いつもありがとうございます。ハクジュです。集団ストーカー被害者で、創作書いてます。
 
ファンタジー過去作品はこちら。お時間のない方は作詞シリーズが短くてお手頃かと思います。
 


「涼子」シリーズは最初から娯楽のつもりがなかったので、①は情報の羅列でしかありません。②からちょっと味付けしました。興味はあるけど退屈はごめん、という方は②以降をチェックしましょう。



前回の話はこちら。

 
涼子②
 

涼子は自宅に帰ってwi-fi接続を確認した。スマホを操作してないのに目の前でON-OFF-ONに切り替わった。



アプリの同期を確認すると、やはりON-OFF-ONに切り替わる。防犯カメラのトマカメも、操作してないのに暗視モード、通常モードに繰り返しカチカチ切り替わった。彼女が第三者と会っている時はこれらの現象が起こらない。

 


彼女は家族に相談した。
「嫌がらせを受けているの」
「病気だな。お前って結局そうだよ」




彼女は精神科に連れて行かれた。彼女は医師に話した。
「大勢に盗撮されてるんです」
「あなたはそれほど重要な人物なんですか?」
涼子がそれでも盗撮被害を訴えて回ると、家族にうるさがられ病院にぶちこまれた。
 


三年後に退院すると涼子はやはりスマホトラブルに遭うようになった。彼女はケータイショップkingに相談に行く。
「遠隔されてるんです」
「めったにないことです」
涼子は誰にも相談出来なくなったので、首を吊ってこの世を去った。
 


king裏工作員達はこの知らせを聞いて、翌日宴会を開いた。西川も参加した。彼らは盗撮映像を海外に売って外貨収入で生計を立てていた。


ターゲットが死ねばもう訴えられる心配はない。涼子達の自殺は作戦成功を意味していた。
 

酒が回ってくると宴席はバカ騒ぎになった。
「ターゲットが重要人物である必要は無いんだ。一般人でもヌード出せば売れるから」
「あははははは、『めったにないことです』! なんて愉快な言葉なんだ」
「ケータイ会社が対処しないのは、客を否定してるのと同じ! でも客はそれに気が付かない」
「ケータイ会社店員と同じ知識で遠隔被害の証拠をあげてきたら対処してあげるよ。出来たらの話だけどね!」
 


発達障害は狙いがいがある。彼女達は友達を作れないだけで、一見、普通の人と変わらない。ヌード女優としていくらでも使えた。
 


機能不全家庭の被害者はもっといい。家庭の加害者は支配の言い訳を求めている。


工作員が加害者家族に被害者が精神病だと入れ知恵すれば、家族は工作員に変わって生き生きと被害者を支配してくれる。集団ストーカーと機能不全家庭は切っても切り離せない。
 


栞は呆れて本を閉じた。
「なあにい? アンハッピーエンドだったのお? つまんなーい」
彼女は二十五歳。一年前から付き合っている光一の家でデート中。彼の部屋で座蒲団を広げ、おやつをつまんでいるところだった。



彼は笑った。
「だろう? 集団ストーカーなんてめったにいないのに」
「そうだよね! めったにいないよね」
「いないとは言ってないんだ。いるけどめったにいないんだよ」
「そうだね! めったにいないよね」



栞は光一が大好きだった。彼は言った。
「その作者、統合失調なんだって」
「何だ、病気じゃ仕方ないか。かわいそうな作者」
 


栞はその後、スマホトラブルに度々遭うようになった。アプリの同期画面を開くと、操作してないのにON-OFF-ONに切り替わる。第三者に見せる時は正常なのに。
 


栞は家族に相談した。
「盗撮されてるの」
「病院に行こう」



栞は統合失調の診断を受け、家族に入院を強要された。その後、病院に光一が面会にやって来た。



栞は訴えた。
「光一、私、統合失調じゃない! 集団ストーカーに遭ってるの」
彼は彼女の肩を抱いた。
「落ち着いて。めったにないことだよ」
「でも、ないことはないでしょ」
「ないとは言ってないよ。でも、僕の好きな時に好きなだけ“あり得ないんだよ”。信じて欲しいなら証拠出しな」



