フエさんはシートから立ち上がり、
拳で空を撃つと、フッと風を切る音がした。
「やってくれ。」
橋野はギュッと目を瞑り正座で固まる。
「私は仕事の為に日本来た。
だけど、首輪があるから、
奴隷になって仕事する。
同じ仕事でも、親に仕送りできないのは、違う。
全部、あなたのせい。」
フエ
≪ブンッ≫風を切る音
「クッッ…」橋野
「ウソよ。」フエ
「え?」橋野
「あなた、殴っても私の手が痛いだけ。」
フエさんはニコッと笑う。
「そんなぁ」
橋野は泣いた。
「ねぇ!聞いて。
中国も日本もないわ。
こんなこと嫌いでしょ?
皆さん、困るでしょ?
皆さんで止める。
できるでしょ?」
フエさんが言う。
「フエさん。」ヨーコ
「あぁ、できる。
こんなこと止めるんだ。」
橋野
橋野君、フエさん、ヨーコさんが右手を伸ばして円陣のように重ねる。
「エイエイ」
そこに、父親が手を伸ばした。
皆、驚いた。
「ダイジョブ?」父親
一斉に笑う。
「エイエイ、オー!」
バスに拍手が起きた。