マツさんとシティで市立病院へ向かった。
救急車が停まる場所に着いた。
服も着替えたし、酸素ボンベもある。
問題はタイムラグだ。
半年もズレてここに来たわけだから、こんな薄着のままで真冬の雨の夜中にワープなんかしたら…
「小野寺、いや小野田くん。
未来に戻ることができたら、また逢いたいな。
君は何分か先の話、私は三十年も先の話だが。
まっ、わしが生きていればの話だがね。」
マツさん
「絶対逢えますよ。
三十年後、突然、社長宅と工場におじゃまします。
松木さんの居場所を調べて、会いに行きます。」
「そのときは…また缶コーヒーで乾杯しよう。」
マツさんが笑った。
「はい。」
「寂しいもんだな。」
「はい。
では、お元気で」
頭を下げた。
酸素ボンベを開栓する。
マスクの内側にラップを貼って空気漏れを防いでいる。
俺はマツさんを見つめながら
ゆっくり
胸一杯空気を吸った。
手を振るマツさんが歪んでいく。
苦しい。
まるで毒ガスを吸ったようだ。
意識が
なくなる。