バスの中が一致団結すると、運転手だけがエイジア側になる。
運転手は焦り、スピードを上げ始めた。
高井は、頷くだけだ。
このバスは収容所に直接向かっている。
黒バス と呼ばれる奴隷連行バスだ。
運転手が急ぐのは、急いで仲間と合流したいからだ。
バスの景色は真っ暗になってきた。
しかし、停電は続いていて街灯も信号機も自販機も消灯している。
他に車もいない。
光は、黒バスのヘッドライトと、いつもより輝いて見える星。
シャンデリアは消している。
スピードを上げたことで周りの景色は早く流れ、建物の看板も読めない。
遠くには山の稜線が星空の下に広がる。
全くどこかわからない。
遠くに久しぶりに明かりを見つけた。
兵士がライトの棒を振っている。
バスはそこに滑り込む。
高井は、しゃがみながら運転手の腰にナイフを押し当てる。
運転手は兵士に無言で敬礼をする。
バスはすぐに走り出した。
収容所に入るようだが、周りの景色に人影がない。
建物のシルエットは民家ばかりで、大きなビルや球場などの施設もない。
会社の仲間たちや知り合い、つまり捕虜の日本人たちは
どこにいる?