大河はまずいことを言ったのかと顔がひきっつた。
「そんな顔をしなくてもいいよ」
文也が言ってきた。
「でも」
「おっちゃんは人がいいから丸めこめられて気がついたら権利が他の人に移っていた」
「えっそんなことあるの」
「「銀賞はもらったけど、そのチョコを作る権利をあげた形になっている。言葉も完璧に覚えているわけじゃないからね。それがあってその店は辞めたんだ。すぐには日本に帰ってこなくって、別の店に行ったらそこでもアイデアを取り上げられた。言葉の行き違いだと店の人に言われたらしい。それがいくつか続いて諦めて日本へ帰って来た。俺たちがなぜ一緒にいうるかわかる?」
「おじさんだから」
「それだけじゃない。騙されないために」
文也は首を振りながら言った。
「こんな田舎で商売が成り立つの」
疑問に思っていることを大河は聞いた。
「ネットがあれば注文は入る」
「えっ、圏外で」
「入るようにはしてある」
文也はニヤッとした。
「できたよ」
貴子がトレーに料理を載せてきた。
「おっちゃんは?」
貴子が聞いた。
「ちょっとへそを曲げて」
「難しい年頃なのよね」
まるで思春期の子供をもつ親のような言葉で貴子は言った。
「星空を見ているとアイデアが浮かぶそうだ。だから気にはなっているが前に進めるようだ」
文也が言う。
葉山広司は外で星空を見ていた。
「さっきはすいません」
大河は葉山に頭をさげた。
「謝ることはない。本当のことだ。丸め込まれやすい人間なのだろうな。一つアイデアが浮かんだ。ノートに書かなければ」
葉山は大河を置いて家に中へ入って行った。