彼女は戦慄して彼を見上げた。彼は爽やかに微笑した。
「統合失調は人間じゃない。気の毒な〇ルだ。〇ル、慰めてあげるよ。元気出しな?」
 


彼女は彼と別れた。退院した後もスマホトラブルに遭い続け、ケータイショップに通った。
 


kingの窓口はカウンター席になっている。客は足の高い席に座り、店員は立って対応。栞は訴えた。
「遠隔されてるんです」
「めったにないことです」



店員清川の答えに、栞が泣きそうになった時だった。
「あるんですか、ないんですか」
知らない女性が清川とのやり取りに割って入った。


清川が驚く。
「あなたは」
「姉です。店員さん、無いなら証拠を出してください」
「それは」



清川は口ごもった。女性は栞のように座席に着かず、彼の前に立ちはだかった。
「スマホが安全な証拠が出せないなら、対処してください」



清川は形勢の不利に動揺していた。
「しかし、まだマルウェアがあるとは決まってないから」
「じゃあ、無いと言ってください」
「無いとも決まってないから」
「グレーゾーンで客に帰れと言うのは、有識者の暴力です。あなた、プロでしょ」


女性は華美な服装はしていなかったが、胸に紫の薔薇のブローチをしていた。栞は彼女の名がわからなかったので内心でバイオレットと名付けた。この先の展開にハラハラした。
 


清川の後頭部がメリメリと音を立てて膨張した。
「ですからーー“あり得ないんです”!」



バイオレットは涼しそうに指摘した。
「それも曖昧な表現です。あった時は『稀なケースだった』と逃げられますね?」


清川の頭はバスケットボールの二倍に膨らんだ。余裕のバイオレットと反対に、顔を真っ赤にしている。



「“私が無いと保証します! 信じてください!”」
「そのワードが来ると思いました。“私達はケータイ会社の信者ではありません”。保証するなら稀なケースも絶対起こらないと保証してください」
「絶対とはーー」
「じゃあ、稀なケース、あるんですね?」



清川の頭がメリメリ膨らむ。今度はバランスボールくらいの大きさになった。
「“スマホに絶対安全は無いんです”!」



すかさずバイオレットが切り返す。
「その台詞は対処した後に使うのと前に使うのとでは、意味合いが違ってきます。絶対の安全がないなら、どうして“私が保証します”と嘘ついたんですか?」



栞はあまりの清々しさに、斧が竹を真っ二つに割る音を聞いた気がした。


清川は苦しんだ。
「それは」


バイオレットは言った。
「顧客の不安に対処するか、絶対安全な証拠を出すかどちらかです。選択肢は一つしかありませんね?」
「しかし、対処と言っても、ウィルスがあると決まったわけでは」



「仕事しないで口ばかり回るようですね。無いと決まったわけでもないんでしょ」
「だって」
「あなたはプロです。事態をグレーゾーンのままにして逃げられませんよ。仕事してください」



清川は大量発汗を始めた。苦しそうに呻いた。
「仕事しちゃいけないんだ」
バイオレットは甘い顔はしなかったが、優しく尋ねた。
「どうして?」
「掟だから」
「でしょうね。でも許しません」
「うっ、うっ、うっ……」



清川の頭は気球と同じくらいの大きさになった。もうパンパンだ。頭のてっぺんは既に天井に密着し、圧迫を始めている。
 


ショップの客と店員は、旧知の仲のように足並みを揃えて店の外へ走り始めた。バイオレットは清川に尋ねた。
「他に言葉のトリックは?」
「今、検索を」
「そう」


 
バイオレットは栞を席から立たせた。空いた椅子を何故だかカウンターの奥にしまわないで、脇によけた。
 


次にブローチを外して、清川の額を安全ピンの針で突いた。途端に彼の頭が爆発した。バイオレットは栞の肩を後ろから抱いてカウンターの下に伏せた。
 


栞は地鳴りに動揺したが、kingショップの崩壊は短時間で終わった。天井は崩落する前に吹っ飛んでしまったので、栞達は生き埋めにならなかった。バイオレットが立ち上がったので栞も恐る恐る続いた。
 


カウンターの反対側に首から上がなくなった清川が立っていた。ショップ崩壊にに巻き込まれなかったようだ。メスに喰われたカマキリのオスの末路のようだった。


 
バイオレットはブローチをもとの場所に着け直している。栞は尋ねた。
「あなた誰」
「涼子」
vol.156「涼子③」に続く)