55 情報 | クーカーの 笑説

クーカーの 笑説

コメディ小説を書いてます。

小説ほど難しくなく
コントほど面白くない
クーカーの笑説
1ページ1分くらいです。
サクサクと読んでくださいませ。

男の横の席に座らされた。

男の腕を払い、逃げようとした。

「大丈夫、俺も日本人だから。」
男は周りを伺いながらこっちを見ずにボソッと言った。

敵陣で仲間に会えるとは。
安心して心を開こうとした。

しかし見た目は周りの中国人と変わらない。
日本語のできる中国人かもしれない。

「驚かせてしまったが、おじさんがあまりにも無警戒だったもんで。」
男はこちらを向いたが目を合わさずに独り言のように話す。

俺をおじさんと呼ぶだけあって若い男だ。

迷彩服がだぶつくほど細い、そして生っ白い。

かといって病気にも思えない。
十年前なら引きこもりと呼ばれるような若者だ。

俺も独り言のように話すべきだろう。

「すっかり警戒心が薄れていた。ありがとう。助かった。」

「全く、そんな格好でよくここにいるよ。
あのまま兵士に接触したら…」

「あぁ…そうだな。…すまない。」

「とにかく、これを羽織ってなよ。」

「あ、ありがとうございます。」

若者が迷彩柄のカッパを貸してくれた。

カッパを着る。

「おじさんは何しに来たの?」

「敵の様子を探りに」

「俺と同じか。
とにかく情報が本当か確かめにきたんだろ?」

「え?
情報が無いから来たんだよ。
これは戦争なのか?」

「おじさん、ここを出て話そう。」

「ああ、わかった。」

ポーチをあの兵士のベンチの下に投げてから外に出た。