細くて見た目のかっこいい人かもしれなかったが、マスクの上の目ははれぼったく、始終咳をしているため、背中が丸まっている。彼が普段どんなシルエットか、予想もつかない。

 雪穂が彼を避けて席を移動すると、彼も移動してピッタリついてきた。彼女がまた移動すると彼も。しかも彼は明後日の方向にそっぽを向きながらソワソワした後、彼女に手に手を重ねてくる。これには彼女も閉口した。はっきり拒否しなければなるまい。彼女は彼を睨んで言った。

 「何ですか」

 彼は突然、咳と背中を丸めるのをやめて、あたりをキョロキョロした。彼女を見ると、おっかなびっくり指で彼女のほっぺたをチョンとついてきた。そのあと真っ赤になって耳鼻科を飛び出していった。

 雪穂は腹を立てて彼を追った。土井耳鼻科は二階にあるのだが、彼は階段の下あたりで足を滑らせ、ひっくりこけていた。大事には至らなかったようだ。そこで止まらず彼はケツまくって走って去った。

 彼は慌てすぎてスニーカーを片方忘れていった。雪穂は耳鼻科の玄関でそれを拾った。普通の判断なら忘れ物として受付に届けるが、雪穂はムカついていたのでそれを持っていた紙袋に詰めて、さらに鞄に入れ、自宅に持って帰った。シンデレラ探しをしないまま、永久に返さないつもりだった。ムカついたからである。

 

 土井勝は50代後半、耳鼻科の院長。仕事を終えて妻と夕食をとろうとしたら、彼女は知人と用事ができたようだ。彼は一人で夕食を済ませ、就寝しようとした。

 その時、自宅の壁と天井がすべて外側に開き、スカイブルーの花吹雪が待った。そのあとぐちゃっと誰かが降ってきた。ロシアのツァーリのようなコスプレをした若い男性で、勝の目の前でうつぶせに倒れてピクピクしている。

 近くで巨大扇風機が回り、花吹雪をかき回している。コスプレ屋さんは何か言いたくて失敗した人のようだ。勝は内科医ではない。しかし動けないコスプレ屋さんを見たら、いち医者として血圧を測る。

 (続く)

 

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ファンタジーではなく、日記です。病院や薬剤師との攻防を記録しています。

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