98 運転手 | クーカーの 笑説

クーカーの 笑説

コメディ小説を書いてます。

小説ほど難しくなく
コントほど面白くない
クーカーの笑説
1ページ1分くらいです。
サクサクと読んでくださいませ。

バスの中が一致団結すると、運転手だけがエイジア側になる。

運転手は焦り、スピードを上げ始めた。

高井は、頷くだけだ。

このバスは収容所に直接向かっている。
黒バス と呼ばれる奴隷連行バスだ。

運転手が急ぐのは、急いで仲間と合流したいからだ。


バスの景色は真っ暗になってきた。

しかし、停電は続いていて街灯も信号機も自販機も消灯している。

他に車もいない。

光は、黒バスのヘッドライトと、いつもより輝いて見える星。
シャンデリアは消している。

スピードを上げたことで周りの景色は早く流れ、建物の看板も読めない。

遠くには山の稜線が星空の下に広がる。

全くどこかわからない。

遠くに久しぶりに明かりを見つけた。

兵士がライトの棒を振っている。

バスはそこに滑り込む。

高井は、しゃがみながら運転手の腰にナイフを押し当てる。

運転手は兵士に無言で敬礼をする。

バスはすぐに走り出した。

収容所に入るようだが、周りの景色に人影がない。

建物のシルエットは民家ばかりで、大きなビルや球場などの施設もない。

会社の仲間たちや知り合い、つまり捕虜の日本人たちは
どこにいる?